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それでも彼らは眠らない。  作者: Riviy
第七章 それでも彼らは眠らない。
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第六十八話 ビーカーの中での再会

「さあ、笑って?」



「うわっ?!」


守光はビーカーの中から彼女に倒れ込むように出てきた男性に面食らった。まぁ、男性と云うよりも青年の方がしっくり来るが。彼を受け止めた途端、守光は細胞が叫んだのを体中から感じた。困惑していると青年が、守光を愛おしげに優しく抱き締めた。それに守光が次々に来る驚愕に身を固くする。


「やっと会えた……」

「?……!もしかして…」

「嗚呼、そうだよ。オレは【武甕槌命たけみかづちのみこと】。お前のもとになった」

「っっ!!お父ちゃん!!」


分かった。この細胞の叫びは、感情は。守光は両腕を彼の首に回し、ギュッと抱きついた。彼は守光を優しく、抱き締め、泣き出す彼女の頭を愛おしげにゆっくりと撫でた。その動作が愛情に包まれていて、守光は余計に涙が溢れて来た。彼の肩に顔を埋め、その愛情に酔うように身を預けた。


律夏は目の前の真ん中から真っ二つに割れたビーカーから目を反らし、こちらに近づいて来た男性に目を移した。まっすぐこちらに向かって来る男性に律夏は驚いたように顔をあっちこっち動かした。


「やぁやぁ!懐かしき我が愛し子よ!」

「ふぇ?!」


そう言って男性は律夏に向かって両腕を広げると抱き締めた。突然の事に律夏はオロオロとしている。それに男性は愉快そうに笑った。律夏はムッとしたが、何故かその笑いは心地よい。それに、彼の抱擁は暖かく、愛情に溢れていた。律夏はクスリと笑いながら、男性に言った。


「【本多忠勝】?」

「ほぉ?よくわかったものだな。そうだ、儂はぬしの細胞のもとになった者だ。会いたかったぞ愛し子よ!」


そう言って【本多 忠勝】は再び、強く律夏を抱き締めた。強いが、痛くない。愛情深い。律夏は彼からの愛情に嬉しそうに微笑んだ。


「………ボクも会いたかったよ…父さん……!」


律夏は落ちてきた涙をそのままに彼の胸元に顔を埋めた。泣き笑いのようなその表情に彼は愛おしそうに、ニヒルに笑った。


「妾が分かるか?」


そう、ふわふわとした九本の尻尾を鈴音丸に向けながらビーカーから救出された女性が言う。鈴音丸は女性の妖艶な笑みに惚けたようであったが、一本の尻尾が彼の頬を愛しげに撫でた。それにまさかと、鈴音丸は目を見張った。女性はクスリと笑い、ゆっくりと彼に近づくと抱き締めた。その抱擁から愛情と優しさが伝わって来て、ピクリと鈴音丸の手が動いた。


「ふふふ、嬉しいのぉ。ようやっと、こうして抱き締める事が出来た…のぉ愛しい子よ」

「【九尾きゅうびきつね】……貴殿が、」

「そうじゃ。なんじゃ、分かっておらんかったのか?まぁ、良い良い。愛されろ、我が愛し子よ」


ゆっくりと、鈴音丸の肩に顔を埋める彼女。その彼女の背中に鈴音丸は両腕を回し、強く抱きついた。此処に、いるのが嘘のようだった。いや、事実なんだ。優しく鈴音丸の頭を撫でながら、慈悲深げな笑みを浮かべながら彼女が言った。


「愛す事くらい、妾の仕事であろう?そう思わぬか?」

「はは……そうだな……母さん…」


もぞもぞと埋まっていく鈴音丸に彼女はクスクス笑いながら、尻尾で優しく彼の頭を撫でた。その尻尾からも愛情が伝わって来て、少しむず痒かったが、甘えるように受け入れた。


鳴海は片膝をついて肩で息を整える女性の背を心配そうにさする。彼女は、彼が救出した者ではない。鳴海が引き寄せられるようにやって来ただけだった。鳴海は落ち着いた彼女の背から手を離した。その時、女性はその手を掴み、彼を引き寄せた。突然の事に驚く鳴海の、顔を覆う仮面を片手で外すと彼女は小さく笑った。その笑みが、懐かしくて、それに鳴海は納得したように、口角を綻ばせた。


「嗚呼、やっと見つけた。私の子供」


女性は鳴海の頬を愛おしげに撫でながら、悲しいのやら嬉しいのやらよく分からない笑みを浮かべる。鳴海は彼女だと、確信した。手から伝わる愛情が、獅雨とは違った別の安心感を与えてくれる。


「…………」

「嗚呼、無理に喋らなくても良い。気にするな、子供の言葉なら理解できる」


口をパクパクと動かして言うと女性はそう笑った。そして、鳴海の両頬を両手で包み込むと、額同士を合わせる。カラン、と仮面が床に落ちて反響する。女性の眼差しが暖かくて優しくて、鳴海の瞳が少し潤う。


