26話 精霊契約
さっきまで漂っていた光は小さな精霊だった。
遙の手の甲にキスをすると、うっすらで紋様が浮かん
だのだった。
「これは………」
「おい、大丈夫なのか?こいつ、すぐにしまつするか?」
「待って、だから…なんでもないですって」
そういうと、紋様をなぞった。
鑑定をかけると、そこには契約印と出ている。
「契約?」
『そう、私と契約。もう、この森には精霊は残って居
ないのよ。人間達が来て連れて行ったの』
「それってあの冒険者達の事かい?」
『ええ、そうよ。それを怒ったマザーがドライアドを
けしかけたの。村に行かせて人間を根絶やしにする
ようにって……でも、彼女は村人達を保護してほし
いってここに連れてきた……だから幻惑を解いたの』
精霊が言う事は、今までの出来事だった。
精霊を護る為にドライアドを送ったのだが、その彼女
が代わりに村人を守って欲しいと言って来たのだという。
冒険者を根絶やしにするという約束をマザーにしたの
だと言っていた。
村人達は幻惑魔法をかけたまま、ここで幸せに暮ら
して居たという。
だが、突然マザーが怒り出し幻惑を解いてしまった。
そのせいで正気に戻った村人達はここから抜け出し
たのだという。
その理由は村人の一人が精霊を見つけて追いかけた
のだという。
魔力のある者にしか見えない精霊を見つけられた子供
はドライアドの息子だったという。
それを知ったのは、村人達が去った後だったという。
マザーから生まれたドライアドはマザーには逆らえな
いのだという。
それを見ていた精霊達は慰めたかったが、何もできな
かったという。
その後からドライアドは冒険者を見つけては幻惑をか
けて連れて来ては木々の養分にしていたのだという。
「それは酷いな〜」
「そうですね。いくら人間が嫌いだからって村人には
罪はないし、むしろ困ってたのでは?」
「あー、そのあれだ。さっきのって……」
「そうですね。ここに来る前に倒したのってそうです
よね……きっと」
『構わない。きっと死に場所を探してた。だから後悔
しなくていい』
精霊とはこんな性格なのだろうか?
それとも彼女だけが………?
『精霊に性別はない。この契約はお互いに平等な
ものだから、精霊魔法使えるしその魔力暴走も
起こらない』
「知ってたって事………」
『今知った。君の中には膨大な魔力が眠ってる、
でも上手く出さないと数年で暴走する。見れば
分かるから』
「魔力暴走って何だよ?」
「そういえばメノウさんには話してなかったですね。
僕が魔力が少なくて攻撃魔法やその他の魔法が使
えないわけじゃないんです。多すぎて使うのに身
体に負荷がかかるんです。でも、魔力を消費しな
いと身体の中で暴走して死んでしまうらしくて、
頻繁に魔力回路に流したりして消費するようにし
ていたんです。ポーションもその一環ですね」
「好きで作ってたんじゃねーのか?」
「確かに、作るのは面白いですけど、毎日は飽きま
すよ」
毎日日課にように作っていた理由を話したのだった。
採取依頼を頻繁に受けていたのもそういう理由だった
のだ。
まさかこんなところで精霊と契約する事で魔力暴走を
くいとめられるとは初耳だった。
「もう、普通に魔力が使えるって事か?」
「どうでしょうね。そういえば君の名前は?」
『名前なんてない。精霊は多かったから名前なんて呼ば
れることはないから…』
「なら、エルフィなんてどうですか?」
「お、良いんじゃねーか?」
『エルフィ……エルフィ……うん、嬉しい。これからは
エルフィだよ』
「うん。これからもよろしく、エルフィ」
仲間になったエルフィは遙と契約した事でいつでも
呼び出せるようになったのだった。
いつもは耳元でささやき程度で姿を見せる事はない。
精霊使いだと思われると、無用な揉め事に巻き込ま
れるのだという。
「アイスランス!」
精霊の力を手に入れた事で、遙は魔道具無しでも魔法
が行使できるようになった。
性格には精霊魔法であって、魔力を使った魔法ではな
いのだが、見た目だけでは違いがわからないので問題
ないとなった。
大きな氷の槍が飛び出すと標的を貫き周りまでをも凍
らせた。
「これは……すごいですね……」
「凄いってもんじゃねーだろ。強すぎるくらいだぞ」
「もう、普通に討伐依頼でもいけそうな気がしますね」
『討伐依頼?魔物を狩るの?』
「そうだよ。人に危害を加える魔物を倒すんだ」
『それなら任せて、力になるよ』
「いや、それは僕らの仕事だよ、エルフィは誰にも
見られないようにしないと狙われるでしょ?」
『それは………そうだけど……』
「大丈夫。エルフィからもらったこの力があるから」
そういうと、今回のトレント木材の依頼達成を報告
する為に一度マジステの街へと戻る事にしたのだった。
その前にと、この付近の入り口に魔道具を建てると
侵入者用のトラップをしかけておいたのだった。
ありったけの力を込めて作ったので、数年はもつ
だろう。
こんなに多くの魔力を流し込んだのは初めてだった。
魔道具がよく耐えてくれたと思う。
こうして帰りに別の村にも寄ってきたが、そこも誰も
いなかったのだった。
地図から消えた村は一つではなかったのだった。




