16話 ウボツメ村
さすが、王都と言うべきだろう。
規模が何もかも大きかった。
依頼の数も次から次へと出てくるので前のような
意地悪で依頼を全部取られてしまう事はないだろう。
見かけないような豪華な装備や、武器を持っている
冒険者が多くいたのだった。
鑑定用のメガネをかけると、入って来た人達を眺め
てみる事にした。
聞いたこともないような素材でできている武器を見
付けるとどうしても気になってしまう。
そう言えば師匠と一緒の時も、珍しいものを見つけ
ると、つい調べさせてくれと頼み込んだものだった。
「すごいですね……」
「さっさと手続きすまそうぜ」
メノウは全くいつもと変わらない様子だった。
今、メノウの髪の色は普通の平民と同じ茶色になって
いる。
もちろん、兄弟で通すつもりなので遙も茶色で合わせ
ている。
瞳の色まではじっくり見ないとわからないのでそのま
まにしている。
瞳の色は髪と違って長時間変化させておけないのだ。
ギルドでの手続きが終わると正式に依頼を受理したの
だった。
「期間は設けられておりませんが、季節が変わる前に
頼みたいとの事ですね」
「では、このまま一泊して明日には向かう予定にしま
す。向こうの街では宿屋とかが知りたいので地図な
どありますか?」
「地図ですけか…確かこの前計測したやつが……うー
ん……見つからないですね。昔のでよければあるの
ですが……」
「それでも構いません」
「でしたら、こちらです」
ギルドでも近隣の村や街の詳しい情報は集まって居な
いのかと思った。
地図は細かな村や町が書かれており、領地を区切る線
ではっきりと分けられていた。
「ここが王都の街、マジステだから……ここより西に
行ったあたりですかね…」
「そのトレントの森ってのはどこにあるんだ?」
「この地図だと……ここですかね…」
西に行ったところに木のお化けのような模様が描かれ
ていたからそれを指で示した。
「お前さんがた、もしやトレントの森へいくのか?」
「はい、お婆さんは知っているんですか?」
「やめておけ。あそこは日も入らぬような場所だ。魔物
も逃げてしまい、住んでいるのは精霊の成れの果てだ
けじゃ。昔はそこに小さな村があったが、今ではもう」
「村?」
そう聞いて遙が目を凝らして地図を見ると、小さな字で
消えかけた名前が書かれていたのに気づく。
「ウボツメ村……」
「そうじゃ、そんな名前だったのう。もう久しく聞く事
はなかったからのう」
「村の人はどうしたんですか?」
「一夜のうちに消えて無くなったんじゃ。変異種が出た
と聞いたんじゃったかの〜、出稼ぎにきていた人がの
慌てるようにギルドへきて騒いでおったわ。それ以来
村への道は通行止めになってしまっての。もう、馬車
も通れぬ獣道になってしまったそうじゃ」
「…………」
「けっ、どーせ逃げ出したんじゃねーの?」
メノウは全く興味がないとでも言うように宿屋へと歩き
出した。
「あ、もう行きますね。情報ありがとうございます」
遙はぺこりと頭を下げると、メノウについて歩き出す。
「さっきの話、本当なのかな?」
「あぁ?知るかよ。それに俺らには関係ないだろ?」
「そうでもないんだよ。だって、その村ってのが今回
依頼した領主の敷地内にあるんだよ」
領主の敷地面積はかなり広い牧草地帯と、数多くの村
で成り立っている。
そのうちの一つがウボツメ村だった。
トレントの森に一番近く、領主邸からが遠く離れてい
たが、トレントの森で狩りを行うなら、どこかで宿を
取る必要があるのだ。
そこで一番近くの村となると、ウボツメ村になるのだ
った。
「本当に村人全員が消えちゃったんでしょうか…」
「あーーー!なら、もし村がなかったら野宿か?野宿
なのか?」
「もう、メノウさんは、少しは考えてください」
最初は野宿も楽しがっていたメノウだったが、宿屋で
の快適な生活を味わった後だと、今更野宿は嫌だとい
うのだった。
遙とて、野宿は好きではない。
だが、宿屋がなければ仕方がないのだ。
だが、野宿中は魔道具を堂々と使えるので気兼ね
しなくていい分、気楽でもあった。
遙の魔道具はどこか並外れているので人前では決し
て使わないようにと念を押されていたからだった。
「食料を買い込んでから向かいましょうか」
「あぁ。」
この時のメノウはだいぶんと魔力のコントロール
が出来るようになってきていた。
「街道沿いまでは馬車が出てるので、途中まで行
きましょう。そのあとは歩きなので日が暮れる
前には村に着きたいですね」
「前の魔力が見えるやつ貸してくれよ」
「あぁ、確かに魔物の警戒にはいいですからね。
なら、渡しておきます」
メノウも魔力は多いので魔道具を動かすくらいの
魔力など大したことなどないのだった。




