30話 逃走劇 (3)
馬車で1時間ほどかかった。
途中検問があってそこで時間を食ってしまったのだ。
今、メノウを連れて堂々と街に行くのはリスクが高
過ぎる。
その為、一旦自室に寄ると着替えと馬車の荷台の隙間
を指すと、エクドールはメノウへ視線を向けた。
「もし、私がメノウ殿下を連れて街へ行ったのがバレ
たら困りますので、こちらにお入りください」
「そんな狭い場所に入れるかよ!普通に乗ればいいだ
ろう?」
「良い訳ありません。一応貴方は軟禁されており、街
で見かけられるなど絶対にあってはならないんです
からね!わかってます?」
口調がキツくなると、渋々荷台に身体を滑り込ませた。
「絶対に物音を立てないでくださいね?この時間は
検問を通る事になるので、分かりましたか?絶対
ですよ?」
「わーったって、分かったから、早く出せよ」
「………」
大きなため息を吐くと、エクドールは馬車を出した。
検問は簡易的なもので、隅から隅まで調べられる事は
なかった。
すんなり通ると、そのままギルドの鑑定士の元へと
駆け込んだのだった。
止めておいた馬車の荷台の板がガタッと音を立てて
外れると、メノウはこっそりと抜け出したのだった。
今、メノウは平民が着るような安物の生地で出来た
服を身につけている。
剣だけは自分のを持って来たが、それ以外はエクド
ールが貸してくれたものだ。
「あのジジイ、どこに行ったんだ?」
街をうろうろと彷徨いながら街の中央の噴水広場ま
できた。
公開処刑が終わったせいかだいぶんと客足が減った
ようだ。
それでも、この辺は屋台が多くでている。
「そういや〜腹減ったな〜」
串焼きを眺めるとぎゅるるっとお腹が鳴ったのだった。
お腹の音は勝手に鳴り始める。
だが、この時メノウはお金を持っては来ていなかった。
そもそも、錬金塔に向かっただけだったので、まさか
街まで来る事になるとは思っても居なかった。
「そこのお兄さん、食べるかい?」
「いいのか?」
「あぁ、はいよっ!」
焼きたての串焼きを渡すと、屋台のおばちゃんはニッ
コリと笑顔を見せた。
メノウは早速串焼きにかぶりつくと、いつも食べてい
るような豪勢な食事ではないが、美味しく感じた。
「美味い!これ、すっげー美味いよ」
「褒めてもまけないよ?さぁ、銅貨3枚だよ」
「あ………俺、お金持ってないや…」
「なんだい?お金もないのに受け取ったのかい?困る
よ〜。それでも少しくらいはあるだろう?」
「それは……あ、そうだ!そこのギルドにエクドール
って人がさっき入って行ったはずなんだけど、その
人から受け取ってよ」
「エクドール?それって赤の錬金塔の主様の名前じゃ
ないか?そんな偉い人と知り合いなのかい?」
「あぁ、そうなんだよ……ほら、居たっ!」
そう言うと、今しがた出てきたエクドールへと手を振
ったのだった。
メノウを見つけたエクドールは不審な顔をしながら
やって来ると、屋台のおばちゃんに代金を支払って
いたのだった。
「お金も持たないで、商品を買わないで下さい」
「悪いって……それよりさ、俺探したい人がいるから
またなっ!」
「お待ちください……、そのまま行くのは……」
エクドールが止めるのも無視してメノウは走りだした。
絶対にあのジジイを見つける!
そう心に決めていた。
冒険者ギルドのある大通りを過ぎて街の人を眺めなが
ら探していると、ふと、見知った顔を見つけた。
「さっきのって……」
確かに、チラリと見えた顔が今日の朝、兵士に連れて
行かれた遙に似ていた気がした。
角を曲がると、まっすぐにさっきの姿を探した。
そして、見つけた後ろ姿に、手を伸ばしたのだった。
振り返った顔に、目を見開いたのだった。




