第六十七話 一方、
「何も知らなかったのは…」
パリンッと云う甲高い音と共に水が勢いよく流れ出す音が響く。零耶は救出されていく神格化された者達を見ながら、ペラリと手に持っていた資料を捲った。いや、捲ったには捲った、だが、それは紙をめくる音が何故かついた、普通のタブレットである。
あの後、玖陽達とわかれ、才蔵とプライドと合流した零耶達。2人と零耶、玲御、統軌の案内で彼らが囚われている研究室へと突撃した。そして、自分達の武器を使ってビーカーを壊し、救出しているところだった。各箇所で自分の細胞の基になった者、両親との再会を果たし、嬉しさに溢れた歓声と神々しくも禍々しい気配が漂い、上がっていた。
「零耶、なに見てるの?」
「ん、玲御、統軌」
と、そこへ救出作業を終えた玲御と統軌が零耶の元にやって来た。合流した才蔵とプライドは他にも囚われた同胞達がいないか、博物館内を回っている。
零耶は寄ってきた2人にタブレットの画面を見せた。これはつい先程、零耶が実験台の上で見つけたものだ。実験台と同じ色だったので、前回来た時は見つけられなかったーいや、混乱していてあの厚い資料にしか目がいっていなかったー。が、何かの拍子で表になったらしく真っ黒な画面だけが見えていたため、発見できたのだ。画面に触れると電源が勝手についたので、研究者か誰かの忘れ物だろうと思った。そして、なにかの資料だとも。
「大丈夫だからさー早くめくって!」
「統軌、早すぎだよ。零耶、見よ?」
「玲御も統軌と同意見じゃねぇか!」
「「まぁね」」
零耶が思わずそうツッコミを入れると、当の2人は可笑しそうに笑って顔を見合せた。それが可笑しくて零耶も小さく笑った。その笑みを見て玲御と統軌は安心したように笑う。
「どうした?」
「だって、零耶ったらずっとしかめっ面なんだもん」
統軌が悪戯っ子のように笑う。零耶はハッとして自分の顔を触った。そう、零耶は色々と考えながら来たため統軌の云う通り、しかめっ面であった。その事を2人は心配していて、笑わせてくれたのだ。互いの考えが通じ合ったようで3人はこの場に合わない笑い声をあげる。しばらく笑い合い、零耶はタブレットを2人にも見えるように調節する。
「いつでもどうぞ?」
「どんと来い~」
「ははっ。んじゃ、お言葉に甘えて?」
3人は肩を並べてクスクスと笑う。他とは違う、別の安心感が彼らを包み込む。零耶はタブレットの画面を触り、白い表紙を表示させる。なにも書かれていないその画面に訝しげに首を傾げながら、次のページを捲った。その3人の背を、優しくも暖かく、愛情深く見つめる者達がいた。彼らはゆっくりと3人に近づく。一人は嬉しそうに、もう一人は楽しそうに、そして、最後の一人は真剣な表情で、自らの細胞を基に造り出された愛し子に向かって歩を進めた。
…*…
〈 〈神格化及び【AVANOLS】リスト〉
〈◯月□日、データが存在しません。〉
〈◯月△日、神格化 【(データが存在しません。予備のデータを入力してください)】〉
〈【(データが存在しt】→桔梗〉
……(以下、データが続く)……
〈□月◯日、神格化【天照大御神】〉
〈【天照大御神】→玖陽〉
…(以下、データが続く)…
〈□月□日、神格化【神功皇后】〉
〈【神功皇后】→神楽〉
…(以下、データが続く)…
〈△月◯日、神格化【青龍】〉
〈【青龍】→鳴海〉
〈△月◯日、神格化【経津主命】〉
〈【経津主命】→清守〉
〈△月◯日、神格化【源義経】〉
〈【源義経】→右京〉
〈△月◯日、神格化【武蔵坊弁慶】〉
〈【武蔵坊弁慶】→左京〉
…(以下、データが続く)…
〈△月◯日、神格化【織田 信長】〉
〈【織田 信長】→絡繰〉
〈△月◯日、神格化【九尾の狐】〉
〈【九尾の狐】→鈴音丸〉
〈△月◯日、神格化【和泉守兼定・関兼定・初代・親兼定】〉
〈【和泉守兼定・関兼定・初代・親兼定】→遊姫 藍〉
〈×月△日、神格化【蝶丸】〉
〈【蝶丸】→翠鶴&珀蝶〉
…(以下、データが続く)…
〈×月*日、神格化【本多 忠勝】〉
〈【本多 忠勝】→律夏〉
〈×月*日、神格化【天之御中主神】〉
〈【天之御中主神】→統軌〉
〈×月*日、神格化【高御産巣日神】〉
〈【高御産巣日神】→玲御〉
〈×月*日、神格化【神産巣日神】〉
〈【神産巣日神】→零耶〉
…(以下、データが続く)…
〈*月*日、神格化【白虎】〉
〈【白虎】→獅雨〉
〈*月*日、神格化【武甕槌命】〉
〈【武甕槌命】→守光〉
(以下、別のデータが続く)…〉
…*…
それを見て、彼らはどういう意図のリストなのか、確信した。政府は、自分達を管理していた。それがどういう事か。被害者がこんなにも多いなんて……
【AVANOLS】の数はまだ少ない方だろう。自分達よりも以前に造られ、何も知らずに自害を強制させられた彼らはどのくらいいたのだろう……そう思うと、胸が張り裂けそうだった。そして、怒りと憎しみが渦をまく。
零耶が玲御と統軌を見て、彼らは視線だけで互いの考えを読み取った。頷き合い、決意を固める。
その時、ふと零耶は【神穢】の目的はなんだったのだろうと考えた。自分達と【真実】でいっぱいいっぱいだったが、よく考えればイーラ達ー長老も、かもしれないがーは【神穢】とも共謀していたのだ。八咫烏は【神穢】のラスボス、原初として存在していた。なら、【神穢】は味方だ。だが、その目的は一体……?
零耶が考え込んでいたのを見かねてそれを止めるように、3人を暖かい愛情が包み込んだ。
この頃、偶数の日に投稿している。意味は(多分)ない




