23話 毒殺
事の始まりは数時間前のことだった。
今日も朝から食事を済ませたメノウの所にアンバーが
無邪気な顔で駆け寄って行ったのだった。
「イーサ兄さま、今日は一緒にお外にいきましょ」
「済まない、今日は忙しいくてね」
「だったら、少しだけお散歩行きたいですっ」
「……うーん、少しだけだよ?」
「わーい、嬉しいです〜」
そう言ってメノウの前で嬉しそうに騒いでいた。
前日にはメノウにも同じ事を言ってきた。
だが、メノウは全く取り合わなかった。
だからか、今はすっかりイーサにご執心らしい。
そして、庭園を嬉しそうにはしゃいでいるのをメノウ
は自室から眺めていた。
いつも忙しいのか、難しい顔をしていたイーサがアン
バーの前でだけは笑っていた。
昔はここまでギスギスしてなどいなかった。
母のアンネがレーベを敵視しているせいで、子供心に
自分もと言う気持ちが強くなってしまった。
だが。今のアンバーは全くそんな考えはないように見
える。
「俺も……あいつみたいに出来たら………」
好きで毛嫌いしているワケではない。
ただ、そうしないといけない気がしたからだった。
勉強も、剣術も、サボりがちなメノウにとっては青
の塔へ行く時だけは、気が楽だった。
わざわざ人の視線も気にしなくていい。
自分らしく話せるから気が楽だったのだ。
今日も出かけようと、愛馬の毛並みを整えて城の敷
地内を駆ける為に馬小屋を後にしたのだった。
その頃、アンバーと別れたイーサはエクドールと共
に、大臣達を集めて会議をしていた。
朝食の後だったので、紅茶だけ貰うと会議室の中央
にはお茶菓子も用意されていた。
大臣の横にはメイド達が用意した菓子とお茶を出す。
この会議で大きく、二つの派閥を納得させねばならな
かった。
「それで、こちらを見て貰いたいのだが。このままだ
といつかはナニス王国に侵略されかねない。だから
あえて私がこの国を変えようと思っている。王妃様
の勢力がこのまま強くなれば必ずナニス王国が出て
きて、この国は………うっ…………かはっ!!」
紅茶を一口飲むと、話始めたイーサの様子が一変した。
さっきまで何事もなかったというのに、いきなり喉が
焼けつくように痛み出したのだった。
そしていきなり血を吐いて倒れたのだった。
その場には何人も人がいた。
メイド達の悲鳴は響き渡ると、大臣達も驚愕した。
同じものを食していたからだった。
勿論、横にいたエクドールもすぐに医者を呼ぶと、
その場を離れないようにと指示した。
騎士達に現場維持を任せて医者に付き添ったエク
ドールだったが、あきらかに毒を飲まされたと知
ったのだった。
エクドールが戻った時には、その場に消沈している
大臣達と、床に取り押さえられているメイドが一人
いたのだった。
見覚えのあるメイドだった。
「何があったか聞いても?」
「この者が逃げようとしたので取り押さえております。
そしてこの者がこんな物を持っておりまして……」
メイドのポケットに入っていた小瓶は紫色をした怪し
げな色の液体だった。
液体は半分ほど減っていて、何に使ったのかを究明す
るように指示をしたのだった。
今は、一刻も早くイーサが目を覚ますのが先決だった
からだ。
このまま死んだらと思うとゾッとする。
現場に居た全員が処刑されても文句は言えないからだ。
だが。あいにくそうはならなかった。
医者の話では、メイドが持っていたのは毒だったそうで
即効性ではなかったらしい。
3日かけて苦しみ史に至るらしい。
それまでは猶予ができたと言うことらしい。
♦︎♦︎♦︎
別室では女の悲鳴が響きわたっていた。
「この薬はどこで手に入れたんだ?」
「知らないわ……きゃぁぁーー!痛い痛い痛いっ!」
「正直に話せば楽になれるぞ?」
「本当に知らないのよっ!イーサ様に飲ませるように
って言われたらだけなんだもの……まっ……いやぁぁ」
「誰に命令された?」
「……ぜぇ、ぜぇ、は………そんなの決まってるじゃない
私がお仕えしているメノウ様しか居ないじゃない……」
「なっ……なんだとっ……すぐにメノウ様をお連れしろ」
この証言により、メノウの行方が騎士達によって緊急
連行に指示が下されたのだった。
そして、よく遊びにいく先であった青の錬金塔へと
先回りするように騎士が押し寄せたというワケだった。




