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黒の錬金術師〜異世界に来たからには無双したい〜  作者: 秋元智也
第一章 異世界にきてしまった
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26話 冤罪処刑

暫くして、ファオニンだけが連れて行かれた。

残された遙がただ黙って塞ぎ込んでいるように

思えた。


「おい、何か話せよ……」

「………」

「いいのかよ、こんなの……」

「………」

「なんで、黙ってるんだよ……あのジジイ自分だけ

 でも助かる気だぞ?」

「……いいよ。師匠が選んだ事なら…」

「なんで……お前の意思はねーのかよ!俺はこんな

 の許せねーよ!」


メノウは必死に訴えるが、遙は何も思わなかった。

この世界も、これで終わりなのかと思うと、ちょっ

ぴり寂しかった。

もっと色々な事を知りたかったし、見て回りたかっ

たと思う。

出来る事なら、気の合う師匠と共に……。


騎士の連れられ帰ってきた師匠は笑みを浮かべて

いた。


「明日には出られる。遙悪いが、死刑が明日に決

 まったぞ。わしの言った事を覚えておるか?」

「はい……」

「そうか………ならいい」

「………」


それ以上は何も会話らしい会話はなかった。

ただ、メノウがひたすら暴言を吐いていただけだ

った。


食事は、朝と夜だけ。

硬いパンと水が一杯。


「死刑なら、もっと豪華な食事でもいいのにのう」


師匠はいたって平然とした態度だった。

朝の食事の時間になっても師匠は眠ったままだった。


朝になってもメノウの小言は続いていた。


「おい、ジジイ聞いてるのか?」


ただ、昨日より元気がない気がする。


「お前ら、考え直せよ!孫みたいな奴を死なせる気

 かよ?それでも偉大な錬金術師なのかよ!見損な

 ったぜ!がっかりだよ」


「煩いですね……少し黙ったらどうですか」

「黙ったらって、お前の事だろうが!なんでそんな

 に落ち着いてるんだよ」

「……そうです…ね。死なないから……かな」

「は?……死刑の意味わかってるのか?」

「はははっ……もう、来たんですね……」


遙の落ち着き払った声の後に、兵士達の足音が聞こ

えてきた。

牢を開けると眠ったままの老人を無視して遙だけが

連れて行かれた。


ただ静かに、眠ったままの老人を置いて。




     ♦︎♦︎♦︎




夜の食事を食べてからいつになく眠くなった気が

する。


牢に入れられてから師匠が作っていた薬は前にも

一回作った事があるものだった。

滅多に使う機会がないので、すっかり忘れていた。


あれは確か、お遊びで作ったものだった。




     ♦︎♦︎♦︎




「師匠、今度は何を作りますか?」

「そうじゃのう、これなんかどうじゃ」

「変身薬?」

「そうじゃ。子供の姿では入れない場所に入る時に

 使うんじゃよ」

「子供じゃ入れない場所って…師匠どこに行くんで

 すか?」


疑うような視線を向けると、師匠はニヤニヤとしな

がら手に持った材料を遙に手渡した。


最近はレシピがあれば、大体のものは作れるように

なっていた。

だから、今回もそう、苦労はしなかった。


「じゃ〜試しに飲んでみろ。出来てたらいいところ

 に連れて行ってやろう」

「別に師匠のいいところって怪しすぎて行きたくな

 いんですけど……」


そう言いながら薬を一気に飲み干した。


苦しくなることも、苦いわけでもない。

ただ、少し甘い香りがした程度だった。


そして、急に変化は来た。


骨が軋むような感覚に驚いていると、視線が高くな

ったような気がしたのだった。


「おぉ、いい出来じゃな!さぁ、この服に着替えて

 行くぞ」

「この服って師匠の服じゃないですか?そんな大き

 な……あれ?大きく……はない……?」


鏡のある部屋へ行くと目の前にはパンツ一枚の師匠

が立っていたのだった。


どこからどう見ても師匠が二人だった。


「一体、どこに行くんですか?」

「娼館じゃ」

「………!?」

「興味あるじゃろう?」

「ないです!絶対に行きませんからね!」


あの時は、本当に苦労した。

師匠が娼館に度々行っていたのも驚いたが、それ以上

に女遊びに興じる顔の緩んだ師匠など見たくなかった

からだ。





     ♦︎♦︎♦︎





目が覚めた時には、隣にいたはずの師匠はもういな

かった。


「おい、ジジイ!まだ寝てんのかよ!いい身分だな!」

「あー……」

「お!やっと起きたか?自分の弟子が連れて行かれて

 それで満足かよ!くそ野郎」


口は悪いが、遙を心配してくれたのだろう。

ちょっとは見直した気がした。


「おい、クソジジイ。聞いてるのか?」

「おーい、クソタレジジイ」

「マジで返事くらいしろよ」


ずっと聞いているとイラっとしてくる。

これは、あれだ。

そう、マジで子供なのだ。


確か十七歳と聞いていたはずだが。

これでは、五歳児と変わらないなと思った。










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