26話 オークションハウス (6)
レステルさんに誘われた食事会なのだが、やたら豪華
な店に来た理由を、今理解した気がする。
食事は3人掛けの席で、今はひと席空いていた。
そこに遅れてきた一人が来ると、空気が一気に重くな
った気がする。
「遅れてすまないな、アネスタ王国の軍事副長官をし
ているスフューエンだ。まぁ〜気楽にしていてくれ」
「父上、そんな事を言ったら余計に緊張させてしまい
ますよ」
「そうか?さっきまで通信会議でパルポロのやつに
嫌味を散々言われてなぁ〜」
「ここでは、そう言った話はやめてください」
「あぁ、そうだったそうだった。君がハルカくんか?
まだ若いのに、レステルが世話になったそうだな?」
「いえ、そのような事は、たまたま見つけた事を言っ
たまでで……」
じっと見つめられると、息が苦しく感じた。
「そうか…たまたまか?あの暗い会場で、たまたま奴隷
売買を見つけたと?」
「………ははは……ええ、偶然見つけただけです」
「そうか。そう言う事にしておこう。せっかくの食事
が不味くなってしまうからな」
レステルさんの父親らしいと言えばらしい気がした。
レステルさんが正義感がある気がしたのは父親の影響
なのだろう。
遙は自分がお尋ね者になっている事をバレないように
しなければならないと、改めて思ったのだった。
軍事長官パルポロという人物は、堅物で有名らしい。
少しの不正も許さず、貴族達には煙たがられている
らしい。
そんな人物の副官をしているというのだから、それなり
に同類と見るべきだろう。
今は砕けた会話をしているが、実は探っているのでは
ないかと不安にすらなる。
あまり関わりたくない人種である。
「そう言えばハルカくんはどこの出身なのかな?」
「え……えーっと、僕は5歳の時に森で拾われたんで
す。拾ってくれた人が最近亡くなって、今はゆっく
りと冒険者をしながら旅をしているんです」
「なるほど、それは悪い事を聞いたかな……」
「いえ、ある程度お金が貯まったら気がむくままに
いろんなところへ行ってみようと思ってるんです」
「それは、また……若いのに……そうか、嘘も言って
いないな……」
一瞬、ゾワッとしたのは間違いないだろう。
この男に睨まれると背筋がゾワゾワするのだ。
だが、さっきの言葉でやっとその正体を理解した。
「もう、父上は……その癖をやめてください。私が誘
ったんですから。失礼です」
「悪かった、悪かった。ハルカくんも気を悪くしたら
すまなかったなね」
「悪いと思っているならちゃんと反省下さい」
「あぁ、悪かった。」
嘘を見抜くスキルでもあるのかもしれない。
そう言えば、昔師匠からも嘘を見抜く魔道具を作った
事がある。
あれは、ただ魔力を込めて言った言葉に動揺があるか
ないかを判断する物で、嘘を真実と思い込んでいる人
には全く意味をなさない物だった。
が、この人は違うらしい。
遙は真実に嘘を少し混ぜた。
より真実に近付けたのだ。
それを聞いて、事実だと判断した。
もし、嘘が多ければ、どう判断されていたのだろう。
いや、その前に疑われるような事があると考えるべ
きだろうか?
「最近何かあったのですか?」
「ん?あぁ、他国の事なんだがな、オスタリア公国
でな、マーロ公爵の嫡子が毒殺されそうになった
らしくて、その犯人は公開処刑されたらしいのだ
が、どうにも逃げ延びたらしいと噂がされていた
んだ。」
「もう、食事の席でそういう話はっ!」
「悪い、悪い」
「その犯人の特徴などは……」
「気になるかい?それが、全く情報が出て来ていない
んだよ。おかしい話だろう?年齢も、年恰好も、そ
して男か女かも分かっていないというんだ。ただ、
国ごとに兵士を置かせてくれと要請があったんだよ。
勿論、うちの女王様はそんな要請蹴ったがね」
「そんなあやふやな事を……変わっていますね?見つけ
たいなら人相を出すべきなのに」
黙って考えている遙を眺めるスフューエンにレステル
は呆れたように、追加の食事を頼んだのだった。
「今日はありがとうございました」
「いやいや、最近は多くの貴族を検挙できてこちらが
礼を言う方だよ。もし、このオークションハウスで
犯罪が行われていたなら、私の娘も巻き込まれる事
になっていたからね。これからもレステルの力にな
ってやってくれるかな?」
「はい、仕事の期間の間は、全力でサポートさせてい
ただきます」
食事を終えると、レステルさんが取ってくれた宿へ
と戻った。
こんなところで、予想外の情報を聞く事ができた。
人相がきでも出回っていると思ったが、そうではな
かったらしい。
だが、メノウは兵士が見ればすぐに分かるだろう。
遙は髪の色を変えているので困らないが、メノウは
違う。
早いところ、金銭の目処が立ったら次の街へと向か
った方が安全かもしれないと思ったのだった。




