31話 イーストの街 (4)
こう言う時に魔道具は便利だった。
死体を燃やしている間に一服すると、残骸を眺め
ながら腰を上げた。
焼いた死体は魔道具の水によってすぐに鎮火した。
「さぁ、帰ろうか」
「だな!これだけあれば結構金になっただろ?」
「うん、そうだね。本当は魔道具の実験もしたかっ
たけど、これはまた次かな……」
「いや、そうとも限らないぜ?」
「………なるほど」
メノウはこちらに近づいて来る魔力反応に気づいた
のだった。
その反応は近くに来た瞬間、足を止めると遙とメノ
ウの真後ろへと回り込んで行った。
「前と後ろ、あとは右からって事か……」
「俺が前に攻撃するから、後ろはそれでなんとかなる
か?」
「うん、そうだね。後ろならばら撒いても問題ないね」
そう言うと、メノウが目の前へと火を放つ。
「ファイアーボール!」
「アイスウォール!」
二人が同時に叫んでいた。
前へ火が放たれると同時に遙のアイスウォールが右側
へと放たれた。
厚い氷の壁が形成されると、真後ろから男が飛び出て
来た。
そして足元へは全く警戒していなかったのだろう。
何かを踏んだ瞬間、一気に身体を電流が流れたのだった。
何が起こったかを悟る前に、地面に倒れていた。
倒れた拍子に再び地面にばら撒かれた魔道具を潰した
もにだから再び電流が流れる。
意識を一瞬で奪うというのが目的で作ったものだった。
が、実際はどうだろう。
遙は横から来た男を身体ごと氷漬けにすると、前には
丸焦げの死体が出来上がっていた。
「うーん、加減が難しいかも……」
「別にいいだろ?あきらかに殺意満々だったんだし、
死んでも文句言えねーよ」
メノウはこう言うことははっきりしている。
後ろで倒れた男に近づきながら魔道具をそっと回収し
ていく。
魔力を流しながら触れれば問題なく解除できるのだ。
思いっきり踏んだり蹴ったりすると、すぐに起動して
しまうのでゆっくり触れれば持つ事も可能なのだ。
要は撒菱のようなものだった。
よく時代劇で忍者が使っているのを真似て作ったと
言う訳だった。
ちょっと威力が桁違いだけど……。
『すごい!すごい!』
「ありがとう。でも、これ……死んでない?」
「死んでるかもな。でも、ハルカ、こっちの氷漬け
の方はどうするんだ?死ぬまで放置か?」
「それはちょっと……でも、溶かしたら襲ってくる
よね?………どうしようか……」
遙たちの事を報告されるのも困るし、だからといっ
て放置するのも迷う。
「おい、誰に命令されて俺たちを襲った?」
メノウは首だけが自由に動き男の前に剣を突きつけ
ると聞いた。
生きているのは一人なので、彼が口を割らない限り
依頼人は分からない。
「言うわけでねーだろ……バカか……」
「そうか、なら死ね!」
首筋に当てた剣をスッと手前に引く。
ゆっくりだが剣の刃先が首の皮を切るとそのまま肉
へと到達する。
「おい、待てって……冗談だろ………」
冷や汗をかきながら男の態度が変わるのがわかる。
「言う気がないならもう用無しだろ?それともなんだ?
言う気にでもなったか?」
「…………」
「なら、死んでもらう他ねーな」
「待て待て待て!俺が死んだら、次の刺客が来るん
だぞ?」
「別に構わないが?もう、お仲間も死んでるし仲良
く死ねよ」
「言う!言うから待てって。俺らの依頼は商業ギルド
から出されたものだっ」
一瞬耳を疑う。
商業ギルドはホルンの街でゴールドカードを受け取っ
て以来懇意にしてもらっている。
それに遙の納品するポーションは破格の値段で買い取
ってくれたのだ。
そして、旅費も兼ねてマジステの街で大量に売ったの
が最近の事だった。
「それはマジステの商業ギルドって事?」
「あぁ、商業ギルドも一枚岩じゃない。副ギルド長が
俺らの依頼人だ。イーストの街で待ち伏せして持っ
てるポーションを奪い取れって命令だったんだ」
「なるほど。あまりに多く売り過ぎた弊害って事です
か………」
まさか、効果が高過ぎて副ギルド長自ら仕入れに携わ
りたかったという事を遙は知らなかった。
命令はポーションを奪え、もしくは制作者の持っている
であろう作成レシピを奪う事だった。
だが、作成レシピなんてものはなく、遙が自作している
だけなのだ。
「これは仕方ないですね。生かしておきましょう」
「おい、いいのかよ?」
「大丈夫です。パルポロ長官に引き渡すので」
「あぁ、なるほど。あのおっさんなら死んだ方がマシ
ってくらいにはやってくれそうだ」
「………」
そう言うと、凍ったまま運ぶ事にした。
エルフィの魔法で男を氷ごと浮遊させると荷物として
運んだのだった。
一目に着く場所に来ると引きずるように運んび、街の
門番に引き渡すと、事情を説明した。
程なくして護送の馬車が来て軍事長官であるパルポロ
の元へと運ばれる事となった。
それから遙たちは、暫くギルドの依頼をいくつも受け
たのだった。
あの後、事の顛末がどうなったなど知る由もなかった。




