37話:酔い覚まし
荷物を運び終わった私は、ブルーリムのエリオと一緒にテーブルに向かっている。他の人達は各々休憩しているよ。ヴィンセントさんがグロッキーだから、落ち着くまで話し合いとかは保留なんだってさ。獣人は感覚が鋭いせいで、馬車酔いが激しいらしく、数時間は動けなくなるそうだ。依頼者であるポテラ村の村長さんも了承してくれてる。ちなみに、この家は村が管理している宿泊施設だそうだ。旅人や行商人が来た時に使われるものなんだって。村人の家に泊めるのは防犯と衛生上あまりよろしくないから、こういう施設は村に1つはあるようだ。なるほど、合理的。
「で、さっきの話なんだけど、ミントケイ インリョウとか、タンサンインリョウってなに?」
「その名前のままなんだけど」
「はぁ?」
はぁって言われても、どういうことだ。ミント系飲料と炭酸飲料だよ。もしかして、異世界あるあるで言葉が伝わってない感じ? どう説明したもんか。
「えっと、まずなんだけど、飲料ってわかる?」
「何かの薬物とか」
「ごめん。違う。飲み物のことを、私の国では飲料って呼ぶこともあるんだ。ドリンクと同じかんじ」
「なんだ、ならドリンクって言えよ」
すみません。
「ミントケイは、ミントの系統のってこと?」
「そう」
「タンサンは? タンサンなんて植物ないんだけど」
「しゅわしゅわしたものなんだよ。炭酸飲料で、しゅわしゅわ、ぱちぱちした飲み物って意味」
「なんだそれ。エールとかじゃないの」
炭酸はないのか。あったとしても、メジャーなものじゃない感じかな。エリオとの話から、ミントはある。しかし、ジュースみたいな甘い物はない。だいたいは苦みのある飲み薬みたいな扱いだ。ハーブティーはあるけれど、お湯を作る手間があるので、貴族などの裕福な人しか嗜まないようだ。平民は基本的に水とか、果実を絞ったものを飲むらしい。
「ミント系のドリンクって作れないかな。冷たければ、馬車酔いがマシになると思うんだけど」
「冷たいドリンク? 温めなくていいの?」
「冷たくして飲むんだよ。そうすると、酔いがマシになるんだ」
冷たい感じと、清涼感が自律神経をうんちゃらって感じだったはず。詳しくは覚えていない。車酔いした時に調べたけど、飲めばいいものがわかったら忘れたよ。人間ってそんなもん。
幸い、エリオがペパーミントを持ってたので、それをハーブティーにした。ついでにキンキンに冷やしてもらう。錬金術師のスキルで冷却ってあって、それを使ってくれたようだ。試しにエリオと一緒になってアイスミントティーを飲む。うん、すぅーってする。めっちゃ口が爽やか。
「うぇっ、これが馬車酔いに効くの?」
「個人差があるけどね。マシになる人はなる」
「ふーん」
口がスースーする。冷たいわ。アイスミントティーを持って、ベッドで横たわっているヴィンセントさんのところに向かう。未だにしんどいようで、ウーウーうなってた。とても可哀想。
「あら、ウラナ。酔い覚ましができたの?」
「効けばいいなぁ程度のものですけどね。ヴィンセントさん、起きれます?」
「むり……」
無理か。ストローってないのかな。キャシー姉さんに聞いたら麦わらが出てきた。うん、英語のストローですね。何をするのか聞かれたので、とりあえず麦わらを洗って、アイスミントティーにぶっ刺す。
「ヴィンセントさん、飲んでみてください」
「おきれない……」
「このストローを吸えば飲めますから」
口元にストローを当ててやると、ヴィンセントさんは少し考えたあとに吸った。そして飛び起きた。
「つめたっ!?」
「こぼしたのか?」
「口の中があり得んくらい冷えた。スースーする。なんだこれ」
清涼感にびっくりして起きたようだ。目をかっぴらいて私を見てる。
「なんだそれ」
「アイスミントティーです。酔い覚ましのつもりで飲ませました」
「はぁ? ……いや、待て。たしかに具合悪いのがマシになった。なんでだ?」
座れる程度には落ち着いたようだ。アイスミントティーを下げようとしたら、もうちょっと飲むらしい。手渡してみると、ひと口飲んでは変な顔してた。こう、子供に初めて炭酸飲ませたような、変な顔。
「飲むと酔いが紛れるな……」
「ヴィー、アンタ、面白い顔になってるわよ」
「こんな顔は初めて見たぞ」
「2人も飲んでみろ。俺と同じ顔になるから」
全員で飲んでみることになり、エリオが追加でアイスミントティーを作った。みんなして変な顔になってて面白い。作った分はしっかり飲み干しましたよ。勿体ないからね。
「にゃっ」
「ミケはダメ。刺激物だよ」
「ほぁー!?」
ミケも飲みたい飲みたいと私にぶら下がってきたが、全力で死守した。猫に刺激物、ダメ、絶対。ヴィンセントさんは良いのかって? 獣人って人間判定だと思うんですけど、違うんですかね。本人に聞いてみたら、別に平気なようだ。人間より味覚が鋭いから、苦手なものはちょいちょいあるらしい。なるほどなぁ。
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