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それでも彼らは眠らない。  作者: Riviy
第七章 それでも彼らは眠らない。
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第六十六話 望まれた、涙の再会

「出会えた事さえ、誇り」



静まり返ったその部屋で。響くのは血が滴る音と、【神堕ち】した彼らが肩で息をする音のみだった。そんな時、パチパチと手を叩く音が異様なほど大きく響き渡った。彼らは、玖陽達はまだ生き残りがいたのかと、驚きながらその方向を振り返る。


「なっ、姉上…」


驚く左京の声が響く。扉の方向、開け放たれた扉から入って来たのは左京の姉で「あった」スパイ、桔梗であった。桔梗は左京の問いに「違います」と鈴と響く声で返す。それに、理解はしていたにも関わらず、左京の顔がグニャリと歪んだ。歪んだ顔は、寂しげだった。だがそれでも納得していた。そんな元弟の表情から目をそらすように桔梗はこの場にいた、既に事切れている幹部達に軽蔑の眼差しを送った。そして、彼らに向き直る。


「……君は、本当は「今、お答え致します、玖陽様」…さ、ま?」


玖陽の問いを遮って桔梗が軽く頭を下げながら言う。スパイである桔梗が何故、「様」呼びなのか、何故、慈悲深げな笑みではなく、能面のような表情なのか。落ち着いた事で彼らの目の前で『侵入者スパイ』の正体の疑問が浮かぶ。


「その前に、和泉いずみ様、そろそろ出て来てもよろしいのでは?」


和泉?全員が首を傾げた。桔梗が視線を向ける先、彼女の隣に突然、一人の青年が現れた。何処から現れたのか、その青年は遊姫を一瞬、見て安心したように微笑んだ。その姿に玖陽達と一緒に来ていた三番目と四番目が安心と驚きの声を漏らす。


泉空いずみそら!無事だったか!」

「よかったぁ…」

「え、じゃあ…あの人が…」


2人の言葉に彼らの後輩達は面食らった。じゃあ、この青年が【AVANOLSアヴァノリス】の一番目にして、両親から送り込まれた行方不明の『侵入者スパイ』。

青年は友人に軽く手を振った。彼自身も安心した表情だった。だが、次の瞬間にはその表情は神格化りょうしんたちの方にいたことを表す、真剣な表情になった。青年と桔梗の気配は、神々しくも禍々しい。その気配に彼らは畏れをなしそうになった、以前の自分達ならば。今は感じない。それよりも、懐かしく感じる。それは、本来の姿に戻った事を決定的に意味しているようにも思えた。


「さて」と前置きをして、桔梗が再び軽く頭を下げながら、疑問に答えていく。


「長老様と後ろにいらっしゃいます八咫烏様より、お話はお聞きになっている事と存じます。私は上様…【武蔵坊弁慶】様の最期の一振り、桔梗と申します。以後、お見知り置きを」

「武蔵坊……弁慶!?」

「最期の一振りって…千本の刀…刀狩りの事か?」


左京と右京が驚愕しながら声をあげる。他の仲間達も【武蔵坊弁慶】の刀であった事に驚いているが、一番驚いているのは『弁慶』の異名を持った右京とそんな元姉を持っていた左京だった。桔梗は2人の疑問に小さく首を横に振った。


「違います。上様は部下となられた際、刀狩りをお止めになられました。私は、譲り受けた脇差です」


なるほど。神格化されていない脇差であった『桔梗』にスパイとしての能力を与えたわけか。そうなると、彼女は神格化していないのに擬人化はできると云う摩訶不思議な脇差となる。イーラから詳しく聞いたわけではなかったので、ストン、と納得がいった。

頭が、【真実】を吸収して混乱してきそうだ。だが、もう此処まで「可笑しい」のだから、全て受け入れよう。


「ん?待てや。左京、お前、"桜花姫おうぎ"と一緒に持ってんのは薙刀か?」

「そういう右京も、"黒鴉おおたち"と一緒に持っているのは刀剣類ですよね?」


右京と右京が顔を見合せ、相棒の姿を見やる。先程の桔梗の話と【真実】を組み合わせれば、答えは容易だった。2人の顔が驚愕に歪み、理解した周りも驚愕に歪んでいく。ただ一人、わかっていた玖陽は悠然と桔梗と青年を見ていた。だが、驚愕していた左京と右京の顔は次第に愉快そうに、嬉しそうに、楽しそうに笑みを作っていった。まさかの偶然か、それともただの因果か。


