5話 怪しい動き (5)
メノウの事を一番良く知っているのはお付きの
メイドや執事だった。
だが、彼らは王妃の側近達だった者だ。
それは、頼めば王妃に知られて次にナニス王国
へとバレる危険性があるのだった。
それ以外にメノウの事に詳しい人物といえば、
思い浮かぶのはイーサとアンバーだった。
だが、幼いアンバーにメノウの真似をさせるの
はなんだか気が引ける上に王妃に話す危険性
をも含んでいたのだ。
それを加味して、選べる選択肢はたった一つ
しかなかった。
イーサに頼むしかないのだった。
翌日にマーロに呼ばれて来たイーサとタヒソは
ナニスとの国外交渉の場にメノウの出席が必要
だと教えられたのだった。
「父上、メノウは今……」
「そうだ。じゃからタヒソ、お主に頼みがある
のじゃよ。一時的でよい、変身薬があったじゃ
ろう?」
「それはありますが、高価な素材が多く使われて
いるので」
「金に糸目はつけん。すぐに取りかかれ」
「ですが、それには本人の一部が必要です」
タヒソの言葉にマーロは部屋にあったメノウの髪
の毛を取り出して渡したのだった。
姿を変える薬は、素材を冒険者ぐギルドへ依頼す
る事で素材を簡単に集める事ができた。
錬金術はタヒソ自身が一番精通しているので他人
に任せるより自分で作成した方が成功率は高い。
これでも国内随一の腕前なのだ。
♦︎♦︎♦︎
冒険者に依頼を出してから数ヶ月。
ナニス王国からの使者がつくまで数日と迫っていた頃。
やっと材料が揃ったのだった。
「タヒソ、本当に作れるのか?」
「はい、確率は低いですが。作って見せます。ですが
誰がメノウ様を演じるかが問題です」
「確かに……結構無茶苦茶な性格だったからそれをし
っかり把握している人物でないとすぐにバレそうで
しょうね」
イーサは書類に目を通しながらタヒソに話しかけた。
兄弟が一番よく知っている。
昔はよく一緒に遊んだものだった。
ある時を境に、メノウとは距離を置くようになった。
それは、イーサが手柄を立てた時の事だった。
あの日は強い雨と落雷で視界が悪い日だった。
雨が降ったからと言って戦は中止になる事はない。
ナニスの強みは横の隣国から仕入れる魔道具の数々
のおかげだった。
隣国はあのペリド王国なのだ。
何年も、何十年も、何百年さえも、東の大陸にある
ランドブルグ帝国を小さな国で抑えて来たのだ。
魔法具大国ペリド王国とさえも噂されていたのだった。




