28話 逃走劇
メノウは城の一室に軟禁されるようにドアの前に
は厳重な警備が立つことになった。
実質、ここから自分の意思では出られないという
事だった。
「なんだよ、あいつ……クソジジイのバカヤロウ」
大声で叫ぶが誰も咎めない。
あんなに仲良さそうだった師匠と弟子が、まさか
こんな事になるとは誰も予想しなかっただろう。
いままで、二人がちょっぴり羨ましかった。
言いたい事を言い合える。
そんな二人に憧れてもいた。
自分も、ここでは素の自分で居られたような気がし
たからだった。
だが、それも期待ハズレだったらしい。
自分可愛さに弟子を見捨てるなんて……。
許されることではなかった。
「あんな薄情なやつだとは思わなかった………」
理由があったとか?
いや、それでも……最後の別れだったのに、居眠り
して見送りもしないなんて……これ以上薄情な男は
ないと思った。
一発殴ってやりたいとおもいたったのだった。
ファオニンは塔に帰されて、そこで見張りがついて
軟禁される事になっている。
だが、今ならまだ兵士の少ないところをつけば文句
の一言や、殴る事だってできるだろう。
一回もあのジジイには勝った事はないけど……。
メノウは早速窓を開けるとシーツを剥がしカーテン
も引っ張って破くとロープのように捻って紐を伸ば
していった。
ベッドの足にくくりつけると窓の外に垂らした。
今は外の見張りも居ない。
4階から飛び降りる勇気はないが、紐を伝っていけ
ばきっと降りられると確信していた。
勇気を振り絞って手摺りを乗り越えるとゆっくり
降りていくのだった。
今日はハルカの処刑の日だった。
朝早くに連れ出され、今は街中を引きずりまわされ
ている頃だろう。
それで死ぬ事だってあるのだ。
生きていても手足は使い物にもならず、虫の息にな
っているだろう。
そして、民衆の前で首を落とされるのだった。
メノウは話では聞いた事があるが、見た事はない。
もちろん、馬の後ろに腕を縛られた状態でスタート
し、街の中を駆け足で引きずられるのだ。
最初はいいが、疲れても止まってはくれない。
転んだら最後、ずっと引きずられて皮膚が破けても
そのまま死刑台の前まで引きずられ続けるのだ。
16歳でそんな酷い死を与えるなんて…。
自分の父親だとわかっていてもやるせなかった。
城の中は今は見張りの兵士がドアの前にいるだけで
他にはどこにもいない。
メノウは地面に着地すると、すぐに馬小屋に駆け出
していた。
いつも自分に懐いてくれる馬を撫でると手綱を取る。
鞍を乗せるとすぐに塔へと向かっていたのだった。




