59話:VSゴブリンキング3
ミケが走り出す。イノはそれを確認した後、周りのゴブリンたちをまとめて吹き飛ばした。
「フゴォオオッ!」
「にゃん!」
ゴブリンキングは私から視線を離さない。イノも私の背後でゴブリンをはじき飛ばしているからなおさらだ。ノーマークのミケが光る。
「なぉん!」
「チェンジ!」
ミケの合図に合わせてイノとミケの位置を入れ替える。イノが消えたことに、ゴブリンキングが目を見開いて驚く。
メキョォッ!!
「ギュ、グ!!?」
無警戒の背後からの突撃。ゴブリンキングは潰れたように息を吐きだし、私に向かって突っ込んできた。ミケも私もサイドステップでかわす。
「ギッ、ギッ、ッギィイイイッ!!」
何回かバウンドして跳ね起きた。ゴブリンキング、タフすぎるでしょ。かなりのダメージを受けてるはずなのに、何度でも起き上がってくる。
「そろそろ倒れてくんないかな!」
「!」
緑子もそうだそうだと言うように頭を揺らす。そんな私達の気持ちをあざ笑うかのように、ゴブリンキングは頭を掻きむしりながら起き上がった。
タフネスがよぉ。
思わず舌打ちをすると、私の背後からゴブリンキングに向かって何かが飛び出す。それは真っ直ぐゴブリンキングへ向かっていき、トスッと軽い音を立てて突き刺さった。
ダーツだ。
「は?」
「毒ダーツだよ。効果は薄いだろうけど、少しくらい体力を削れるでしょ」
エリオが青い顔のロウを盾にしてダーツを構えていた。援護はありがたいけど、ロウは大丈夫なのか? 顔色がほぼ死人だけど。
「チビのウラナが頑張ってんのに、吐いてばっかいられるかよ!」
「小さい女の子ばかり戦わせてたら、男の名が廃るだろ!」
「お前ら後で覚悟しとけよ」
誰がチビだ。お前らがでけぇだけだっての!
「ギャッ!」
「シャアアッ!」
「ウラナ! よそ見するな!」
いつの間にか、ゴブリンキングが目の前に来ていた。ゴブリンキングの向こう側に、棍棒が置き去りになっているのが見える。重量のあるソレを手放したことで身軽になったというわけかよ。
慌てて距離を取ろうとしたけど、足に激痛が走る。見ると、ゴブリンキングの足が私の足を踏みつけていた。力任せに抜こうとしたけど、STRが初期値の私では無理だった。HPが削れている。
「ギャヒィッ!」
ニタニタと黄ばんだ歯を見せつけながら、ゴブリンキングが拳を振り上げる。さすがにこれは、死ぬのではないか。
「ウァアアアッ!」
「ブフーッ!」
ミケとイノが鳴き声で威嚇してるが、効果はない。ミケの影魔法がゴブリンキングを襲うけど、ひっかき傷しかつくれない。イノは私を巻き込むから突進はできない。
詰んだ。
これはなんだろう。ゴブリンキングが拳を振り下ろす様がスローモーションのように見える。
「ウラナ!」
「そんなっ! ダメよー!!」
「逃げろ、ウラナー!」
拳が徐々に迫ってくる。走馬灯だろうか。懐かしい漫画のシーンが頭に浮かんでくる。そうだ、クマから逃げる時にも思い出したこの漫画、いじめられっ子がボクサーになる作品だったっけ。
あの作品でも、相手に足を踏まれて、めちゃくちゃに殴られるシーンがあったなぁ。
自然と、右手に握りこぶしを作っていた。DEXが高いおかげで、ゴブリンキングの動きは細部まで見えている。
相手の拳に当たらないように頭を横に逃がし、感覚が鈍る足を踏ん張り、ゴブリンキングのにやけ面に右手を叩きつけた。
ゴギャッ
生々しい音が聞こえた。右手が痛い。
ドシャッ
重いものが地面に落ちた音がする。私は、生きていた。右手は真っ赤に染まってて、指の骨が折れているのか、変に曲がってる場所もある。
とても痛い。
「あ、ゴブリンキング……」
私の視界に入ったのは、ゴブリンキングだったもの。顔はぐちゃりと潰れ、ところどころ骨が出ている。とてもグロテスク。そこから真っ赤な血溜まりが地面に広がっていて、ピクリとも動かない。
よく分からないまま、私はゴブリンキングに勝利していた。
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