62話:夢から覚めて
「アカリ!」
「うぁん!?」
勢いよく起き上がる。ずきり、と頭が痛んで、力が抜けた。ぼす、と柔らかい何かに倒れ込む。
「う……」
「ほぁー! うわぁー!」
「……ミケ、うるさい」
「ぁん!?」
耳元で騒がれると、ずきずきと痛む頭に響くんですよ。肩のあたりをべしべしと叩かれている。ごめんて。
「ブフーッ」
「にゃあ!」
「ふごっ」
どうやら、イノも近くにいるようだ。ミケに何かを言い聞かせている。しばらく会話した後、ミケがしょうがねえなぁというような鳴き声をこぼして顔にもふっともたれかかってきた。
毛が痒い。
だんだんと、視界が鮮明になってくる。さっきまでは白く明滅して、はっきりと見えてなかったんだ。ようやくピントが合った時に見えたのは、知らない天井。
「……ここ、どこ?」
「ポテラ村の村長の家だ。お前、丸2日も意識を失ってたんだぞ」
「ヴィンセントさん」
ヴィンセントさんがコップを手に持って、部屋に入ってきた。肩にはちゅんが乗っていて、私が起きていると見ると、弾丸のように飛んできた。勘弁してくれ。なんとか手でキャッチしようとする前に、ミケがちゅんを取り押さえていた。食べるなよ。
「ぢゅん! っぢぃーー!!」
「怒ってることは理解した。ごめん」
「ぢぢぢっ!」
「はい、すみませんでした」
ミケに押さえつけられながらも、何かを訴えてくるちゅん。私が謝ると「ちげぇんだよ!」と言ってるかのようにキレている。言葉がわからんから謝るしかできないのよ。
「自分だけ最後に喚ばれなかったことに怒っているんだろう」
「やっぱり、獣人って動物の言葉がわかる……?」
「獣人を何だと思ってる。わかるわけないだろう」
わからないんですか。ヴィンセントさんはベッドのわきにある椅子に座った。その隣にイノさんが座っている。ベッドの上にあごを乗せている様子から、大型犬みたいに見えた。でっけぇ猪なんだよなぁ。
「ふごっ」
「ぢゅん!」
「ぶふーっ」
「……ちぃ」
ちゅんもイノさんに説得されたようだ。私のデコに座り直している。あの、イノに説得された人達は私の顔に落ち着くっていうルールがあるんでしょうか。痒いんですけど。ちゅんの爪が若干刺さっているしさ。
「水飲むか」
「私の顔、見えてます? ミケとちゅんに抑えられてるんですよ」
「ストローあるぞ」
用意がいいなぁ。口元にストローを当てられたので、大人しく飲む。ぬるい水が喉を通って胃に落ちる感覚。水を飲んで初めて、喉が乾いていたんだなと理解した。水が美味しい。ある程度、水を飲んで落ち着いてから、ヴィンセントさんは寝ている間のことを教えてくれた。
「右手の手術は成功している。後遺症も残らないはずだ」
「やったぜ」
「村にレイディアント・パスのヒーラーもいたからできたことだ。ああいう無茶はしない方がいい」
「はい」
したくてしたわけじゃないが、大人しく返事をしておこう。
「ゴブリンたちはどうなりました?」
「あらかた片付いた。お前が喚んだフレデリクさんがほぼやってくれた」
あのナポレオンポーズの人か。
「フェンがなんか叫んでいた人ですね」
「フェンとフレデリクさんは実の兄弟だそうだ」
「あー」
言われて納得。ぼんやりとしか覚えていないけど、なんとなく似てる気がしたんだよね。演技がかった口調とかがそっくり。
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