36話:車酔いならぬ馬車酔い
グレートボアを見送った後、馬車の所に戻った。クロと緑子とちゅんは無事だったよ。ただ、ゴブリンの襲撃はあったようで、馬車の周りはひどい状況だった。クロの頭割り、威力は申し分ないが、絵面がひどい。
「ぶるるるっ」
「ちゅん!」
「よぉーし、よし、3匹とも頑張ったね。偉い偉い」
褒めろや、と言わんばかりにすり寄ってくる3匹。のしかかられそうになりながら、何とか頭を撫でて褒める。クロの力が強くて、後ろに転げそうになったが、ヴィンセントさんが支えてくれた。ありがとうございます。
「全員無事でよかった」
「村に急ぎましょう。心配だわ」
クロを馬車につなぎ直し、村へ急ぐ。村への道を進むたびに、ゴブリンの姿がちらほらと見えていた。戦闘にならなかったのは、クロの足が速かったからだ。ガタガタと大きな音を立てて、結構な速さで走る馬車に突っ込みたくなかったんだろう。襲ったら轢かれる。低知能のゴブリンでもわかったようだった。
「けっこうキッツいわね」
「我慢しろー。俺もケツが4つに割れてる」
「キャシーに蹴り飛ばされても無傷なケツが、この程度で割れるかよ」
「ちょっとヴィー。どういう意味よ」
冗談を言える程度の余裕はあるようだ。私はキャシー姉さんの胸に窒息しないか頑張るので大変でした。普通に座ってるときにクロに走らせたら、私がぽーんっと吹っ飛んだんだ。その影響で、私とキャシー姉さんは向き合うように抱き合ってお互いを固定している。キャシー姉さんが抱きしめるだけだと、引っ掛かりが少なくてすっぽ抜けたんだよね。どうせキャシー姉さんに比べたらまな板ですよ。けっ。
「気にすんな、キャシー。ヴィーも馬車酔いしてグロッキーになってんだよ」
「ああ、やさぐれモードなのね」
「うるせぇ。馬車が揺れるのが悪い」
ヴィンセントさんも苦手なモンあるんだね。歩かせているときは耐えられるが、走らせるとすぐにグロッキーになるそうだ。とても可哀そう。
ポテラ村に到着した時には、ヴィンセントさんの顔色は真っ白を通り越して青かった。
「あっ! タークスの兄貴!」
村についた途端、大型犬が3匹走ってこっちに向かってくる。いや、失礼。ロウを始めとするブルーリムの面々が走ってきたのだ。私を見た瞬間に嫌そうな顔をしたが、すぐにタークスさんに向けてわんこスマイル、ならぬ輝かんばかりの笑顔になった。
「ギルドからバックラーが来るって聞いて、ずっと待ってました!」
「移動お疲れ様です! 荷物を運ぶの手伝いますよ!」
「キャサリンさん、相変わらずお美しい」
元気だな。
「ありがとな! キャシーとウラナと一緒に荷物を運んでくれ。俺はヴィーを運ぶ」
「ウラナ、軽い物だけ持ちなさいね。ほら、ロウとフェン、エリオはこっちをもって」
「はい、キャサリンさん! 俺は貴女の下僕です」
「フェンの誉め言葉ってありきたりだよね」
目をハートにしてキャシー姉さんに使われるフェン。それをじとりと見ながら毒を吐くエリオ。ロウは相変わらずタークスさんに尻尾を振ってた。うん、ブルーリムって感じ。会ってそんなに日が経ってないけど、お前らはこうじゃないとなって感じがするよ。
「ふっ」
「また僕達のことを鼻で笑った?」
「猫がそんな器用なことするわけないでしょ」
たぶん鼻で笑ってたと思うけど、エリオが怖すぎるから話をはぐらかしておこうね。
「あ、エリオって薬作れるんだよね」
「うん。僕のジョブは錬金術師だよ。調薬スキルも持ってる」
「ならさ、ヴィンセントさんの馬車酔いを軽減するものって作れないの? 気分が悪いときにリフレッシュできるやつ」
「そんな薬あるの? 僕は知らないけど」
ないのか。車酔いの薬って、前の世界では結構メジャーだったけど、こっちではないのか。ミント系の飲み物とかもないのかな。あれってけっこう酔ってる時に飲むとすっきりしていいんだよね。炭酸飲料とかさ。
「ミント系の飲料とか、炭酸飲料とか」
「お酒ってこと?」
「いや、お酒じゃなくてさ」
「ちょっと待って、興味あるから、荷物を運び終わってから話そうよ」
「それもそうか」
既に今日の宿に荷物を運び入れている3人の後をエリオと一緒に追いかけた。私の足が速いせいで、エリオだけ遅い感じになっている。ごめんて。ダーツを投げられたけど、キャッチしてやったぜ。あっぶな。
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