2話 新たな旅立ち (2)
東門から出た遙はそのまま、まっすぐ北ヘ向かうよ
うに歩き、門から見えない場所まで来ると進路を南
に移した。
「おい、どこいくんだ?北に行くんだろ?」
「行き先はアネスタ王国です」
「じゃ〜なんでわざわざこっちに来たんだよ?遠回り
じゃねーか……まさか、間違えたのか?」
メノウは嬉しそうに聞いてくる。
これでも年上だと思うと少しイラッとくる。
見た目だけでも、身長差もあるしどう見ても遙のが
年下に見えてしまう。
中身は遙のが大人なのだが、それはさておき遙を迷
子扱いしてきたメノウにはわからせないといけない
らしい。
「僕たちが逃げたと分かったらどうなると思います?」
「ん?放かっておいてはくれねーか?」
「残念ながらそうはならないでしょうね。追われる
にしても、北に行ったと門番がいえばまっすぐ街
道沿いに北上し検問をはるでしょう。森を通過す
る事も考えて暫くはそこで待つはずです。だった
ら、そのうちに南の国境を超えてしまえば、捕ま
る危険性がないです」
「南って結構歩くじゃん?」
「それは、時間稼ぎしている間に行くしかないです」
下手に乗り物を使って目撃情報を与えるわけにはいか
ないのだ。
誰が、誰に話すか分からない以上、目撃者は少ない方
がいい。
幸い、森の中を歩けば街道を歩くよりは人の目に付き
にくい。
「なぁ〜、本当にこのまま森を抜けるのか?もうずっ
と歩いてるけど疲れねーのか?」
「………」
「なぁ〜って……そういやさ、あの時どうやって助
かったんだ?」
「………」
「教えろって……なぁ〜って」
「助かった?僕はそもそも、どこにも行ってないで
すよ」
乾いた笑いを浮かべると、遙は足を止めた。
ポケットから水入れを出すと、ごくごくと喉に流し
込むとメノウに投げた。
「お、悪いな。って、少ししか入ってねーじゃん」
一口分しか入っていなかったとメノウは文句をたれ
ながらぶつぶつとまだ言っていた。
遙は、そもそもどこにも行って居ない。
前日の食事以降、眠ったままだったのだ。
「僕が起きた時にはもう……師匠はいなかったんです」
「そりゃ〜、ハルカは連れて行かれたんだからな〜」
「だから、僕は……牢から出ていないんです。貴方も
ずっと叫んでいたでしょ?どうして弟子を、あいつ
を見捨てたんだって…」
「……はぁ?」
メノウがそれを言った相手はあの時、牢に残された
ジジイだったはずだ。
決して遙の知らない事だったのだ。
「なら、あのジジイは……あれ?でも、確かにあの時」
「師匠が僕に飲ませたんでしょう。12時間の間姿が変
わる妙薬。僕を逃すために……」
悔しそうに言う遙の目から一筋の涙が溢れた。
起きた時から気づいて居た。
だが、言えなかった。
もし、言ってしまったら、師匠の死を認めることに
なってしまいそうで、話せなかったのだった。




