60話:ポテラ村へ帰らせていただく!
「うぁん!」
「フゴッ!」
「!」
「あだぁっ!?」
ミケが私の胸あたりに飛びつき、続いてイノが私の腹に突き刺さった。手加減はされているけど、耐久がペラッペラの私は余裕で押し倒されました。手加減してくれ。
「ウラナ、生きてるか!?」
「勝手に殺さんでください」
「グレートボアにひき殺されたのかと」
「シャレにならんです」
ヴィンセントさんが駆け寄ってきた。イノさんとミケの下敷きになっている私をずりずりと引きずり出してくれる。背中痛い。
あと、イノさんにひき殺されたら私なんてあっという間にミンチですよ。ミンチ。
「ウラナー! おまっ、おまえ! なんださっきの攻撃!? すげー威力だったな!」
「おてて痛い」
「骨出てるー!? ちょっ、キャシー! ウラナが死んじまう!」
「縁起でもないことを言わないで! ようやくゴブリンキングを倒せたのよ。そう簡単に死んでたまる、キャー!? 骨出てる!?」
「うるせぇ」
2人が元気で私は嬉しいです。ヴィンセントさんが耳をへたっとさせながら、私の体を起こしてくれた。まだ下半身がイノの下敷きなんですよ。片手も使えないから、起き上がるのが大変で、大変で。ご迷惑をおかけします。
キャシー姉さんが弱めのヒールをかけてくれた。このくらいの怪我は処置をしないと回復させても後遺症が残るらしい。村に帰るまで絶対に安静にしなさいということでした。大人しくしてます。
「兄貴ー! ゴブリンどもが!」
「うぇっ、ウラナの手、大丈夫かよ」
「麻酔いる?」
「毒じゃないだろうな」
「麻酔だって言ってるでしょ。この状態で毒を出すほど人でなしじゃないから」
それはそう。疑ってすまなかった。エリオ=毒という認識があって、どうしても気にしちゃうよね。……コイツの日頃の行いのせいでは?
「患部にかけるよ」
「しみないやつで頼む」
「ワガママ言うな」
「いたーーーっ!?」
「痛いで済む怪我ではない」
ヴィンセントさんに抑えられ、エリオに容赦なく麻酔液をぶっかけられた。めっちゃしみる。
「ウラナは村に帰ってから何とかするとして、この数のゴブリンをどうすっかなー」
「村に帰るにしても、トレインはまずいっすよね」
「ウラナのグレートボアもいるし、ミケや緑子もまだ戦えそうだ。クロを喚んでもらって、掃討戦するか」
私の召喚獣が頼りにされていてなによりですが、私本人は戦力外みたいでちょい悲しい。いや、手がこんなんなってる以上、戦力外なのはしょうがないんだけどさ。
「その手で召喚できるのか?」
「召喚に手は使わないので喚べます」
「ちゅんは助けを呼びに行ってる最中かもしれないから、クロだけ喚んでくれ。暴れ回ってもらうぞ」
暴れ馬の本領発揮という訳ですね。さっさと残党ゴブリンを倒して、ポテラ村に帰らせていただきましょう。
召喚スキルを発動させて、クロを喚び出す。
「んっ!?」
「どうした!?」
「いや、なんか、MP、が」
ギュンギュンとMPが減っていく感覚に冷や汗が流れる。おかしい。召喚はMPの消費がなかったはずだぞ。なんだこれ、何が起こってるんだ?
タークスさんの横に、光る魔法陣が現れる。あんな演出は召喚の時になかったはずだ。黒い光の中から、じわじわと何かが現れる。
「クロ、だけじゃねぇな」
「あのシルエットって、まさか」
フェンが魔法陣に近寄ると、光が収まって、全体をようやく見ることができた。クロは別れた時と変わらないが、何故か背中に派手派手しい男性を乗せている。
誰だ、お前は。
「突然、光に飲まれた時はなんだと思ったが、目的地に転移できたとは!」
「ブルルッ」
演技かかった声が耳に入ってくる。もう私のMPはスッカラカンで、気を失う直前だ。
「バックラー、およびブルーリムの面々よ。もうだいじょーーーぶ! 私が来た!」
クロがしぶっしぶという感じで後ろ足立ちになる。背に乗った男性は洋々とポーズを決めており、私の脳裏にナポレオンの絵画が浮かぶ。
「我が名はフレデリク・オルディアン・グレイシア! ゴールドランク、輝く王道のリーダーである! ゴブリンキングよ、いざ尋常に勝負!」
「兄上やめて恥ずかしいから!」
この言葉を最後に、私の意識は途絶えた。MP切れである。フェンの声が聞こえた気がするけど、力尽きた私は確認する術がありませんでした。
異物混入でMPを大幅消費するって何?
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