25話 森の異変 (5)
昼を過ぎ、目的の魔力反応が近づくといきなり魔力
の反応が消えてしまった。
大体の位置はわかるが、消えた理由がわからない。
向かった先には大きな洞窟があった。
「この中からだよな?」
「えぇ、そうですが……」
「俺が先に行くから着いてこいよ」
「そう………ですね。行きましょう」
メノウを先頭に歩き出す。
すると、真っ直ぐ続いていた洞窟の中がいきなり
開けると大きな巨木が見えた。
そこには空があり、別の森が広がっていた。
中央に聳える大きな巨木にはありえないほどの魔力
があるのが見えた。
「あれがトレントの生みの親ですかね………」
「でかいな……燃えるかな……」
「いえ、燃やしたらやばい気がします。それより、
さっきの魔力反応ですがこの近くからだったはず」
遙が言うと、眼下には小さな村のような建物が並ん
でいた。
勿論、人の気配は全くなかった。
ただ、あるのは人の骨だけだ。
木の根に絡まるように幾人かの人骨が放置されてい
たのだった。
「放置というか、これは………」
「うわぁ〜。まじか……」
風化した装備品から見て、これはあきらかに冒険者
の物も多い。
「さっきの魔物が言っていた精霊を攫いに来たのか
ってのはこの人達の事なんじゃ……」
「でも、それにしても村っぽいのはなんでだ?」
「それは………あの村の住人を連れて来たんじゃな
いですか?」
「何の為に?」
「それは………」
理解できなかった。
理解したくはなかった気がする。
普通に考えたら人を招き入れる理由といえば…養分
にしたかったから……。
そう考えるのが普通だと思う。
特に、動かない魔物にとっては向こうから来てくれ
るのが一番ありがたい。
だが、村からはかなり離れているし、こんな森の奥
まで村人がくるとは思えなかった。
だとすると、先導している「人」がいたはずだ。
「さっきのドライアドが人の形をしていたのって
村の人をここまで連れてくる為だったりして?」
「やっぱり食べる為か!この一体燃やしちまおうぜ」
「どうかな……食べる為ならわざわざ人間の家や畑
まで作るかな?」
「何が言いたいんだ?」
「……わからないんだよ。精霊を護りたいってのは
分かったんだけど……」
まだしっかりした答えが見つからなかった。
ただ、まとまらない考えをするより村だった場所を
見て回ることにした。
そこで、暮らしていた村人の中に貴重面に日記をつ
けている人もいたようだった。
「これは………日記ですね」
「お、何か書いてあるのか?」
「ちょっと待って……………そっか、ここへの移動は
自分達の意思とも取れるけど、冒険者達のせいって
事のようですね。それにしても、どうして誰もいな
くなったのかですね」
日記はいきなり途切れたままになっていた。
まるでこの日を境に全員失踪したかのようだった。
向こうの村では家屋が壊れて倒壊している家もあった。
だが、こっちはそうではなかった。
人だけがいなくなったという感じだ。
どこからか視線を感じると魔力を探す。
しかし、どこにもそんな痕跡はなかった。
「何か見られているような気がするんですが……」
「敵か?」
「まだわかりません。魔力も感じられないですし…」
周りをキョロキョロと眺めたが誰もいない。
そんな遙の視線の中に、ポウっと僅かな光が見えた。
「そこにいるのは誰ですか!」
「どこだ?出てこい!」
メノウが叫ぶとビクッと震えたように小さな光が近
いて来たのだった。
魔力反応は全くない。
「魔物じゃない?」
「攻撃すればわかるだろ?」
「待ってください。何か……」
小さな光は近くにくると羽根の生えた人型へと変わ
った。
大きさは手のひらサイズくらいで、怯えるようにこ
ちらを見ていた。
「君はどうしてここに来たの?」
「………………」
何か話しているように見えるが、言葉が理解できな
かった。
遙が首を傾げると、小さな精霊は自分の手を見せて
手の甲を指した。
遙が自分の手の甲を差し出すとその光の精霊は小さ
な手を伸ばすと、そこにキスをしたのだった。




