64話:お前らちょっと殴らせろ
レイディアント・パスのヒーラーを探していたら、村の手伝いをしてるブルーリムがいた。ロウと目が合った瞬間に化け物と出会ったみたいな顔をされたのが納得いきませんね。ヴィンセントさんとキャシー姉さんを見たらわんこスマイルになっていたので余計にな。
「キャシー姉さん、ヴィンセントさん、お疲れ様です!」
「なにか手伝えることありますか?」
「ない」
「わかりました!」
「いつでも言ってください。喜んで手伝います」
ヴィンセントさんの塩対応にも負けないオタクども。短い付き合いだけど、これがこいつらなんだなってしみじみする。
「ウラナ、もう起きていいのか?」
「うん。絶対安静だけどね」
「そうか」
フェンが気まずそうに話しかけてきた。なんだよ。私はまだ何もやってないぞ。
「その、悪かったな。兄上のこと」
「何が?」
「クロの上に兄上が乗ってたから、ウラナがぶっ倒れたんだろ。だから、ごめん」
腰を90度に曲げ、フェンが謝ってきた。何かと思ったら、クロに乗ってたお兄さんのことだった。いや、これはフェンが謝る必要なくないか。
「ゴブリンキングを倒すために、移動速度を上げるために乗ってたんでしょ。気絶したのは想定外だったけど、あの時は仕方なかったじゃん」
「まあ、そうだけど」
「よって、フェンが謝る必要なし。お兄さんにもお礼を言わなきゃいけないくらいでしょ」
「……だよな! 俺の兄上は強いから!」
お兄さん好きなんだな。なんか、個性の塊みたいな印象しかないんだけど、いいお兄さんなのかもしれない。詳しくは知らないけど。
「フェンのお兄さんってどんな人なの?」
「自信家」
「それは何となくわかる」
最初の名乗りが「もう大丈夫! 私が来た!」なんて余程自分に自信がなければ言えないでしょ。私は無理。イノとクロを出して視覚外に逃げさせていただく。
「実力の伴った自信家なんだ。俺の憧れでもあるんだぞ」
「へー」
「お前が聞いてきたんだから興味を持てよ!」
あのキャラの濃さはちょっと距離を取らせてもらいたいよね。胃もたれしそう。
「レイディアント・パスはアルヴェリアに駐在してるギルドの中でも上位に入る。すごい人たちなんだ。リーダーのキャラが濃くてもな」
「本当にすごいのよ。実力もさることながら、努力を怠らない。人柄も良し。人気が高いのよ。キャラ濃いけど」
褒め言葉には但し書きでキャラが濃いとつくタイプのチーム。ヴィンセントさんとキャシー姉さんがこんなに褒めてるんだからすごい人達なんだね。初見はアレだったけども。いい人なんだ、たぶん。
「そういえば、タークスさんはいずこへ」
「兄上や村長さんと一緒にギルドへの報告書を書いてるぞ」
「村の広場にいたはずだぞ」
タークスさんのところにフレデリクさんがいるなら、ヒーラーの人も見つかるかもしれない。コイツらと話し終わったら行ってみよ
それにしても、報告書か。なんかかっこいいよね。
「ウラナは報奨金が出るんじゃないか? ゴブリンキング、1人で倒したようなもんだし」
「報奨金?」
「ゴブリンキングは魔物災害のひとつだから、国から報奨金が出るの。冒険者の常識だよ」
「ランクも上がるんじゃねぇか? 過去の討伐ではゴールドランクになった人もいるしさ」
ゴブリンキングを倒した人には色々と恩恵があるようだ。相当強かったもんな、アイツ。タフだし、一撃がヤバかったし。当たってないけども。
「ウラナの場合はリーダー命令を違反しているからな。ランクアップは期待するな」
「カッパーランクに囮役をさせた私は何も言えないんだけどね」
「それは私がやれると思ってやったので」
「ま、報奨金だけで満足しておけ」
報奨金は出るんですか。首都に戻ったらイノやクロの装備を買いたいなと思ってたので、報奨金を頂けるなら御の字。なくても、まぁ、仕方ない。なんとか生活費分だけもらいたいが、無理なら自分で地道に稼ぎましょ。
「報奨金でスクロールでも買って、まともな魔法でも覚えたら」
「DEXを参照してくれる攻撃魔法ってある?」
「首都のマジックショップでそんなの売ってるわけないでしょ。闇市とか、闇ギルドでしか扱ってないんじゃないの」
「闇市とか闇ギルドってあるんだ」
「まともじゃない市場とギルドだからね。関わるなよ」
つまり、私が望むものはまともではないと。知ってた。
「まぁ、ウラナは色々とやべーもんな」
「イカれてる」
「正気とは思えない」
ちょっと、ヴィンセントさん、私の首根っこ掴まないでください。こいつらを視覚外から殴れないじゃないですか! 左手でやりますから!
お読みいただき、ありがとうございます。
ブックマークや評価、感想など頂けると今後の励みになります。




