9話 菊光石
ある日、朝から起き出すとゴソゴソと荷物を纏め
ていた。
遙は物音に目を覚ますと、起き上がると部屋をで
た。
すると、いつも朝早い遙よりも師匠が早く起きる
なんて珍しく事があるものだとじっと眺めた。
「何をしておるんじゃ。出かける準備をせんか」
「出かける?どこに行くんですか?」
「菊光石じゃ。今の時期しか取れんからの」
「菊光石?それって、この前倉庫から出したのが
最後って言ってましたよね?」
「じゃから今から取りに行くんじゃ。ほれ、これに
荷物を詰めんか」
師匠が渡してきたのは麻の袋だった。
大きさは遙の背中に背負えるくらいに大きさだ。
詰めろと言われても、遙の私物などほとんどない。
何を入れようかと悩んでいると、師匠は戻ってく
ると、キッチンにあった今日朝ごはんであるパン
サンドを紙に包む袋に入れたのだった。
「そんな入れ方したら潰れちゃいますよ?」
「潰れはせん。ついでにそこの鍋も入れておくん
じゃよ?忘れたら困るでの」
「鍋?って、こんな大きさ入るわけないでしょう!」
「何を言っておるんじゃ、それはマジックバッグじゃ
見た目以上の容量が入るんじゃよ」
当たり前の様に言う。
鍋を持つと、袋の入り口まで持っていくと、スッと吸
い込まれる様に入っていく。
これは実に便利だった。
大きさは本人の魔力次第なのだと言う。
なら遙の袋にはどれだけの量が入るのだろうか?
少し試してみたくなったのだった。
そして菊光石はマジックバックを作る材料にも必要な
材料だ。
「僕もマジックバックを作りたいです」
「分かっとるわい。それを作る為に多めに取って来ね
ばな。失敗用も兼ねての」
「なっ……それは、でも、嬉しいです。早く行きまし
ょう!」
こうして二人は王の許可を得て、錬金塔を離れたの
だった。
♦︎♦︎♦︎
遙が拾われてから一年が経った。
オスタリア公国では新たな命が誕生していた。
第一夫人のアンネが二人目を産んだのだった。
名前はアンバーと名付けられた。
後継人にはナニス王国から教育係が来る事にな
ったのだった。
3人目の王子誕生を祝って、国を挙げてのお祭
りムードとなっていた。
「母上、弟が生まれたのですか!僕の弟……」
「メノウ、貴方はお兄さんになったのですよ。
弟とアンバーに恥じぬ様になさい」
「はい、母上!」
目を輝かせて乳母の腕に抱かれている弟を見つ
めていた。
母親は決して自分の子を抱き抱えたりはしなか
った。
父であるマーロ公爵は忙しい人で、アンバーの
出産にも立ち会う事はなかった。
どこにいたのか?
それは第二夫人と寝所だった。
一応名目上は正妻であるアンネとは義務的に寝る
事はあっても、嬉々として通ってくるわけではな
かった。
下級貴族のレーベの元には毎晩のように通ってい
るのに……。
これに嫉妬しない通りはないのだった。




