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黒の錬金術師〜異世界に来たからには無双したい〜  作者: 秋元智也
第四章 戦争の予兆
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1話 怪しい動き

遙たちがアネスタ王国へと入った頃、オスタリア国内

では物資の調達が滞っていた。


いつもなら鉱山資源の多い北に位置する龍の山脈で

ナニス王国と合同演習と称して素材確保を行ってい

たのだが、今回はそれが取りやめになった。


その理由は、あきらかだった。


オスタリアの後継者であったメノウが国から出奔した

と言う噂が出回っていたからだ。


皇位継承権第一位のメノウが弟の暗殺を企てたとして

指名手配された事が大きい。

確固たる証拠もないが、その容疑者として青の塔の

錬金術師、歴代最高の頭脳とされたメルバルト・ファ

オニンの弟子が処刑された。

実際、死体はファオニン本人のものと断定されたので、

弟子は国外へ逃亡したのだと知った。


それと同時期にメノウも姿をくらませていた。

メノウを軟禁していた部屋に残った水入れには毒が仕込

まれていた。


これはどう見ても、自殺を図る為というよりも、口封じ

の為だろうと推測されるのだった。


「タヒソ、これをどうみる?」


もう一つの錬金塔に住む錬金術師のタヒソ・エクドール

準男爵はメルバルト・ファオニンのかつての弟子だ。


「メノウ様の仕業というよりは、そのせいにしたい

 誰かが仕組んだと見るべきかと……」

「だろうな……ということはまだ私を殺したい人間が

 この城にまだいるという事だな」

「そう、考えた方が正しいかと」

「困ったものだな。兄さんも運良く逃げたようだが、

 もしかしたらメノウ兄さんもどこかで殺されている

 やもしれないな……」

「そんなまさか……ナニス王国はここオスタリアの

 後継者をメノウ様にと言って来ているのですよ?」

「だからさ……それを戦争の口実にしているとしたら?」


イーサはため息混じりに外を眺める。

下ではアンバーがメイド達に囲まれて遊んでいるのが

見える。

ふと、こちらに気づくと小さな手をブンブンと振って

来たのだった。



まだ幼いアンバーを後継者に立てるという手もあるが、

それはあまりに不安し要素が強かった。


アンバーはまだ幼い。

それゆえに後継人の思惑が直に反映されてしまう。


邪魔なイーサを潰そうと思えば簡単に罪を偽装できて

しまうのだ。


まだ、父が健在だからいいが、もし暗殺でもされよう

ものなら、一気に空気が変わるだろう。

仲のいい兄弟ではあるが、その下に着く貴族達までが

仲がいいわけではない。


「頭が痛い事だな」

「そうですね。ですが、準備はしっかりとしておいた

 方がいいかと…」

「分かっている。国境付近には兵を待機させてある。

 今はただの軍事演習とは言えないからな。実際はメ

 ノウを捕まえる為の検問と言って軍の一部を派遣し

 てある。あとは、この前ファルマン公国にも軍の派

 遣を頼んでおいた。上手くロザリア嬢が動いてくれ

 ればいいのだがな」


ロザリア嬢はイーサの事を特別視しているように見

えた。

きっと、父親を動かしてくれる事だろう。

将来の旦那になるイーサの為に……。


それを見越して、いつも彼女には親切にして来たのだ。

そうでなかったら、わざわざあの体型の王女なぞ誰が

相手にするだろう。

しかし、戦争となれば自国だけでは対処できぬだろう。


そうなった時に、一緒に協力してもらう為に自分の

惚れるように誘導したのだ。

しっかり働いてもらわねば困るのだ。


「ファルマン公国のロザリア皇女は実に純粋なお方

 でしたね」

「あぁ、単純で助かるよ……ナニス王国が片付けば

 結婚となるだろうが………それも仕方がない。妻は

 一人とは限らないからな」


イーサは効率的な考え方の人間だった。

使える者はなんでも使う。

それがどんな結果になろうと、一番いい結果を出す

為ならばいとわない。


それが国の王たる資質だと思っている。

それは、確かに正しいのだが。

自分の意思などそこには全くないのだ。


メノウは自分の思うままに動く人だった。

誰かを裏で悪口をいう人間ではない。

気に入らなかったら、その場で叫ぶ。

そんな人間なのだった。


「どうにも似ていない兄弟ですね」

「それは褒め言葉としてとっておこうか」


イーサはどこまでいっても自分の心を見せない人

だった。








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