1話 訓練
次の日からは、遙とメノウは二人で討伐依頼をこ
なす事にした。
メノウの実力もそうだが、魔力のコントロールを
覚えて貰う必要があったからだ。
遙はまず防御の魔道具を身につけると、とにかく
メノウに魔力を使わせる事にした。
魔物の素材の買い取り価格は格段に下がるが、
それでも練習にはいいと思ったのだ。
だが、まさかこれほどまでにコントロールが悪
いとは予想外だった。
「なんで当たらねーんだよーーー!」
目の前のゴブリン相手に魔法のみで倒すように
言ったのだが。
一向に殲滅できていない。
剣だったらすぐに終わっているだろう。
「ぜぇぜぇぜぇ……剣で斬ってもいいか?」
「ダメです。今日は魔法のみで倒してください」
「もう、魔力が……」
「なら、今日渡したマナポーションを飲んでくだ
さい。ほら、また来ましたよ」
「ぐっ………ごくごくごくっ……」
腕を伸ばすと魔力を絞り出す。
火力は中々のものだ。
問題はメノウ本人にある気がしてならないのだった。
「だぁーー!あったれぇーーー」
「叫んでも変わりませんよ?もっと、しっかり狙って
ください」
遙は至極真っ当な意見を言った。
そして、何度目かでやっと魔物にヒットすると
丸こげになって倒れたのだった。
「たった10匹にどれだけかかってるんですか?」
「たったって……剣さえ使えばもっと早く終わって
たっつーの!」
「魔法が得意なんですよね?」
「それは………魔法のが火力があるからな!」
「なら、まずはコントロールを覚えるべきでしょ?」
「それは…………」
メノウは昔、魔法のコントロールを練習した時期もあ
った。
だが、練習しても練習しても上達できず、兵士に怪我
を負わせるばかりだった。
それもあってか、剣に力を入れて居たが、弟のイーサ
が目覚ましく上達していくのを見て、諦めるようにな
り、練習をサボるようになったのだった。
そのような事情は誰も知らない。
同情もしない。
ただ、同じ事の繰り返しをやるだけだった。
「さぁ、次に移動しましょう」
「またゴブリンかよ」
「動きが単調で鈍いですからね。何度も魔法を外して
も、避けれれば問題ないですから」
そう言って、またもや遙は自分だけ安全地帯を魔道具
で形成すると、そこでただ見ているだけだった。
「あぁー!わかったよ、やってやるよ」
やけくそのように叫ぶと、メノウは今まさに出てきた
ゴブリンに向けた火球を放ったのだった。
数をこなせば少しはマシになる。
確かに、当たる頻度は上がった。
だが、それ以上に外した数の分だけ周りの被害が大変
な事になっていた。
木々は薙ぎ倒され、放置しておくと山火事になふので
はないか?というほど、焼かれていたからだ。
「はぁ〜………まだまだ時間がかかりそうですね」
「全部倒しただろ?」
「………周りを見てください。これだけやっておいて
やっと倒したって……」
「避けるのが悪いんでだろ?」
「そりゃ、魔物でもよけますよ。それに、半数は避け
たのではなく、外れただけですけど」
遙は討伐部位を袋に詰めると歩きながら採取の忘れな
かった。
安全地帯を作って置いてその中でくつろいでいると
メノウが終わったら戻ってくる。
そんな事を繰り返すうちに大分と的に当てれるよう
になってきたと思う。
今日も、マナポーションを2本ほど飲みると再び立
ちあがった。
「今度は左奥に1キロってところです」
「1キロって前みたいに結構距離あったぞ?」
「でも、相手に見つからないように行けば簡単で
しょ?」
「それは……」
「今日は僕も一緒に行きます。さて、こっちも試
したいですからね」
そう言って、昨日夜までかかって作っていたもの
を取り出したのだった。
指ほどの大きさの細い筒状のものだった。
「それってどうやって使うつもりだ?」
「これは………使ってみた方が早いですかね」
そう言って、筒に半円状の模様が書かれたものを
メノウに見せた。
そして、真っ直ぐ歩くとワーウルフと呼ばれる
狼のような魔物に出会したのだった。
素早い動きと、鋭い牙。
群れで動くので、一匹見つけてもそばに十匹ほど
隠れている場合がある魔物だ。
「使い方は簡単です。こうして地面に刺しておい
て魔力を流すだけです」
遙の魔力は攻撃に向いて居ない。
だから、よく魔道具を作るのだ。
集中すると朝まで作っている事もある。
そして最近作っていたのが、この筒状のものだった。
地面に刺すと魔力を流す。
たったそれだけだ。
メノウと遙の周りを薄い膜が覆う。
ピリピリとした光が膜の周りを行き来しているよう
に見える。
「これはなんだ?」
「触らないで下さい。今にわかりますよ」
遙は小石を握ると、ワーウルフの方へと投げた。
コンッとそばに落ちて魔物の足元へと落ちた。
腕力もないせいか距離は飛ばない。
だが、それに気づかせる事は出来たらしい。
ぞろぞろと仲間が出てきて遙達の方へと歩み寄っ
てきたからだ。
「おい、ここは俺に任せてさっきの安全地帯作る
やつ使って後ろで見てろ」
剣を抜くとメノウは緊張したように遙の前にでた。
しかし、遙はメノウの服を掴むと下がるようにいう。
「大丈夫ですよ。今からするのは一種の実験です
から。見ててください」
そういう時、再びそばに落ちて居た石を投げた。
今度はワーウルフをかすめて側に落ちた。
グルルルゥーーーー。
威嚇しているのが見てわかる。
前足で何度も地面を掘る仕草が続くと、唸り声が
やむと、一斉に走ってきたのだった。
飛びかかるのも時間差をつけている。
そして、目の前に迫った時。
バチバチッと大きな雷が落ちたような音をたてて
地面に落ちていった。
この周りに張られた薄い膜に触れた瞬間、雷でも
落ちたかのような大きな音と、肉が焦げる音がして
ワーウルフ達は絶命していた。




