6話 野宿
あれからひたすら山道を歩きどうしで歩いた。
南の国境まではまだかなり距離があるようだった。
人があまり来ないせいか野生の動物や、魔物が普通
に出てくるのだった。
「メノウさん。右の茂みに一体居ます」
「魔法で燃やすか…」
「ダメです、山火事になったらどうするんですか!
腰にある剣は飾りですか?」
「言ったな?俺様は剣の腕も一流なんだぞ?見てろよ」
大口を叩くと剣を抜いて出てくるのを待った。
しばらくしてガサガサッと音がして1匹のツノうさぎ
が飛び出して来た。
無防備な状態でツノうさぎが出てくると致命傷にな
りかねないのだ。
ツノうさぎのツノは硬く鋭いので刺さると痛いだけ
では済まない。
勢いをつけて突進してくるので、下手をしたら死ぬ
事だってある。
魔力も少なく探知魔法にも引っかかりにくいのだと
いう。
群れで行動する事が多く、探知で発見出来るのはそ
ういう時なのだと言う。
「こいつ1匹か?」
「えーっと、そうですね。暫くは安全そうです」
「なんだよそれ?」
「これは魔道具です。わずかでも魔力を持っている
モノが近づくと知らせてくれるんです」
簡単な探知魔法を組み込んだ魔道具だった。
自分を中心に半径1キロ範囲の敵の存在を検知する
事ができる。
魔力の量を増やせばもっと広い範囲も分かるのだが、
師匠曰く、これ以上はあまりにも性能が良すぎて範囲
は短めの方がいいと言われてしまったモノでもあった。
食事はマジックバックに入れた分があるので問題ない。
鍋や火は魔道具で起こせるし、寝る時は魔物避けの結
界を張れば安全で快適な野宿ができた。
直に寝るのはちょっとと思うと森ならではの寝所を
作る。
「それはなんだ?」
「ハンモックですけど?」
「はん……もく?」
「ハンモック!こうやって木と木の間に縄を縛って
そこを布で吊るすんです。ここに乗って寝れば硬
い地面で寝なくてもいいし、楽なんです」
メノウは遙の寝所を見ると、目を輝かせて自分も欲
しいと言い張った。
「俺のもあるんだろ?俺もそれがいい!」
「でも、これは寝相が悪い人には無理ですよ?」
「無理ってお前だって普通に使えてるじゃねーか?
俺だって平気だ!」
「う〜ん……そんなに言うなら……落ちても知りませ
んよ?」
そう言って、師匠の分を取りだした。
そばの木の幹にくくりつけるとちょっと低めにつける。
「なんで俺だけこんな低い場所につけたんだよ?」
「後で分かりますよ。ほら、乗ったらどうですか?」
「あぁ、もちろんだ……」
嬉しそうに寝転がると、ゆらゆらして最初は楽しんで
いた。
次第に眠くなったのか、寝息が漏れたその時。
ドシンッと音がして地面に落下していた。
遙は少し目を開けると、メノウがここはどこだとキョ
ロキョロしているのが見えた。
きっと寝返りを打つつもりで落ちたのだろう。
再び乗り直すと、また寝息が聞こえて来ていた。
遙は口元に笑みを浮かべるとそのまま眠りについたの
だった。




