22話 オークションハウス (2)
オークションハウスに招かれた遙は、2階の観覧席
に案内された。
一階では、貴族の人達が各々欲しい商品を競売にか
けて、競り落としていた。
その中に、ひと枠だけ大きなスペースを取っている
席があった。
そこだけ椅子は豪華で、部屋のような間仕切りが作
られていた。
勿論、上からは丸見えだが、ここの2階の観覧席を
使えるのは王族やそれに準ずる者だけなのだという。
そこで、ポツリと漏らした遙の言葉が今、物議を醸
しているのだった。
「そう………ですか……では、どうして鞄に子供
を入れているのですか?」
「…!?」
部屋の外で警備をしていた人を呼ぶとレステルの
動きは早かった。
「ハルカくん、今の言葉に間違いはございません
か?もし、間違いだった場合謝罪だけではすみ
ませんよ?」
「えっ……あ、はい。では、レステルさんも見て
見ますか?」
「見る?それは一体どうやって……」
それを聞くと、さっきまで裸眼で見ていたように
見えたが、いつのまにか遙はメガネをかけていた。
それは遙が自作した魔道具で遠距離でも遠くを見
えるようにと改良したものだった。
そして、そこにはもう一つ機能が追加されている。
体温感知機能だった。
レステルに手渡すと、人の体温がはっきりと見える。
そして、それがさっきの貴族達の横に置かれている
大きな鞄の中にも詰め込まれていたのだ。
「これは…すぐに警備隊を呼んでこい!父にも連絡
するんだ!」
レステルの判断は素早かった。
この国では奴隷売買は正規の場所いがでは違法と
されていたからだった。
そもそも、奴隷に出来るのは戦争奴隷、犯罪奴隷
そして、自ら自分を売った場合のみとされていた
からだ。
戦争奴隷は戦争に加担して捕虜として捕まった
兵士や、王族。その血筋の者をいう。
犯罪奴隷とは、盗賊、殺人、強盗など人に迷惑を
かけた人で、お尋ね者として捕まった人の事を言
うという。
これには、実はメノウとハルカも含まれる可能性
がある。
そして、最後の自ら自分を売った場合。
これは罪ではない為、奴隷として働きながらその
お金で自分を買い戻せるのだ。
たまに、子供を攫って戦争奴隷と偽ったり、犯罪
奴隷の身内だからと売買する事があると言う。
この場合、罪もない子供が言われもない罪を背負
うことになり、内々で重労働をさせられたり、性
的な仕事に就かされたりと貴族達の慰み者になる
事もあると言う。
ほとんどの場合、死んでから見つかる場合がある
為に、誰がこのような事をしたのかなど罪が問え
ない場合が多い。
それに手を貸した者も同罪として罪に問えるのだ
が、皆口をつぐんでしまうのだ。
現場を捕まえるか、捕まっている子供の口から
割らせるしか方法はないのだが、実際は口がきけ
ないようにしてあったりと、苦戦させられるのだ。
「これは、お手柄かもしれないな……」
彼女の声は少し震えていたが、決して怖いわけでは
ない。武者震いというやつだろう。
「相手は貴族で、それも高貴な方なんですよね?大
丈夫なのでしょうか?」
「あぁ、それなら心配はいらない。私の父にまかせ
ておけばいい」
そういってにこやかに笑うレステルは嬉々として狩
りにでも出る狩人のようだった。
このアネスタ王国では奴隷の売買が出来るのは、中央
に位置する街、ハルラだけだった。
奴隷を売りたい商人も、買いたい貴族もハルラの街で
競売を行うようになっている。
それ以外での取り引きを硬く禁じる国だった。
アネスタ王国はクンツァイト・ノン・イグネリア女王
が納める国である。
女王の旦那は3人おり、正夫の子はジェイド皇子で今
年20歳になったばかりだという。
次に側室の息子、コーラル皇子は17歳。
そして、もう一人の側室の子は唯一女性だった。
シトリン皇女10歳だった。
皇女の夫に名がないのは、王室に入ると名
姓と名を剥奪されるからだった。
出戻り禁止という慣わしが息づいているのだ。
王室に入って、抜ける事は死を意味した。
その為、名を取り上げ逃げられないようにする
のだった。
もし、逃げれば処刑もしくは奴隷送りにされる。
それほどに、王室の秘密を知った者を外に出さ
ない体制が取られているのだという。
そして、皇子には王室の秘密を教える代わりに
一生、城から出る事はできない。
皇女は他国と結婚する可能性があるので、詳し
い事は教えてもらえないのだった。
そんな国だからこそ、色々と制約があり、決ま
りが厳しいのだった。
そして、その規律を破った者を決して許さない
のだった。
「この国で奴隷売買を行うとは……もし、知ら
れようものなら、このオークションハウスは
直ちに閉鎖され、私達は取り押さえられるだ
ろう。ハルカよく見つけてくれた。礼を言う」
駆けつけた兵士と共に、レステルは下へと向か
って行った。
上から見下ろすハルカは一抹の不安を感じていた。
本当にこのままで大丈夫だろうか?…………と。




