51話:イレギュラーなゴブリンキング
私の仕事は被害者を助けるためにゴブリンたちをここから引き離すことだ。アイツも当然、引きつけないといけないだろう。
「ミケ、影魔法!」
「にゃおぉお!」
化け物の影が本人に牙を剥く。槍のように尖った影が体を貫こうとするが、筋肉に阻まれたらしく不発に終わった。うっそだろ。
「緑子、毒液!」
「っ!」
緑子が頑張って吐いた毒液も、じゅうじゅうと音を立てるが、大した傷になっていないようだった。どんだけ頑丈なんだアイツ。
被害者を助けるために、コイツもこの場から離さなくちゃいけない。私はミケが自分にしっかりとしがみついていることを確認し、走った。化け物は私が走ったのを目だけで追っている。丸太の棍棒を装備しているところを見ると、パワー型で素早さはそこまでないのかな。私は化け物の目の前まで走り、姿勢を低くして横に抜ける。ヤツが私を見失ったのを確認して、背後から斬りかかった。
ヤツと目が合った。
「は?」
「っしゃあ!」
化け物の影が私に向かって伸びる。ミケの影魔法だ。影に足をつけて、後ろに跳んで距離を開けた。
バゴォオオオン!
私がいたところに激しい砂煙があがる。巻き上げられたらしい土の塊が私に向かって飛んできた。受け流しや見切りでかわせたけど、受け流した手が痛い。直撃してたら、酷いダメージを受けただろう。
煙が晴れていくと、化け物の棍棒が地面を割っていた。あのまま攻撃していたら、あるいは着地していたら、きっと私は消し飛んでいた。比喩じゃなく、文字通りの意味でだ。
「……マジか」
「なぁん」
「ありがとう、ミケ」
ミケのおかげで助かったと言っても過言ではない。お礼に軽く頭を撫でる。視線を化け物から外すことはしない。死にたくないからだ。
「ギャギャッ」
ゴブリンと似ているが、圧倒的にコイツの方が強い。私は、コイツと目が合った時から、ある存在を思い出していた。草原で会ったでっかい熊。アレと同じような威圧感を感じるのだ。ゴブリンで格上の存在、ちらちらと脳裏によぎるゴブリンキングの名前。まさかなぁ。
「ウラナ! こっち来い!」
「了解です」
タークスさんに呼ばれたので岩穴の前まで後退する。化け物は私を見てニヤニヤ笑っているだけだった。強者ゆえの余裕、なんだろうなぁ。
「すみません、引きつけ損ねました」
「いや、ウラナに非はないぞ。ゴブリンキング相手にけしかけてよく無事だったな」
やっぱりゴブリンキングでしたか。無事だったのはミケの機転のおかげですね。生還できたら、ご褒美にいいお魚を献上しなければ。
「集落がないとゴブリンキングっていないんじゃないですか」
「イレギュラーだよ。まったく、勘弁してくれって話だよな」
「上位種のもう一段上、ホブゴブリンもいないのによく生まれたものだ」
ホブゴブリンってなんですかねぇ。聞いてない魔物の名前が出てきました。これ以上の強敵は勘弁していただきたい。
「さて、ウラナ。重労働になるがお前に頼みがある」
「大丈夫ですよ。問題は、どうやってアイツを引き付けるかなんですけど」
「引きつけなくていい。ウラナ、お前はここから離脱しろ」
なにを言われてるのか、一瞬理解できなかった。横目でタークスさんを見る。彼は、真剣な顔でもう一度、言い聞かせるように繰り返した。
「リーダー命令だ。ウラナ、ここから離脱して、救援を求めてこい」
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