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黒の錬金術師〜異世界に来たからには無双したい〜  作者: 秋元智也
第二章 冒険者として生きる
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31話 メノウとシャイア (3)

戻って来たのは2匹だけだった。

水源へと向かった4匹のうちの2匹と言うことは、

残り成体が2匹と子供が7匹いる事になる。

朝方の出て行った2匹は夜には戻るだろう。

そうなる前に、残りも片付けたいところだった。


「解体は後日だな……今は、入り口にむかうか!」

「そうだな…子供も殺すんだよな?」

「勿論だ。子供とて魔物だ。それに、子供だと甘く

 見ておってはあかんぞ?戦闘力は一般男性並みだ

 からな」

「あぁ、分かってる」


入り口にかけておいた罠はしまっており、赤黒いシ

ミがあった。


「さっきの引っかかってたんだな」

「動きが鈍かったから、そうだろうなとは思ったが

 気づいていなかったか?」

「あぁ…」

「そう言うところも、今度からはしっかり見ておく

 といい」


シャイアはいちいち子供に説明するように話してく

れたのだった。


それからは、シャイアの魔法で地面を大きく抉るよ

うに穴を開けると下には尖った罠を作る。

上から薄い土の板で覆い周りに木の葉をまぶした。


「いいか。絶対に落ちるなよ?」

「……あぁ」


ゴクリと息を呑んだ。

あんな罠に落ちたら、即死するに違いなかった。


「それと、メノは剣術は苦手なのか?」

「いや、そんな事はないけど……」

「その割には型にハマった剣術のようだが、どうにも

 熟練度が足りてないきがしてな」

「あ〜〜〜……それは、ちょっとな」

「このまま冒険者をするなら、もっと鍛えておくべき

 だぞ?自分の身を護ためにも、剣術スキルの一つや

 二つはないと困るぞ?」

「あぁ…考えておくよ………あ、向こうからきた」

「丁度いい。よく見ておれ」


そう言うと、罠の正反対の位置にシャイアが姿を

見せたのだった。


自分達の根城の側に敵がいれば、威嚇するのは至極

当たり前だろう。

人より、魔物の方が鼻はよく効く。

仲間の血の匂いもきっと気づいただろう。


警戒心を露にすると、子供達を後ろに2匹は今にも

飛びかかる勢いだった。


メノウはただ、その光景を陰で眺めているだけだ。

シャイアは何か考えがあるのだと言っていた。

なので、ただじっと見つめることしかできない。

すると、1匹が飛び上がってシャイア目掛けて向か

っていった。


さっき掘った罠を軽く飛び越えたせいか全くひっか

からなかったのだ。


1匹が交戦しているのをじっと眺めていたもう一匹

はなにかを話すと、後ろの子供達も尻尾をブンブン

と振り回した。


すると、一斉に走り出した。

根城に戻るのか?

それとも、シャイアを取り囲むつもりなのか?


