6話 昇格
ホルンの街を出て、今はのんびりと馬車に揺られて
ハルラの街を目指していた。
ハルラは奴隷の売買が唯一出来る街だった。
至るところに奴隷商人がおり、道の端には奴隷達が
鎖で繋がれていた。
「馬車があんなに揺れるとは思いませんでしたよ」
「そんなもんだろ?歩くよりは結構快適だっただろ」
メノウにとってはさほど感じないのかもしれない
が、遙にとってはお尻や腰が痛くて途中何度も自作
のポーションを飲んだがそのせいで気持ち悪くなっ
てしまったのだった。
8日の道のりは長いようで短いのだという。
馬車の護衛も兼ねて載せてもらったのであまり文句
が言えた身分ではない。
ハルラの街は、アネスタ王国の中央にあって、軍事
長官が常駐しているのはこの街が軍事の拠点を担っ
ているからだという。
「おっ、あの子可愛いいじゃん。しかもエロっ」
メノウが目にしたのはボロい布しか身につけて居な
い少女だった。
見た目はボロボロだが、それでも美しく見えるのは
伏せ目がちな本人の美貌によるものだろう。
そして何よりもその格好によるものが多い。
普通の奴隷はただ鎖に繋がれて立っているだけだが
彼女は股を開いた状態で木に括りつけられている
からだった。
通る人に晒し者にされているように見えた。
「アレは一体……」
「あぁ、観光かい?子供が見るもんじゃないよ。
あれはね、客引きの奴隷さね」
「客引きですか?」
横に居たおばちゃんが遙とメノウにこの街の事を
話してくれたのだった。
街の至るところに奴隷商人がいるが、彼らが売っ
ているのはほとんどが犯罪奴隷か、戦争奴隷なの
だという。
そして、今晒されているのが先の戦争で敗戦国と
なった国の姫なのだという。
死ぬよりも有意義な利用法として考えられたのが
この方法で、金さえ払えば他国の姫を好きに蹂躙
出来るのだという。
戦争を起こすような国の貴族や王族はこうして
戦争の罰を身を持って受けるのだという。
止められる立場であった者の宿命なのだという。
そして、今まさに一人の男が金を払って縛られた
少女の身体に触れると公衆の面前で自らの性器を
彼女に押し当てたのだった。
悲鳴染みた声が響き渡ると、人だかりが出来て
いく。
教えてくれたおばちゃんは顔を歪めると舌打ち
して行ってしまった。
「金を出せば抱けるって事か……」
「酷い事を……」
「何言ってんだよ?戦争を起こしたんだから仕方
ねーだろ?」
「ですが、それは親の責任でしょう?」
遙の言葉にメノウは首を傾げた。
「止められただろ?」
「………」
「要は勝てばいいんだ。西のランドブルグ帝国なんて
西諸国を全部傘下に収めて、王族は全員処刑、女は
城で兵士にあてがって、若い男児は奴隷としたって
聞いたぜ?」
「そんな事が……」
「強さが全てなんだよ。身分も生まれた時に決まって
しまうしな」
メノウは少し遠い目をすると、すぐに切り替えたの
だった。
遙も気を取り直すと、冒険者ギルドに向かったのだっ
た。
依頼達成と、もう一つ。
軍事長官であるパルポロ長官に話を通してもらう為
だった。
「すいません。依頼達成と、こちらを」
「はい、こちらのご依頼ですね。それとこちらは…
少しお待ちください。この街は初めてですか?」
「はい…」
「では、案内は必要ですか?あちらで街の案内と
禁止事項など詳しく行なっておりますよ。待っ
ている時間に聞いてはいかがですか?」
「ありがとうございます。ぜひ聞いてみますね」
遙が答えるとメノウも黙って後をついていく。
メノウは極力フードか顔を隠している。
一応オスタリア公国の皇子なのだ。
どこで身分がバレるかもしれないという事で目立た
ないような行動を気にかけるようにしてもらっている。
遙を知る人間はよっぽどいないので、自由に動きている。
身分は冒険者として確立されつつあるので今更異世界か
らの落とし人とバレても何の問題もない。
そして、受付嬢から呼びが入った。
「ハルカさま、こちらで護衛依頼の完了になります。
それによってハルカさまのランクが一つ上がります」
「あ、そうでしたね」
「はい、次のランクには決められた人との戦闘になり
ますので、受ける際は日時の調整が必要になりま
すので、お気をつけください」
「はい、多分僕には無理だと思いますけど」
メノウはFランクからトントン拍子に上がっていき、
今ではCランクにまでなっている。
次のBランクにはまだかかりそうだ。
ハルカはというと、Cランクにはなったが、Bランク
試験さえ受ければすぐにBランクに上がれるところま
で来て居た。
実績だけは積み上げてきたので、試験次第なのだが。
問題の試験が戦闘して相手に納得させるといういた
ってシンプルなものだった。
しかし、戦闘向きではない遙には少し難ありだった。
「僕は戦うのは苦手なので。」
「そうですか、こちらが宿屋の位置になります。あと
3日後に領主様の屋敷にて面会の約束をとってあり
ますので。正午の鐘が鳴るまでにお願いします」
「わかりました。では、こちらの依頼もお願いでき
ますか?」
「下水の清掃ですか……これは範囲が広いですが、た
まに魔物も出るので金銭的にも割に合わない依頼
かと思いますが……それに大の大人でも大変な作業
ですよ?」
「はい、大丈夫です」
こうして、下水の仕事の依頼も受けたのだった。
この街が奴隷商人の街と言われる所以は、どこからと
もなく攫ってきた人を裏で売買しているのを隠してい
るのもある。
いたってそう言う後ろ暗い人間は行き来を下水道を
使う傾向があった。
そこでその駆除をする事で、余計な罪人の駆除
もやろうと思ったのだった。




