65話:猫に目を猫パンチされるのはあるあるだよね。え、ない?
けっきょく、殴ることは叶いませんでした。右手の負傷で激しい動きNG+ヴィンセントさんの妨害とあっては無理というもの。今回は諦めてやろう。
月夜ばかりと思うなよ。
ヴィンセントさんに引きずられて、村の広場に来ました。そこにはタークスさんと村長さん。キラキラして派手派手しい人と、地味ーな感じの女性もいた。いや、地味は失礼か。フェンのお兄さんが派手すぎて、相対的に地味に見えてるだけだな。タークスさんもいつもより地味に見える。
「報告書はこんなもんでいいかな」
「私も一緒に考えたのだから大丈夫さ」
「冒険者というのも大変ですなぁ」
報告書を作るのは大変なようだ。今度、書き方を教えてもらおうかな。いずれ私も書くかもしれんし。
「タークス、ウラナが起きたぞ」
「マジか! ホントだ。起きて歩いてる!」
「ご心配をおかけしました」
起きて歩いているだけでもすごく喜ばれている。タークスさんは優しいから、すごく心配をかけてしまったようだ。申し訳ない。
「急にぶっ倒れるし、手の方は手術が必要って言われるし、死人みたいに寝たまんまだし」
「マジでご心配をおかけしました」
「生きてれば問題なしだ!」
ニカッと笑ってグッドサインを出してくれる。タークスさんはこういう所が良い人だよな。
「うちのリーダーがトドメを刺したんじゃないかと心配したよ」
「さすがの私もびっくりしたね。無事に起きてなによりさ!」
フェンのお兄さんと女性が声をかけて来た。フェンのお兄さんは存じ上げてるけど、もう1人の方はいったい。
「彼女はイリスさん。レイディアント・パスのヒーラーよ」
「ウラナです。治療してくれてありがとうございました」
「気にしないで。目が覚めてくれてよかった」
イリスさんは近くで見るとめちゃくちゃ綺麗な人だった。遠くから見ると不細工とか、服装がアレとか、そういうことじゃないよ。フェンのお兄さんが派手派手しすぎて、そっちに目が行っちゃうんだよね。彼が視界から外れるとようやく視界がチカチカしないの。それで美女だってくっきりする。
ダメだ。言語化できない。フェンのお兄さん、静かに立ってるだけなのに存在がうるせぇんだ。どうやってあのうるささを出してるんだろ。服が派手過ぎてダサいとかじゃないんだよ。オシャレなんだよ。言ってる私が一番意味わかんねぇよ。
「フェンくんから聞いてるかもしれないけど、こっちがレイディアント・パスのリーダー、フレデリクさんだよ」
「フレデリク・オルディアン・グレイシア。どうぞお見知りおきを」
「あ、どうも、ウラナです。こっちは相棒のミケ」
「なぁん」
フレデリクさんが近づいてくるとふんわりといい香りがする。香水でもつけてんのかな。上品ないい香りだ。それにしても名前が長い。ミドルネームとファミリーネーム、覚えられるかな。ファミリーネームあるってことは、貴族様なんだよね。貴族も冒険者になるんだなぁ。
イリスさんに右手を診察してもらった。経過は良好。このまま完全に治しても良いそうだ。キャシー姉さんも同じ意見らしく、その場で治してもらった。あんだけボロボロだった右手があっという間に綺麗になってびっくりです。
「んなぁあ~!」
「イデデッ。なに、どうしたの」
今まで静かだったミケが突然伸びて、私の太ももに爪を立てた。そのまま爪とぎの要領で交互にひっかく。手加減してくれてるから傷にはなってないけど、みみずばれになりそうなんですが。止めていただきたい。
しゃがんでみると、肩に手を伸ばしてきたので、わきの下に手を入れて抱っこしてやる。珍しく腕の中で丸まってゴロゴロと喉を鳴らした。甘えたかったのかな。
「ずっとお前を心配していた。甘えたいのを我慢していたんだろう」
「あぁん?」
「可愛いところあるじゃん」
「ほぁー!?」
完璧なリアクションである。私への返事はおそらく「自分はいつも可愛いでしょうが!」ってところかな。猫ちゃんってそういうところある。可愛いねーっていうと「そうでしょうそうでしょう」ってドヤるときあるよね。わかるわかる。
ミケは私の目に肉球パンチをして、定位置の後頭部に戻っていった。瞼を閉じるのが間に合わなかったら、またキャシー姉さんのお世話になるところだったぜ。あぶねぇ。
お読みいただき、ありがとうございます。
ブックマークや評価、感想など頂けると今後の励みになります。