「今度こそ、私の名に、【青龍】の名に誓おう。愛しているよ、我が愛し子。みんな、一緒だ」


その言葉に鳴海の瞳から涙が零れ落ちる。鳴海は座り込みながら、彼女に向かって微笑む。それに彼女も微笑み返した。愛しげに彼女は鳴海の頬を包む。欲しかった両親からの愛情に鳴海は身を委ねながら、久しぶりに声を発した。


神楽は自身に近づいて来た女性に思わず、抱きついた。女性はそれを優しく受け止めてくれた。神楽は彼女の胸元に顔を埋めながら、言う。神楽には見ただけでわかったのだ。細胞が叫んでいたから。


「やっと会えた…」

「なぁんだ、わかってたのね。私も会えて嬉しいわ、愛し子」


そう言って、女性は自分の胸元に顔を埋める神楽の頭に自身の頬を擦り付けた。頭に来たこそばゆい感触に、神楽は絡繰や統軌を抱き締めた時とは違う安心感を感じた。そして、その優しい頬擦りから伝わってくる愛情に、涙腺が緩んだ。


「私は【神功皇后】……言わなくても分かるかしら」

「うん、分かるよ、分かる……お母さん…」

「あら、嬉しいわ。なら…しばらく、こうしていましょう」


そう言って、彼女は神楽を愛情いっぱい、抱き締めた。その愛情に神楽の瞳から涙が零れ、頬を伝った。


突然、愛情に包まれ、3人は固まった。背後から誰かが3人を抱き締めている。安心感と愛情が彼らに伝わり、それで自分を抱き締めているのが親だと理解した。驚き、何も言えない彼らの代わりと云うように一人の、声的には青年が言った。


「大丈夫。僕らは、貴方達の細胞のもととなった者だ。【天之御中主神あめのみなかぬしのかみ】、【高御産巣日神たかみむすひのかみ】、【神産巣日神かみむすひのかみ】……分かるかな?」

「分からなかったら、悲しいわね~」

「いえ、分からないはずはありませんよ」


優しい、優しい、暖かく、愛情溢れた言葉が零耶、玲御、統軌を包む。細胞と云う細胞が叫んでいる。彼らだと、親だと叫んでいる。

最初は、玲御だった。腕の中でくるりと回転し、親である者と対峙する。親は少女であった。少女は玲御を見ると心の底から嬉しそうに微笑んだ。それに玲御も、ポロポロと涙を流しつつも微笑み返す。統軌も「よいしょ」と言いながら振り返り、親である青年と対面する。零耶も恐る恐る、振り返る。なんだか、自分の存在を確認するようで、人型の武器であった過去を失うような気がして、少し怖かった。けれど、2人が向き合うと決めたのならば、俺も……!


そう思い、零耶は親と対面した。対面したのは少年で、玲御と統軌の親であろう2人と同じように頭から布を被っている。なんだか、自らの武器である"小鶴"と"二葉月"、"燭"に似ている気もした。零耶がキョトンとしていると、少年と青年は顔を見合わせてクスクスと笑った。少女に至っては玲御を抱き締めている。玲御も嬉しそうに彼女に抱きついている。


「武器と似てる、とでも思ってるんじゃない?」

「まぁ、そうでしょうねぇ。力を送った対象に武器も入れていましたからね」


なるほど、だから似ているのか。そう納得していると、統軌がギュッと青年に抱きついた。青年は驚いたようであったが、それを受け止め、抱き締めた。少年が零耶を見やる。彼が親である事は分かっている。驚いているだけで。そう零耶が考えていると少年が零耶の頭を優しく撫でた。その手から愛情が伝わって来る。零耶は嬉しくて、流れそうになる涙を我慢しながら、ソロソロと少年に抱きついた。少年は優しく、頭を撫で続けてくれた。


「「「お帰り(なさい)」」」

「「「ただいま」」」




両親と子供の裏話、スタート!


武甕槌命たけみかづちのみこと】と守光→清守と同じです(笑)ほぼ説明なしですわぁ


【本多忠勝】と律夏→はっきり言いますと、律夏の親、決まっていませんでした!武器が槍なので武器にしようかとも思ったんですが、なんか違う。と云うことで「そういえばでけぇ槍使ってる武将いたな」と思い。なんか、案外ぴったりかも…


九尾きゅうびきつね】と鈴音丸→髪が狐だが犬だがの耳っぽいやつがあったんでこの方に。案外あっさり決まった例でもあります。あと、なんかぴったりだった。


【青龍】と鳴海→獅雨と同じです。説明ほぼなっしーです。


神功皇后じんぐうこうごう】と神楽→神楽の親は最後くらいまで決まりませんでした。「神楽のような女性、もしくは男性。誰ぇえ!!」て、頑張って探しました。結果、母性女性誕生いたしましたよ。


天之御中主神あめのみなかぬしのかみ】、【高御産巣日神たかみむすひのかみ】、【神産巣日神かみむすひのかみ】と統軌、玲御、零耶→三人仲良しだったんで三兄弟的な人達か、三人揃ってる、つまりは三人が理想で探したらいたんですよ造化の三神!いや、見つけた時は正直「神様あざすっっ!!」でしたね。それに【高御産巣日神たかみむすひのかみ】、【神産巣日神かみむすひのかみ】は対で男女と考えられている、というのもあったので「神様あざすっっ!!」。いや、本当に。

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