30話 メノウとシャイア (2)
入り口に罠を仕掛けて、もし帰ってきた時に引っか
かってくれれば、時間稼ぎになるという思惑がある。
「こっそりいくから静かにな。中で松明も魔道具も
使うなよ?」
「どうやって戦うんだよ?」
「それは目が慣れてくれば分かる。こういう洞窟は
大抵な……」
シャイアが言った事がやっと分かった気がする。
洞窟の至るところに光苔が自生していたからだ。
目が慣れて、うっすらと見えるようになってか
らは動くのもスムーズになった。
まずは、洞窟の構造だが単純に真っ直ぐなわけ
ではなかった。
至るところに別れ道があって、数回曲がった所
で行き止まりになっている。
各行き止まりの場所に数匹のリザードマンがいる
のが見て取れた。
全てを見通せる魔道具を持つメノウはあらかじめ
先に位置を教えておいたので、それに合わせるよ
うにシャイアは作戦を立てたのだった。
まずは手前にいる分2匹を静かに倒す。
そして奥で寝ている2匹の所まで一気に行く。
あとは、洞窟内部を巡回している3匹を倒せばいい。
「その魔道具は本当に便利だな?」
「あぁ………そりゃ〜な。そこを右に行くと2匹いる
ぞ?」
「左右に分かれて一斉に行くぞ、いいな?」
「おう、任せろ」
「リザードマンは表皮は硬い鱗で覆われているから
狙うのは腹か首筋、動く関節部分だ。そこだけは
剣でも切れるからな。絶対に背中側からは切るな
よ?剣が刃こぼれするからな」
「分かってるって」
念を押すように、言って来る。
そして、シャイアの合図で一斉に飛びかかった。
「ガキィーン!くっ………これでっ…終わりだ!」
「ふんっ!」
メノウは一応基本剣術は学んでいる。
だが、彼は力技が多く、少しばかり雑だった。
飛びかかりながら腕の関節を狙うと、次に首の筋
を狙って突く。
そして手前に引くように一気に刃をたてた。
横でシャイアは小回りの効く短剣を両手に持つと
懐に滑り込むと一気に自身の身体を回転させながら
下から切り上げた。
人型の魔物は大概頭を繋ぐ首筋を狙うのが定石だ。
そして、短剣を巧みに使いこなすと一瞬で仕留め
たのだった。
「走るぞ」
「すぐ行くっ!」
倒した勢いをそのままに、シャイアが叫ぶ。
その後を追うようにメノウも続いた。
奥の2匹が音に気づいて臨戦体制に入る前に仕留め
ておきたい。
そう思うと、自然と足が速まる。
一番奥に辿りつくと、まだ眠っているのか寝返
りを打っていたのだった。
「このまま一気に首を落とせ、いいな?」
「楽勝♪」
グシャッという音を立てて、剣を突き刺したのだ
った。
刺さらなくはないが、やはり龍を先祖に持つだけ
はある。
鱗は硬く、その硬さで年齢がわかるとされていた。
背側の鱗を切らないようにと、内側を切り裂いた。
「よし、よくやった。あとは巡回しているのを……」
「やばい、気づかれた…………かも。こっちに向か
って来てる」
「そうか、ならちょうどいい。迎え打つぞ」
「でも、3匹だろ?」
「俺が2匹を担当しよう。メノは最後に来た1匹を
頼む」
「あ……あぁ……任せろ」
奇襲と、迎え打つのでは難易度が全く違いすぎる。
むこうも油断しないで仕留めに来ると言う事でも
あった。
だからといって、メノウ達も何もしないわけでは
なかった。
向かって来ているのが分かるなら、罠を仕込む事も
できる。
狭い通路の真ん中に鞄からトラバサミを出すと、床
に仕込む。
洞窟内が砂地でよかった。
薄暗いので、砂でカモフラージュすれば、結構わか
りにくいものだった。
1匹目が顔を出すと、足元のトラバサミに足を取られ
倒れた。
そこに剣を突き立てて急所に刺さるまで突き刺した。
「よし、こっちはおっけ」
「こっちも終わったぞ。さぁ〜て、次が本番だぞ」
「分かってる。俺の実力の見せ所だって事だろ?」
「自信があるのはいい事だが、無鉄砲はいかんぞ?」
シャイアとメノウは即座に剣を構えた。
完全に血の匂いが充満しているせいか、相手も最初
から全力で来る。
硬い爪と、全身を覆う鱗。
柔軟な尻尾を振り回されたら、流石に狭い場所では
逃げ場がない。
それに、相手は長い槍を持った魔物なのだ。
知能が低いゴブリンと違って集団戦闘に長けている。
子供と一緒に出て行ったのは4匹。
子供を守る為に、4匹とも来るとは思えない。
だったら……。
次第に近づく足音と振動。
そして、メノウは魔道具をしまうと手に汗が伝う。
「そう緊張するな。気楽に行けばいい」
「さっきの罠、まだあるか?」
「さっきので壊れたからな。入り口のを合わせて2個
しか用意してなかったからな。村に戻ればまだある
が、今は手持ちはないな」
「分かった。さっき見た限るでは2匹だ。そのあとか
ら来たらアウトかな」
「よーし、では、簡単な罠を教えてやろう」
そう言うと、シャイアは地面に手をついた。
すると、地面がうねって瞬く間にぽこぽこと穴ができた。
等間隔にできた凸凹は真っ直ぐ通路を横切っていた。
「これは……」
「踏むなよ?この暗さだ、踏めばバランスを崩すだろ?」
「なるほど…」
「では、おいでなさったぞ」
メノウ達の姿を確認すると睨みつけ、威嚇の声をあげた。
そして、目の前の敵に突進してきたのだった。
あとは、足元の溝に足を取られると急によろけた。
魔物でも、咄嗟のアクシデントには弱いものだ。
その隙を見逃さず、メノウは剣を構えた。
首筋。鱗の隙間に滑らせるように剣を突き立てて
横凪にすべらせる。
倒れる重量を利用して押し切ったのだ。
メノウが剣術をサボりがちがったせいか技もあった
もんじゃんない。
スキルすら覚える前に飽きてしまった。
今思えば、しっかり覚えておけばよかったと深く
反省したのだった。
シャイアは、オスタリア公国の騎士団長と寸分の
違いもないと思えるほど見事な腕前だった。