「なるほど。オレが【源義経】、左京が【武蔵坊弁慶】って訳か。ははっ、異名逆だっての。なぁ、左京」

「ふふふ、そうですね右京。これからもよろしく」

「……順応性早くない?」


笑う左京に右京が「またか」と言って2人がハイタッチをかわす横で呆れたように遊姫が言う。そう、右京の親は【源義経】、左京の親が【武蔵坊弁慶】だ。妙に納得がいった2人。周りもまさかだったらしく、驚きで顎が外れかかっている者もいる。すると、パチンと青年が指を鳴らしてそれを静めた。


「驚くのもいいが、こっちの話も聞け。俺は【和泉守兼定いずみのかみかねさだ】。関兼定の初代で通称、【親兼定】。だいたいは見分けつくようにこっちで呼ばれてる……さて、愛し子。感動の再会と行こうじゃねぇか」


青年、和泉ー桔梗がそう呼んでいたのでそうするーが言う。彼の言葉に驚くが彼はそれすらも与えず、愉快そうに笑った。途端、神々しくも禍々しい気配が玖陽達を襲った。バッと振り返るとそこにいたのは見知らぬながらも、体中の細胞と云う細胞が逆流するほどの熱、いや懐かしさを感じる者達だった。此処にいる全員ー制御室、研究室含めーに一人一人対面していた。だが、遊姫の後ろには誰もおらず、何故かゆっくりとした歩みで和泉が近寄って行った。


…*…


第一研究室。背後に立っていた男性に清守は驚いたようであった。が細胞と云う細胞が叫んでいるのを感じ、まさかと思う。


「わが、い、と、し、ご」


男性はそう言って笑顔を清守に向けた。その優しい笑みに引き寄せられるように清守は一歩、また一歩と彼に近づいて行った。清守は彼に向かって手を伸ばした。彼はその手を優しく包み込んだ。その暖かさが、嘘ではない事を物語っていた。


「ぼ、く、は、【経津主命ふつぬしのみこと】。あ、な、た、の」

「うん、気配で分かる…ありがと、父さん、来てくれて…」


泣きながら清守が言うと【経津主命】はニッコリと笑い、清守を抱き締めた。その暖かさが、愛情が心地よく、清守は腕の中で涙を拭く。それを彼が清守を愛おしげに思い、その頭を撫でた。その愛情に清守は恥ずかしそうにうずくまった。


翠鶴と珀蝶は背後にいた少女に何も言わずに抱きついた。少女は驚きながらも双子を受け止めた。


「ふふふ、久しぶりね愛しい我が子達」

「お主が、俺達の、親?」

「本当の、本当よね?」

「ええ、そうだよ。【蝶丸】って言うんだ……美しい我が子達、会えて嬉しいよ。救えなかったあの子達の分も…」


ギュウと双子を抱き締める彼女。双子の背に回っている腕は愛情に溢れていた。双子の頭を優しく撫で、自らの肩に顔を埋めさせる。驚く双子に彼女は優しい声色で、愛情を籠めて言う。


「悲しい時は泣きなさい。嬉しい時も、泣きたい時は泣けばいいのよ」

「「っ……居てくれてありがと、お母様」」


そう言って、涙目になりながら、双子は片割れと片手を繋ぎながら、彼女の優しい抱きに、愛情に身を委ねた。


獅雨は真っ赤に染まった"白"と共にその優しく、慈悲深げな笑みを浮かべる男性を振り返った。その男性を見た途端、"白"が彼に駆けて行った。"白"は男性に撫でられて、獅雨にされた時のように嬉しそうに顔を綻ばせる。それに獅雨はまさかと思う。男性が獅雨にこっちへおいで、と手招きする。獅雨が慎重に彼に近づくと彼はギュッと抱き締めた。突然のことに獅雨は驚いたようであったが、抱き締められたことで伝わってきた愛情と暖かさにうるうるとしてくる。


「君が……僕の……?」

「うん、そうだよ愛し子。僕は【白虎】。君の、細胞のもとになった者だよ……会えて良かった…」


優しく、抱き締めてくる彼に獅雨は嬉しくなって、涙を溢す。ズルズルと、座り込む獅雨を支えるように彼も一緒に座り込む。そんな2人を"白"も嬉しそうに、赤く染まった巨体で抱き締めた。