真っ直ぐに向かっていく。


だが、目の前にはさっきの罠がある。

一気に走り込んだ勢いのまま地面が抜けると前の二

匹が急にいなくなった。

それに気づかなかったのか後続も続けて穴に落ちて

いった。


「よしっ!」

「かかりよったな…」


慌てて止まろうとするが、だんご状態で走ってきた

スピードを殺す事はできなかったのだろう。

そのまま続け様に落ちて行った。


子供七匹、全員が穴に落下した。

先頭を行った成体も一匹初めに落ちたが、どうなった

のだろうと、穴を覗き込むと硬い鱗まで突き刺さって

死んでいた。


代わりに最後に落ちたであろう子供のうち二匹は這い

上がろうともがいていた。


「シャイア、まだ生きてるけどどうする?」

「あぁ、それならこうすればいい」


そう言って、幾つもの尖った岩を上から降らせたのだ。

薄暗くなる前にと、一旦村に戻ると用意しておいた罠

を数個持つと、シャイアは戻ってきた。


「待たせたな」

「大丈夫だ。まだ戻って来ていない」


見張りの為にメノウはその場に残ったが、退屈な

時間だった。

近くの魔力反応を見ながらあたりを警戒していた

のだが、誰も近寄ってこないのだ。


「普通は血の匂いで魔物が来ると思ったんだがな」

「それは、この辺りの魔物の中で上位に位置付け

 られていたからじゃないか?弱いものは自分より

 強いものが殺られたら身を隠すだろ?」


少し腑に落ちないという顔をするメノウにシャイア

は笑いながら持って来た罠を渡した。


「メノも使ってみろ。案外便利だぞ?」

「そうだな…」

「今度は魔法でも使ってみるか?」

「お!いいのか?」

「……その前に、しっかり狙えるのか?」

「当たり前だろ!火力だけは任せろよ」


メノウは自信満々に答えたのだった。


メノウはシャイアの言った通りに罠を設置すると、

干し肉を齧りながら待つ。


辺りも薄暗くなって、いよいよ夜も更けてきた頃。

やっと巡回の二匹が帰ってきたのだった。

罠にかかったところを一気に火球が襲う。


………はずだった。


「おい、外してるじゃないか!」

「あれ?ならもう一回……」

「やめろっ!剣を抜け!」

「またかよ〜俺の魔法はすげーのに〜〜〜」


そう言いながらシャイアに続けて走った。


罠から抜ける前に仕留める。

それが最善だったからだ。


本当なら今頃丸こげにするはずだった。

が、火球は威力をそのままにどこかへと飛んでい

ったのだった。

避けられたのでも、弾かれたのでもない。

ただ単に上を通り過ぎただけなのだ。


一瞬唖然としたシャイアはすぐに頭を切り替えて

剣を握って走り出した。


メノウを当てにしたのが悪かった。

そう、反省を忘れなかった。


討伐してから村に戻ると、まずは食事と睡眠を取

った。

そして次の日からは水源の調査と、昨日の死体の

処理にあけくれたのだった。


そのままにしておくと、より強い魔物を引き寄せ

てしまう。

なので解体して残った物は土に埋めてしまう。


「これって皮と鱗を縛っておけばいいのか?」

「あぁ、鱗は武器にもなるし、魔道具にも使われる  

 事があるからな。今では女性の装飾品に使われる

 とか言っておったかな」

「へ〜、そうなんだ〜」


村で借りたリアカーに積むとそのまま村へと戻り

報告したのだった。

村長から依頼達成のサインを貰うと買取り価格の

高そうな傷のない物だけを背負って帰路についた。


「今回はご苦労だったな。討伐はどうだった?」

「すげー楽しかったかな。それにシャイア、俺の

 魔法はあんなんじゃねーからな!もっとすげー

 んだからな!」

「あ……まずはコントロールを学ぶ事を勧める。

 ギルドでも魔力の使い方は教えてくれるそう

 だぞ?」

「バカにするな!」


全く頑固なメノウを笑うと、シャイアは別の依頼を

受けに行ったのだった。


「あ、シャイア!もしよかったら、次も一緒に…」

「すまんが、次の依頼はちと厄介での、初心者は

 連れて行けんのだ。悪いな」

「いや、俺強いし?一人でも大丈夫だっつーの」


少し見栄を張ると、メノウは分配金を受け取ると

夕食を食べに定食屋へと入った。


どこもパーティーで食事を囲んでいた。

メノウには一緒にいてくれるパーティーメンバー

などいない。

部屋には口煩いのがいるが、それとていつまでも

一緒とは限らない。


彼の目的はあくまでパリド王国。

あそこは錬金術の盛んな国だからだ。


メノウにはさほど魅力を感じない国だ。

それでも一人になりたくなくてついていくつもりだ。


「よし、足ひっぱらないようにしないとな!」


食事を食べ終わると下宿先へと戻ったのだった。

部屋の中は暗く、まだ同居人の彼は帰って居ない

ようだった。


「あいつ、どこほっつき歩いてるんだよ…仕方ねー

 な、先に風呂でも入れてやるかな」


そう言うと、囲いで覆った中に向かった。

だが、そこにあったはずの大きな桶は丸ごと無くな

っていた。


「嘘だろ……どこ持って行ったんだよ」


部屋で風呂に入れると思ったから、身体を拭くお湯

を断った。

これなら断るんじゃなかったと反省した。


下に降りると、井戸の水を汲み上げた。

タオルを使って身体を拭くと戻ってきてベッドに横

になった。


遙が帰ってきたら、文句言ってやると思いながら

眠りについた。

朝になっても遙は帰ってはこなかった。


「あいつどこ行ったんだよ……まさか一人で出て

 行ったのか……まさか……な」


そんな事はない!とは言い切れなかった。

彼は戦闘は苦手だとしても、魔道具は師匠譲りの

すごい腕をしている。

薬草採取より、ポーションを売った方が売上げは

いいだろう。


たぶん、こんな安い部屋じゃなくて、もっといい

部屋にだって泊まれるだろう。


メノウに合わせてこんな安い宿屋に泊まっている

のだろう。

出かける時は、いつも荷物を仕舞っている。

いつ、どんな時でもそのまま出かけられるように…。


「また………一人か……」


城でもずっと一人だった。

だから、また一人に戻るだけ……。


すると、ガチャとドアが開いた。


「帰ってたんですか?討伐依頼は無事終わったみ

 たいですね。相手の方に迷惑かけなかったです

 か?」

「…………」

「どうしたんです?鳩が豆鉄砲でも喰らった顔して」

「鳩ってなんだよ……別に〜、俺強いし、迷惑かけ

 るわけねーじゃん」

「ふ〜ん」

「なんだよ。信じてねーのかよ?」

「それで、ちゃんと稼いだ分は預けてきたんですか?」

「ん?預けてってなんだ?」

「……聞いてなかったんですか」


冒険者ギルドに入った時に、説明を長々とされる。

その中に、冒険者銀行がある。


冒険者ギルドに入っている人だけが使える銀行で

稼いだ金を一時的に預かってくれる場所なのだ。

遙のようにマジックバックを持っている人は別だ

が、普通は高価な為買う事はできない。

だが、冒険中に持って歩くのも、宿に置いておく

のも不安しかない。


なので、そんな人の為にどこのギルドでも引き出

せる制度があるのだ。


「へーそんなのがあるんだな……」

「稼ぎが多くなれば利用するといいですよ」

「お前はしないのか?」

「僕?………僕は別にかさどらないですから」


そう言って、小さなマジックバックを指した。









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