72話:タークスさんとヴィンセントさんを驚かせよう
キャシー姉さんの提案で、タークスさんとヴィンセントさんを驚かせよう計画が発足した。やり方は簡単。2人に声をかけ、私の横にキャシー姉さんを召喚するだけである。私は普通に報告しようと思ったんですけどね。キャシー姉さんがやってみたいそうです。お茶目なんだから。
「タークスさん、ヴィンセントさん」
「おう、どうしたウラナ。腹でも減ったか?」
「起きてから何も食べてなかったな。果物かジュース貰ってくるか?」
「そういえば何も食べてないや」
言われて思い出す空腹感。あとで何か食べようかな。数日寝っぱなしだった人間って固形物食べていいのかな。宴会でチーズ入りマッシュポテト頼んだけど、もしかして食べれない? そんな馬鹿な。
食べれるものは後でキャシー姉さんに確認するとして、いまは計画を実行せねばならぬ。
「果物ならすぐに用意できるが」
「後でいただきますね。それよりも聞いてくださいよ。私、新しいスキルを覚えたんです」
「ゴブリンキングを倒したことでスキルが生えたのか?」
「どんなスキルだ」
「ちょっと見ててくださいね。……召喚、キャサリン!」
「「は?」」
さっきと同じようにキャシー姉さんを召喚する。
誰も来ません。あるぇ!?
魔力は消費されてない。まさか、何かしらの制限があるとか? 距離が離れてるとダメだったりしますかね。
「何も起こらないな」
「びっくりしたぁ。キャシーが召喚されんのかと思ったぞ」
「これは何かの間違いでですね」
さっきは成功したんだけど、視界に入ってないとダメなのかな。慌てる私を見て、2人は落ち着かせるように言葉を続ける。
「人間が召喚できるなんて、前代未聞だからな」
「ウラナは知らないかもしれないけどな。人間を転移させるのってすげー魔力が必要なんだぜ。できなくても当然だよ」
「違うんですよ」
「きゃっ」
「「は?」」
私が言い訳を続けようとしたら、キャシー姉さんが現れた。これにはタークスさんもヴィンセントさんもびっくり。私もびっくりである。時間差で召喚された?
「ウラナ! 新発見よ。今回の召喚は召喚されるか否かの通知があったの」
「さっきはなかったですよね」
「ええ。思うに、視覚外にいるか、召喚者と被召喚者間の距離で通知が出るんだと思うわ。YESを押したら召喚されたの」
「なるほど、何かしらの安全装置ですね」
「見えない場所にいる相手が万全な状態であるとは限らないものね」
極端な話、睡眠中や食事中等に強制召喚されたら召喚された側はたまったもんじゃないよね。そういう通知が出るんだ。ゲームっぽい。
「待て待て待て待て」
「キャシーが召喚された? は?」
タークスさんとヴィンセントさんがあまりの衝撃に似たようなことしか言えなくなっちゃった。
ここで、キャシー姉さんと一緒に『マーカー』について説明した。2人にマーカーを付けて、召喚することでようやく事象を理解してもらえました。説明って大変よね。疲れた。
「マーカーは俺が覚えたいくらいなんだが」
「召喚士のスキルなんですよ」
「グゥッ」
またぐぅの音が出てますよ。
「なぁなぁ、これってマーカーを付けてるやつを召喚できるんだよな。武器とか鎧もできるのか?」
「道具はまだ試してなかったわね」
「やってみますね」
試しに手持ちの回復薬にマーカーを付与。離れた場所に置き、召喚できるか試してみる。召喚の欄を見ると、回復薬があった。召喚すると、私の手の中に現れる。無機物もいけそうですね。
「荷物の転移もできるじゃない」
「召喚士がハズレスキルって言われてるの、実は嘘なんじゃないか?」
「死亡率が全ジョブの中でダントツだぞ」
「召喚士本人が弱いからねぇ」
「ウラナが規格外なだけか」
やっぱ召喚士には回避スキルが必須なんやなって。
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