20話 ウボツメ村 (5)
屋敷の地下には食料貯蔵庫があった。
もちろん、古いものは食べられないが、穀物はまだ
新しい物が入っていた。
「やっぱり最近使ってたみたいだ……」
食べられるものを選別すると、調理場に浄化の水が
出る桶を設置した。
浄化の水はいわゆる聖水と呼ばれる物と大差ないと
言っていた。
聖魔法の宿る水は何に使ってもいい。
食材に使えば毒素が抜けるので普通だったら食べら
れないような物でも食あたりを起こさなくなるのだ。
串に刺したうさぎ肉を火にかけるといい匂いが漂って
くる。
塩をかけると皿へと盛る。
スープには来る時に取った山菜が入れてある。
バッグから硬いパンを取り出すと薄く切って火で炙る。
付け合わせの野菜に茹でてほぐした兎肉を載せた。
匂いに釣られたのかメノウが戻って来ていたようだ。
「お、飯か?」
「匂いには敏感ですね……」
「そりゃ〜な。腹減ったし。後でアレ出してくれよ」
「まずは掃除して使えるようにしてからです」
「えーー。いいだろう。2階に風呂場を作ってくれて
もさ〜」
メノウはよっぽど風呂が気に入ったらしかった。
お湯をいっぱいに入れるのは普通だったら結構時間が
かかり、その割にすぐに冷めてしまう。
それがこの世界の常識なのだという。
いつでも綺麗な湯に入れるのは、よっぽどの金持ち
貴族なのだという。
それでも、毎日入れるほどではないという。
なぜなら大量の湯を運ぶのは大変だからだそうだ。
遙なら魔道具一個で出来る事が、普通はできないの
だ。
遙には普通に魔法が使える方が羨ましいのだが。
なんともない物ねだりな世の中なのだ。
掃除は3部屋だけで十分だった。
寝起きする部屋と食事を作って食べられる机がある
部屋。
そして、風呂場だった。
メノウが朝、晩と風呂に入るのでよっぽど気に入っ
たのが見て取れる。
遙がいなかった時はどうしていたのか不思議なほど
だった。
しっかり食べると風呂で疲れを取ると、遙の日課の
ような作業が始まる。
野宿の時は何も出来なかったので今日は多めに作る。
錬金鍋を取り出すと昼間取った薬草を入れる。
師匠がよく使っていた杖を手に取ると掻き混ぜる。
魔力でゆっくりと満たせば光が満ちてコロンっと小瓶
が鍋底に転がった。
「よし、性能もバッチリ」
小瓶を横に置くと次々に作っていく。
師匠からは多くのポーションレシピを学んできた。
それをどんどん活用していく。
錬金術で作られた薬は本当に不思議だった。
回復魔法と違って、治りが早く副作用もない。
回復魔法は自然治癒力を高めるせいか、使った後は
治りが少し悪くなるのだという。
だから大きな怪我をした時はポーションの服用を
しながら回復魔法をかけるのが一般的なのだという。
黙々と作り続けると、風呂から上がったメノウが横に
来ていた。
「明日は森に入るのか?」
「出たんですね。そうです。だから今のうちにポーシ
ョンを作っておかないと困る事態にならない事を願
ってますよ」
「ふ〜ん、あのさ、マナポーションって簡単なのか?」
「普通………かな」
メノウはマナポーションが気になるらしい。
遙にとっては高級ポーションも、マナポーションも
さほど変わらないのだった。
材料さえあればどちらも魔力の使用量も変わらないし、
ゲーム感覚といえば軽いかもしれないが、この世界が
いまだに遙にとっては生きている実感が湧かないのだ
った。
確かに捕まって牢に入れられた時には焦ったが、それ
でも無事に逃れたし、代わりにこの世界での師匠を失
った。
師匠にはこの世界で色々な知識をもらった。
多分、返しきれないほどの恩をもらった。
だから、それを少しづつ返していこうと思う。
誰にとは言わないが、師匠のように困っている人に手
を伸ばす事が出来れば、きっと師匠の恩に報いる事が
出来ると思うのだった。




