21話 念願のエリクサー
暫く様子を見てから、入り口の氷を叩き割ると洞窟内
へと入った。
中の魔力反応は消えている。
分かってはいても少し怖かった。
師匠の後ろをしっかりと掴むように歩くと奥の方で
家族を護るように覆い被さるように死んでいるのを
見つけた。
多分一番体が大きいのが群れの長で、中にいるのが
妻達なのだろう。
腕のなかには少し小ぶりなベアがいたのはきっと…
子育て中だったのだと思われた。
「運が良かったのう。子育て中のファイアーベアは
恐ろしいほど凶暴なんじゃ」
「そう……なんですね」
「あぁ、それにオスの方は毛皮が焼けてしまってお
るが、メスや子供の方は最初の冷気で凍ったせい
か、毛皮の具合もいい状態で残っておるわ」
少し可哀想な気もしないではないが、これがこの世界
にとって当たり前なのだと思う事にしたのだった。
このあと、いきなりウインドウが開くと、エリクサー
の横の鍵マークが消えていたのだった。
「師匠!エリクサーのレシピが見られます!」
遙の言葉に一番驚いたのは多分間違いなく師匠だった。
こうしてギルドへ報告して討伐を完了させると、遙は
Cランク冒険者として認められたのだった。
ただ、Bランクになるには審査官を連れて依頼をこな
さなければならず、躊躇っていたのだった。
「まぁ、後でもいいじゃろう」
「そうですね。今は大丈夫です。Cランクのままで」
「では、言ってくださればいつでもBランクへの昇給
試験を受けられるので、お申し出ください」
「はい」
受け付け嬢にはもったいないと思われたのかもしれ
ないが、今はそれよりもエリクサーのレシピが気に
なっていたのだった。
帰ってからは、メノウがいくら邪魔しても、完全無視
を徹底したのだった。
そして、とうとう完成したのだ。
師匠と遙の二人で作り上げたエリクサー。
万能薬と呼ばれる奇跡のポーションだった。
「まさか、出来るとは思わんかったのぅ」
「どう見てもエリクサーですね」
「あぁ、わしも鑑定しておるんじゃから間違いない」
いつかはエリクサーのレシピを手に入れたいとは思
っていたが、まさか遙のレベルが上がると、そんな
ものまで作れるとは思っても見なかったのだった。
「しかし、このまま行くと、次のレベルが上がる頃
には何が出来るようになっておるんじゃろうの」
「どうでしょうね。僕がエリクサーが作りたいって
思ったから出てきたのかもしれませんし」
「だっら、次は何にしてもらおうかの」
「そんな簡単に決められるとは思いませんけど?」
遙は師匠が嬉しそうならそれでもいいかと思う。
いつもは眉間に皺を寄せている師匠だったが、今
はニッコニコな笑顔なのだ。
きっとかつての弟子が見たら、どう思うだろう。
きっと、別人だとでも思うのだろうか?
どちらにせよ、出来たばかりのエリクサーは一時
封印となったのだった。




