17話 レーベ婦人の心配
その頃、イーサが錬金術師達を説得して何かを企んで
いると知ったメノウはさっそく動き出したのだった。
馬小屋へ行くと馬番が餌を与えている途中だった。
「おい、終わったのか?」
「はい、食事は今終わったと……思います」
「そうか……なら連れていくぞ」
「はい………」
メノウが馬に跨ると、後ろから追いかけて来る足音が
聞こえてきた。
「兄さま〜!メノウ兄さまっ!」
「おぉ、アンバーか。俺は忙しいからな、また今度遊
んでやるよっ!」
メノウはそれだけ言うと駆け出していた。
一番末の弟は残念そうに項垂れると馬番をチラリと見
てニッコリと笑った。
「お馬さんはご飯なの〜?」
「はい、アンバー様」
「僕も一緒にやってもいい?」
「かまいませんが……、服が汚れてしまいます」
「だいじょ〜ぶ、だいじょ〜ぶ!最近ね。変わった
ぐるぐる回る魔道具があるから、すぐに綺麗にな
るんだよ〜」
そう言うと、干し草を抱えると馬の前に持っていく。
干し草だらけになりながらも楽しそうに餌やりを手
伝い終えると満足そうに戻って行ったのだった。
そのあと、母のアンネの知らぬところで乳母によって
アンバーは着替えさせられると昼食の為に父のマーロ
と母のアンネ、もう一人の母のレーベ、そしてイーサ
との遅めの昼食となったのだった。
「メノウは今日も居ないのか?」
父のマーロからはため息混じりの声が出てしまう。
アンネ婦人は視線をアンバーに移すと、色々と世話を
焼いた。
「イーサ兄さま。ご飯終わったらお散歩行きたいです」
「今日はこのあとちょっと……」
「ダメなのですか?イーサ兄さまもアンバーが嫌いな
のですか?」
うるっとした目で見上げると、誰もが罪悪感を覚える。
「いや、ちょっとなら大丈夫だよ」
「やったー!兄さまとピクニックだぁ〜」
アンバーは素直に喜ぶと母の苦い顔など無視して見て
いない事にしたのだった。
レーベル婦人はその会話にハラハラしている。
アンネの機嫌を損ねない様にといつもビクビクして
いるのだ。
だが、イーサと、メノウの対立を思うと、そんな事
に毎回動じていてはいけないのだとも思う。
それでも、下級貴族の娘に王族の娘に歯向かうだけ
の度胸はなかった。
昼食を終えて部屋に帰る途中でイーサへと話かけた。
「イーサ、あの……大丈夫なのですか?」
「母上、何をおっしゃりたいのですか?まさか継承権
を放棄しろとおっしゃらないですよね?」
「それは………でも……」
「母上もしっかりしてください。僕は、一歩も引く気
はないですよ。母上もそのつもりでいてください」
堂々とした息子を見ると、マーロ公爵の子供として産
んでしまった事を、少し悩んでしまう。
「本当に……間違えていないかしら……」
自分の行いに不安しかなかった。
マーロ公爵はいつもレーベを安心させる様にそばにい
てくれた。
毎晩、寝所に来てくれるし、悩んでいると話を聞いて
くれる。
『ただ、そばにいてくれるだけでいい。』
そう言われたのだが、やっぱり子供が欲しくて一人だ
け産む事を決意した。
だが、正妻であるアンネより早く産んでしまった。
第一王子と言う事になったが、実際は第二王子のメノ
ウの方が継承権は上だったのだ。
しかし、この前公爵が発表してしまった言葉のせいで
今、レーベは悩まされている。
アンネからも無言の重圧に……。
もし、このままイーサが後継者となってしまったら?
もし、イーサに何かあったら?
そう思うと気が気ではないのだった。