「僕も、会えて…良かった…ただいま、お父さん…」


2つの愛情に包まれながら、獅雨は嬉し泣きをしていた。それを彼と"白"が拭い、2人と1匹は笑い合った。


絡繰はこちらに近づいて来た男性に、意味を察した。そして、腰に帯刀された刀剣類を見やり、彼の正体に気づいた。近づいて来た男性がなにか言う前に絡繰は仕掛けた。


「【織田信長】か?」

「!なんだ、気づいたのか愛し子よ。さすが、我が子だ」


そう彼は嬉しそうに笑って豪快に絡繰の頭を撫でた。豪快さはあるものの、その手には優しさと愛情が溢れていた。


「誇らしいぞ、我が子よ。会えなくなってしまった我が子の分も、兄弟の分も、愛情を注ごう」

「……嗚呼、そうだな、親父」


彼の言葉に絡繰は恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めた。それを彼は愛おしげに見つめ、頭を撫で続け、最後には抱き締めた。兄弟と抱き締め合うのとはまた違う、安心感と慣れない愛情に絡繰は恥ずかしそうにしながらも、その身を預けた。


…*…


ー再び、会議室ー

玖陽は背後に立つ美しい女性を振り返りながら、もしやと思い、声を発する。この感情は、細胞と云う細胞が叫んでいる、この答えはーーーー


「もしかして、僕の、」

「はい、私は【天照大御神】。貴方の細胞のもととなった者ですよ……愛しい我が子……!」


そう言って天照大御神は血塗れの玖陽を躊躇なく抱き締めた。与えられなかった愛情に包まれ、驚く玖陽。だが、彼はその愛情を愛おしく思った。心の中で溜めに溜めていた感情が溢れ出し、彼女の背に腕を回して抱きついた。そして、与えられなかった愛情に埋もれるように、涙を流しながらその愛情に甘えた。


「……母さん…っ!」

「玖陽、私の愛しい我が子。今は亡き、同じ細胞をわかつ兄弟の分も一緒に……」


そう言って彼女は玖陽の頭を優しく撫でた。その表情は慈悲深げで、愛しさに溢れていた。仲間の頭を撫でた時とは違う、安心感と優しさが玖陽を包んだ。彼の空洞になった瞳からも、美しいほどの涙が溢れた。


遊姫はこちらにやってくる和泉を見て、その意味に気づいたのか、戸惑ったように後退った。


「え、だって、特殊だけど一番目で……あれ?」

「っはは、教えてやるから落ち着け」


ポンポン、と優しく頭を叩く和泉。その暖かさが手のひらから伝わってきて、遊姫の涙腺が緩む。それを知りながら、彼は遊姫の疑問に答える。


「俺は初代だっつったろ?俺は他とは違って神格化も擬人化もされていない中途半端なんだよ。初代なせいかわかんねぇがな」

「最初から、この姿?」

「嗚呼、目が覚めた時からな。他の奴らは神格化と擬人化だが……理由はなんとなく分かってんだけども…まぁそれはいい」


ずっと注がれていなかった愛情を遊姫に注ぐように彼は頭を撫でる。


「俺は政府こっちに侵入するために他の神格化してた奴らと俺の細胞を少量犠牲にして、神格化した状態のまま生まれた。政府には上手く誤魔化した…神格化した方に入ったから、俺が姿を消したと同時にお前は造られた……会いたかった…」


そう言って、和泉は遊姫を抱き締めた。和泉の方が背が高いので遊姫が包まれる感じだ。遊姫は驚きながらも、和泉から聞いた事を整理する。

他の神格化していた奴らと云うのは彼の次の二代目や三代目の事だろう。そして、武器を錬金する過程で武器の性質ー場合によっては歴史もーを調べている遊姫には、親である和泉が中途半端である理由が分かっていた。それでも、


「オレも、会いたかった…父さん…」


両親に会えたのだから、関係ない。遊姫の涙腺が崩壊し、涙が流れる。そんな彼に、愛し子に和泉は愛おしく思い、頭を優しく撫でながら胸を貸した。遊姫は欲しかった愛情に身を委ねた。


左京と右京の背後に立っていたのは2人の予想通り、少年と男性だった。心臓が大きく一回、脈打った。少年が「ふふっ」と笑って自分よりも背の高い右京の頬に手を当てた。その手が慈悲深げで、暖かくて、右京は驚いたように目を見開いた。そんな彼の隣では男性が左京の頭を、大きな暖かい手で撫でた。右京と同じく、予想していたにも関わらず驚く左京。


