12話 嫌がらせ (4)
ギルド内で掲示板を見ていた遙にやたらと絡んで
来た男達は、最近この界隈では有名なパーティー
なのだという。
見ている他の冒険者も彼らを止める事はしなかった。
それは遙達がギルドから優遇されているように見え
ていたからだった。
「逃げる気か?」
「そうだぞ、冒険者同士仲良くするのがいい。そうだ
俺たちの遊び場へ招待してやるよ」
逃げようする遙の腕を掴むとがっしりと抑えつけた。
「離してくださいっ!誰か、だれっ……うぐっ…んん」
「騒いじゃ迷惑だろ?」
そう言うと、口を塞ぎに来た。
力では勝てない。
だからと言って魔道具を出そうにも手を掴まれたまま
ではどうにもならなかった。
「そうそう、ガルイドさんが君に会いたがっていてね。
さっそく一緒に行こうか?」
男達はに取り囲まれたまま歩き出した。
逃げられないように腕を拘束されると口には布が押し
込まれる。
あたかも仲良さそうに肩に腕を回されるが、それは
逃がさない為で、自由になるのは足だけだった。
それでもこの人数から逃げられる保証はない。
それ以上にこの状況を見ていた他の冒険者達は今見
た一切を見て見ぬふりを通している。
当然、知っているのだろう。
連れて行かれた先は、豪華な部屋の一室だった。
「ガルイドさん、連れて来ました」
「そのガキか?」
「はい、今日も生意気にも掲示板を見ていたので」
「離してやれ」
その言葉に、腕を離されるとやっと自由になった。
「お前の武器はなんだ。冒険者なんだろ?」
「僕は採取を主な仕事にしているので、鋏と短剣です。
あとはここに来てから受けたのは下水道の清掃です
かね」
「ほぉ〜、確か一日で下水道を全部綺麗にしたと聞い
たが………事実か?」
ガルイドと言う男は目を細めると遙を睨みつけた。
多分、事実はすでに知っているはずで、改めて聞く
意味などない。
「もう、知っているのではないですか?」
「ほう、度胸もあるようだ……。あとは戦えるよう
ならパーティーに入れてやる。どうだ?」
「ガルイドさん、話が違うじゃないですか?俺に
くれるって……」
「黙れ。後で貸してやる」
何か別の男が話を遮ってきた。
だが、それもすぐに黙った。
「悪いんですが、勝手に僕の行き先を決めないで
いただきたいです。僕はどこのパーティーにも
入る気はないです」
「そうか、それは勿体無いな……」
ガルイドが立ち上がると急に遙に殴りかかってきた。
もちろん、遙には避ける事はできない。
体力も人並み以下だし、剣もまともに振れない。
戦いには全く向いてないのだ。
ドゴッと音が響くと遙は壁に背をぶつけると壁に飾
ってあった装飾品が崩れ、床に落ちた。
「ごほっ…ごほっ……」
咽せると胸が痛む。
咳き込みながら起きあがろうとするが、腕に力が入
らない。
「おい、好きにしていいぞ」
「はい、これは珍しい黒髪だぁ〜……ひひっ、指を
一本……いや、5本切っても問題なさそうだ……」
転がる遙の手の踏みつけるとナイフを手にしていた。
痛みで起き上がる事さえも辛い遙の上に覆い被さる
と髪を鷲掴みにして見下ろしてきた。
「顔は可愛いが、性格が悪いな……従純な方が好ま
れるぞぉ〜」
周りはいい顔をしなかった。
顔を顰めると部屋を出て行こうとする。
だが、ガルイドだけはじっとその男のやる事を眺め
ていた。
「またあいつの悪い癖が始まったぞ」
「あーぁ、こりゃ何分もつかな」
「壊れるか、廃人か……それともショック死するか
もな、前にも一匹いただろ?」
声が耳に入って来る。
そして、遙の手に痛みが走ったのだった。
「あああああぁぁぁっぁーーー」
焼けるほどの痛みに叫ばずにいられなかった。
痛い、痛い、痛い……………。
何も考えられないほどに、ただ痛いのだ。
視界の先に右手の甲にナイフが突き刺さっているの
が見えた。
抜きたくても、抜けない。
逃げたくても逃げられない。
自分の上に乗る男睨みつけると男の顔は笑っていた
のだった。
そう、遙が苦痛に悶えるほどに喜びを感じているの
だった。
「腐れ外道が………」
「泣き叫べ……全身の皮をひん剥いたらもっと泣く
のか?それとも、ここを取って女にでもするか?」
そういうとズボンのチャックへと手を伸ばした。
逃げられない。
今、出来る事は………。
師匠が助けてくれた命をこんなところで……。
もう片方の手を上着のうちポケットへと突っ込む。
そして取る出した筒状の魔道具にありったけの魔力
を流し込むと誰もいない場所へ放り投げた。
「なんだ?自爆でもする気か?」
「ふっ……凍れ…」
遙が投げた魔道具が床に転がると、周りを一瞬にして
凍らせていく。
部屋一面が氷の彫刻のようにあらゆる物が一瞬で凍っ
たのだった。
部屋の外にいた人も、部屋の中から出て来た冷気を見
て慌てて部屋のドアを開けると廊下をも凍らせた。
その階に足を踏み入れた者全員が一瞬で凍らされた。
冒険者と言えど、こんな現象は初めてだった。
知らせを聞きつけた、冒険者ギルドの長をしている
ネイサン・フォードは一歩も近づけなかった。
「これは一体どうなっている?」
「わかりません。いきなり屋敷ごと氷漬けになった
と報告が入り、それで近づいた者も皆……この有
り様でして」
報告のあった通りに、近づくだけで人も、動物も、
全部が凍ってしまったのだった。
「全員死んだのか?」
「いえ、それが………氷の中で生きているようなの
です」
「ほう、それはどう言った理屈かぜひ聞きたいな」
これを起こした人物にぜひとも話を聞きたいと思う。
一躍騒がしくなっていた頃、メノウはガラリとなった
ギルドへと来ていた。
「ハルカはどこ行ったんだ?」
キョロキョロと見渡すが、誰もいない。
ギルドの職員すら慌ただしくしている人以外に、いつも
いる人数よりも少なく感じた。
「ハルカを知らねーか?」
「忙しいので、今は受付けできません。明日にしてく
ださい」
「あぁ……なんなんだ一体……」
「あ、あのう……待って下さい。ハルカくんと一緒の
パーティーの人ですよね……大事な話があります」
メノウは不思議そうに首を傾げると出て行こうとした。
そこを、後ろから来た冒険者が止めたのだった。




