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黒の錬金術師〜異世界に来たからには無双したい〜  作者: 秋元智也
第二章 冒険者として生きる
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5話 内緒の話

数日後、イーサは目を覚ました。

ベッドでの療養を言い渡されてはいたが、同時に溜ま

りに溜まった公務はベッドサイドに置かれた机の上に

今も山積みになって居た。


メイドに取って貰うと、少しづつ片付け始めたのが

その次の日だった。


「また、ご無理をして……少しは安静になさっていて

 下さい」


イーサの部屋に入ってくるなり小言を言うのは専属

錬金術師のエクドールだった。

命の危機を脱出して目が覚めたら、すぐに公務の書

類に目を通しはじめるなど、聞いた事がない。


「しっかりと治るまでは仕事は禁止です」

「そう言わないでくれ、ずっと寝て居て何もやる事

 がないのも暇なんだ」

「それはいい事です。こう言う時こそ、ゆっくりお

 休みになられてはいかがですか?」

「そうもいかないだろう?メノウはどうしている?」

「………お聞きになりたいですか?」

「……そうか。居ないという事かな……あのメイドは

 メノウの専属メイドだったな。確か王妃様が側使い

 にして居たメイドだったはずだと聞いているよ」


メノウも知って居たのだろう。

メノウがこんな事をしないだろう事は、兄弟としても

理解出来るらしい。


「メノウ様は…何もご存じないかと」

「そうだろうね。あいつならきっと直接来るだろう。

 そう言う奴だからね」

「そうでしたか……あの、実は……」

「父には言えない事かな?」

「はい……こちらを」


エクドールが差し出したものは、イーサに飲ませた万

能薬だった。


伝説級の代物なので、本当ならイーサに使う前に父で

あるマーロ公爵に渡すのが先だった。

だが、急変したイーサを見た瞬間。

そんな事を考えては居られなかった。


すぐに飲ませると祈らずには居られなかったのだ。


こうして容体が落ち着き、何事もなかったかのように

回復できたからこそ、話そうと思ったのだった。


使ってからマーロ公爵に渡すわけにもいかず、そっと

イーサに知らせて終わろうと考えていた。


「これは……私に飲ませた薬……かな?」

「………」

「当たりのようだね。さて、これは一体なんだか聞い

 てもいいかい?」

「エリクサー。巷では万能薬と呼ばれる物です。製法

 も材料もわからず、ただ伝説で受け継がれていると

 言われる物です」


イーサは少し考えてから、俯くエクドールに声をかけ

た。


「これはエクドールが作ったものではないのだね……

 そしてそんな事が出来るのは……偏屈だったが、い

 い師匠だったのだね」

「………はい」

「処刑はメルバルト・ファオニン本人で間違いない

 のかい?」

「はい、処刑後死体を鑑定してもらいましたが本人

 で間違いないかと……」

「そうか……惜しい人を亡くしたものだね」

「……………はい」


イーサはエクドールをチラリと見て、差し出された

小瓶を見つめた。


「でも、すごいものだね。こんなものまで作ってし

 まうとは……本当に惜しい事をした。青の錬金塔

 に作った時のレシピはなかったのかい?研究ノー

 トくらいあるだろう?」

「それが…………何一つ残っていませんでした」

「なるほど…誰にも教えないと言う事は。死人に口

 無しとは言うが、本当に誰も知らないのかい?」


イーサの視線がキツくなる。

それもそうだろう。

こんなすごいものを、もし量産できれば争いどころ

ではなくなるからだった。


「それは……」

「思い当たる事でも?いや…そう言えば子供が一緒

 に居たね?あの偏屈な老人が庇うほどのその子も

 知っているんじゃないかな?今どこにいるのか分

 かるかい?」

「いえ、メノウ様が探していらっしゃいましたが…」

「そうか、メノウがね……まぁいいさ。父にはこれは

 黙っておこう。もう使ってしまったという方がいい」

「はい……そのように」


イーサは小瓶をエクドールに渡すとニッコリと微笑ん

でみせた。


小瓶の中には半分くらいの液体が残っている。

そのまま保存するもよし、研究するもよし。

どちらにしても、誰の目にも触れてはならないと言わ

れているような気がしたのだった。






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