「おやおや……そんなに驚かなくてもよろしいのではありませぬか?ねぇ、弁慶」

「主の云う通りだが、それでも先程まで異名を逆に持っていた愛し子らだ。驚いて当然ではないか?」

「ん…そういうものでしょうかね。どうです?我が子」


そう言って少年は右京の両頬を両手で包み込みながらニッコリと笑う。愛しげに、右京に向けて笑うのだ。それに右京の、眼帯をしていた片目から涙が溢れ落ちた。それを少年【源義経】ー幼い姿だから【牛若丸】かーは、涙を拭ってやると、体の成長を早め、【源義経】となる。突然、青年に成長した彼を見て、右京は驚きつつも、心の底から嬉しそうに笑った。


「遅いんだよ……父さん」

「おやおや、我が子は泣き虫ですなぁ」


そう言って泣きながら笑う右京を彼は涙を拭いながら抱き締める。右京の方が少し身長が高いので、右京は彼の肩に顔を埋め、彼はその頭を優しく撫でた。

男性、【武蔵坊弁慶】は左京の頭をくしゃりと撫で回した。左京は驚いたようであったが、その愛情が詰まった動作に動きを止めた。止めた途端に、瞳から涙が溢れそうになる。それを無理矢理、手の甲で拭うと彼はそれを手首を掴んでやめさせる。左京は、キョトンとした後、自分を愛おしそうに見る彼に抱きついた。彼は驚きながらもそれを受け止めてくれ、頭を撫でてくれた。


「お会いできて光栄です…父上…」

「嗚呼、俺も光栄だ、我が子」


涙を流し出す左京の頭を優しく撫でながら、胸を貸す。左京と右京は2人の愛情に身を預けた。



本当の両親と再会に、死屍累々の中、彼らは嬉しさと愛情を噛みしめる。兄弟であった彼らと兄弟ではないことも実感してしまった。けれど、繋がりがある。兄弟でなくても繋がりがある限り、兄弟であることには変わりはない。きちんと、後で聞こうと思った。

そして、愛情それを奪った人間達が許せなかった。彼らは自らの両親と再会を喜びあった後、待ち合わせ場所に向かった。


両親と子供についての裏話、行きます!


経津主命ふつぬしのみこと】と清守→「守光と兄妹だから兄弟の神様がいいなー」で探していたら、いました。調べていたら【経津主命ふつぬしのみこと】は【布都御魂】の神格化って云うのもあったんで「だったら二重人格にしようぜ!」で一発OK。


【蝶丸】と翠鶴&珀蝶→【蝶丸】を調べていたら別の名前で鶴丸ってあったんですよね。気になったら調べてみてください!自信がなくなってきた…んで、「だったら鶴と蝶で双子作ろうぜ!」です。ある意味、親である【蝶丸】がいなかったらこの双子は本当にいない。やばい


【白虎】と獅雨→"白"がいる時点で虎関連だなと。兄である鳴海もいますし、同じ系統(?)で行きました。意外と初期に親が決定した子でもあります。


【織田信長】と絡繰→本当は絡繰の親は違いました。が、彼の設定上、誰もいない(笑)「誰かおらんか…織田さんがいたぁああ!」ですよ。きっと気が合う、なら親子!


【天照大御神】と玖陽→決定事項。【天照大御神】を出すって決めた際に子供は玖陽しかいないと思ったんですよ。うん


【和泉守兼定】関兼定・初代・親兼定と遊姫→元は遊姫のお兄さん設定でしたが、「兄弟多い!却下!」。んで、「和泉使いたい!神様いませんかー?!……Oh…」和泉で出てきたのは武器でした(棒)だったら、初代で行こうじゃないか!読み方調べたんですけど違う方出て来て書けませんでした。すいません。ちなみに遊姫の親は最初、刀鍛冶さんにしようと思ってましたが断念しました。


【源義経】と右京→異名逆だっての(笑)まぁ初期から親が決まっていました。笛吹く時点で「逆やん(笑)」でしたからね作者が。ちなみに右京は親である【源義経】の幼少期、【牛若丸】の方も強く受け継いでいるので嗚呼なりました。


【武蔵坊弁慶】と左京→異名ぎゃ(以下略)こちらも初期から決まっていました。扇ですけどね武器。「何処が【武蔵坊弁慶】じゃ(笑)」でしたからね作者が。本当なら武器は薙刀とか持たせた方が良かったんでしょうけど、左京の容姿考えたら扇が似合ってました。だから、嗚呼なったとも云う


長いですね…少ししたらまた長いの来ますからねぇえ…覚悟しててください?(笑ってない笑み)


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