29話 イーストの街 (2)
宿屋に着くと念には念をと二人で一部屋にした。
窓からピュッと風が吹き込むと勢いよく閉まる。
『持って来たわよ』
「ありがとう。彼らの装備はどうだった?」
『持てる荷物は全部持って来たわ。あとは身につけて
いるもので剥ぎ取れなかった物は無理ね』
そう言ってエルフィが手にしているのはさっきの後を
つけてきた男たちの装備と荷物だった。
服についている物は無理でも吹き飛ばされた時に手か
ら離れた物や、武器は回収してくれたようだった。
遙とメノウはすぐに立ち去った為後から来た見物人や
警備の人間には見られずに済んだのだった。
精霊を扱える人間がいなければ見られる事もない。
そもそも、精霊が見えるという事は、その人間も精霊
と契約しているという事でもあるからだ。
精霊が自ら契約を持ちかけるのは珍しい事なのだと
言っていた。
したがって今、遙と契約している精霊は珍しい部類
なのだ。
確かに、変わってはいるが一緒に旅する上で問題は
ない。
好き嫌いなく食べるし、おしゃべりで困る事はない
し、メノウとも馬が合うのかよく喧嘩している。
エルフィが持って来た荷物には使っていた剣や短剣。
ポーションの入った鞄、小銭などが入っていた。
そして、指示書も雑に突っ込まれていた。
「これは……」
「なんだ?それは………なになに?少年二人組みの
財産は推定金貨20枚以上と推定される?なんじゃ
こりゃ」
「さっきの飛行船の玩具を金貨10枚で買ったので、
それから考えても倍以上の余裕があるから買った
のだと判断したみたいですね」
「そんなの関係ねーだろ?」
「盗賊側には関係あるみたいだね…さーて、まだ終
わらないかもね」
「どーすんだよ。」
メノウは面倒そうに尋ねて来た。
「いっそ、ヤるか?」
「殺しはしません。ね〜エルフィ、あのあとどうなっ
たか見て来た?」
『さっきまでハルカがいた場所へ運ばれていったよ?』
「冒険者ギルドだね。では、問題ないね」
『ピカピカの首輪つけてた』
「それは奴隷リングだね。それはよかった。僕の手
の内がバレてないなら次も使えそうだ」
そういうと、遙は黙々と魔道具作りに取り掛かった。
火薬の代わりになる鉱石を取り出すとすりつぶして
使う。
火の花と水の花を取り出すと鍋で混ぜ合わせる。
綺麗な透明な石に雷電を封じ込めるとゆっくり魔力
を馴染ませる。
一個一個丁寧に作っていく。
繊細な作業だが、慣れている遙にとっては一個に込
める魔力も数分で完了してみせた。
「これって、さっき投げたやつか?」
「これは爆発ではなくて、一気に電流が流れるよう
にしておいたから……この前は周りにも被害が出
ちゃったし、そこは改良点だなって」
路地裏で爆発させたせいで近隣の家の壁が崩れてし
まったのだった。
だから今回は人だけに影響があるようにしようと改
良したのだった。
勿論、どこかで試してみたいのだが……。
「今度魔物に試してみるのもいいかも」
「だったら、ゴブリン討伐で試そうぜ」
「そうだね。それなら丁度威力調整にいいかも」
最近、街の外れにゴブリンの目撃情報があったと
ギルドに書かれていた。
そこでゴブリン討伐の依頼が出されていたのだ。
依頼の内容はゴブリンの数に応じて依頼料も上下
する。
多く倒せばその分稼げるのだった。
数は左耳を切り取って持って来た分が数として
カウントされる仕組みになっている。
早速次の日の早朝、食事を済ませるとギルドへと
向かった。
昨日の騒ぎのせいか少し騒がしくはあったが、依頼
は問題なく受理されたのだった。




