28話 イーストの街
時折り、行き交う荷馬車に乗せてもらいながらも、
野宿を数十回と、村納屋に泊めてもらったりとなん
とか目的の街であるイーストが見える場所まで来た
のだった。
「やっと見えて来たなぁ〜」
「アレがイーストって街か!結構大きいな〜」
「あそこ!飛行船だ!」
遙が声を上げると、上空から飛行船が降りてくるとこ
ろだった。
大きな機体に幾つかの羽根が回っている。
魔導炉があの大きな鉄の機体を動かしていると思うと
気になって仕方がなかった。
いくら錬金術を学んでも人が空を自由に飛ぶには色々
と問題が生じる。
それを一つずつクリアしていくには何十年、何百年と
いう知識と実験の積み重ねが必要だった。
遙は現代の知識があると言っても汽車を動かすのとは
全く別ものなのだ。
蒸気機関車などは、よく社会化見学で行ったので構造
は大体覚えている。
が、飛行機となるとそうはいかない。
現代にはない化学を魔法という形で補うこの世界では
それなりに魔法知識と錬金術の知識が必要不可欠なの
だ。
そこに魔導技術も加わると、やっと飛行船を作ろうと
なるのだった。
遠くで眺めているだけでも感激なのに、アレに乗ろう
と思うのだ。
それなんりの金額がいるが、絶対に乗る。
そう心に決めたのだった。
「ここでも稼ぐんだろ?」
「勿論。ガンガン稼いで飛行船でまずはナニス王国へ
向かう。あとは列車でペリド王国の付近まで行けれ
ばいいなって感じかな」
「ナニスに行ったら、ちょっと寄り道していいか?」
「ナニス王国ってオスタリア公国と不可侵条約を結ん
でたって言ってたはずだけど、最近では小競り合い
になってるってこの前の街で聞いたけど……」
「あぁ、そうだ。オスタリア公国の後継ぎがイーサな
ら………戦争になる」
メノウははっきりと言い張ったのだった。
メノウと、弟のアンバーの母親は元ナニス王国の王族
なのだ。
自国出身のイーサの母には戦争を回避するだけの力は
ない。
だから、どうしても今のオスタリア公国には戦争を
避ける手段はないと考えていたのだ。
イーストの街は多くの人で賑わっていた。
アネスタ王国の王都であるマジステよりも盛えている
気さえするくらいだった。
「やっぱり飛行船が行き来するせいか物資の流通が
豊富で人の行き来も多いなぁ〜」
「おぉーー。なんだよ、あれ!ハルカ、ちょっと見て
てみろよ。なんだこれ」
メノウがはしゃぐ理由は至るところに出ている出店だ。
その中の一つに屋台の中をくるくると飛行する玩具が
あったのだった。
「これも魔石を使って浮いてるのかな?」
「お、坊主。いいところに目をつけたな〜。これはあ
のでっかい飛行船の小型バージョンだ。仕組みは同
じだが、動力が違う。すげーだろ?金貨10枚でどう
だ?安いだろ?」
「高いだろ?これじゃ人は乗れねーよ」
「おいおい坊主、これはなただの玩具だ。玩具に乗れ
るわけないだろう?」
確かにそれもそうだ。
だが、原理は一緒なのだ。
もし、同じようなものが作れたのなら………。
少し考えた末、遙は一個購入する事にした。
「金貨10枚ですね。では、これで」
「お、もうちょっと吹っかけておくべきだったか〜。
まぁいい。ほらよ」
そう言って玩具を渡してきた。
色々と見て回ってから冒険者ギルドによって、宿屋
を紹介してもらった。
宿屋までの途中、人気が少ない場所を通る事になった。
そこで、遙もメノウも足を止めたのだった。
あの玩具を買ってからずっと誰かにつけられていた
からだった。
「そろそろ出て来てくれません?」
「おい、いつまでつけて来るつもりだ?」
メノウは痺れを切らせるかのように軽く魔法を放つ。
遙はその間に小型にした魔道具を地面に転がした。
石ころのような大きさだが、踏むとその場で爆発する
代物だった。
メノウの魔法で気を逸らして地面に転がしたので気
づかれる心配はないだろう。
すると、ぞろぞろとマントで顔を隠した人が出て来た。
やっぱりと思いながらも。少しづつ距離を詰めてくる
のを見て、わざと後ずさる。
遙の罠に気づいた時にはもう遅い。
地面から爆発が起きて、油断している間に吹っ飛ばさ
れていった。
大きな爆発音にちらほらと人が集まって来る。
そのうちに遙とメノウはその場を後にしたのだった。




