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それでも彼らは眠らない。  作者: Riviy
第七章 それでも彼らは眠らない。
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第六十五話 消えた光、生まれた闇

*一瞬、読む人にはホラーに感じるかもしれません。微ホラー?(作者は分かりませんでしたすいません)残酷表現、一応、注意*


「消えたきぼう、生まれたかんじょう





突然、ボスの甲高い笑い声が途切れた。シーン、とした異様な静寂が此処にいる全員を、いや、これを見ていたであろう全員をも包み込む。


「ひっ」


ボスの近くに座っていた幹部の一人が悲鳴を漏らす。彼の視線の先にいたのは、紅い血を噴き出す物体。いや、正確に言えば、頭と胴体がおさらばしたボス。ボスの頭は、白い目をこちらに向けながら壁にめり込んでいる。その白い目の先には、美しいほどの怒りと憎しみのオーラを漂わせる玖陽がいる。右京と左京が顔を見合せると、頷いた。玖陽は俯いていた顔をあげた。


「!!!」


誰かが息を飲む音が、大きく響いた。顔をあげた玖陽の片目は空洞になっていた。残った片目は異様なほどに白銀色に美しく輝いている。そして、太刀と同化し始めている玖陽の右腕。玖陽の背後にうっすらと浮かび上がる金色の、太陽にも似た輪。玖陽は、クイッと顎を引き、怒りと憎しみが籠った瞳を持って、言い放つ。


「ふざけるな………ふざけるなっっっ!!!命を弄んで、まだ足りないの?!僕たちの、両親を、兄弟を、家族を、仲間をっ!!返せっっっ!!」


それは、【AVANOLSアヴァノリス】全員の言葉だった。その言葉が引き金となり、玖陽以外のー画面越しに見ている【AVANOLSアヴァノリス】も含めー【AVANOLSアヴァノリス】達の様子が変貌する。ある者は瞳が空洞になり、ある者は武器と融合し。ある者は、自身の親であろう一部を身に纏い。政府は、ボスがいなくなり、混乱している中で、彼らの変貌を目の当たりにし、動きを止めるしかなかった。資料にあった、【神堕ち】…本気を出し、本来の姿を取り戻した度合いとして政府は使用していた。が、目の前で起きているのは闇堕ちであって違うもの。【神の細胞】を埋め込んだ【神の子供】の闇堕ち、【神堕ち】である。


「そうだよなぁ…オレ達が退屈しのぎの遊具だ?っざけんなよ!?オレ達だって生きてんだ!それになぁ、細胞を埋め込んだからって、殺し合いをさせていいわけねぇだろ!生きてんだからな。洗脳した?はっ。わりぃが、そんなん、今解けたわ」

「右京の云う通りです。ボクたちのもととなった両親を侮辱しないでいただけます?全ての人間と結託し、神の【天罰】を見過ごした。今更ですよ、懺悔は。気づくのが、遅すぎた」

「遊具だの遊びだの、馬鹿も休み休み言え!!オレらの努力全てを無駄にし、命を無駄にし、弄んだアンタらに許しを乞う義理も理由もねぇんだよ!!2人の云う通り、後悔も懺悔も、遅いっ!」


怒りと憎しみを宿し、右京と左京、遊姫が胸の内を叫ぶ。叫んでいくと共に3人の容姿が変わっていく。左京の片目が空洞になり、その背後には千はありそうなほど多くの刀が浮かび、彼の手には扇と共に大きな一振りの薙刀が握られていた。右京は眼帯を剥ぎ取り、その片目に手を当てた。濁っていた片目がもう片方の目と同じ色に染まっていく。視界が晴れた右京の片目。眼帯をしていなかった方の目が空洞になり、かぶっていた軍帽が天女の羽衣のようなものに変わり、彼の体を包む。そして、大太刀に寄り添うように2振りの武器が浮かんだ。遊姫の片目が空洞になり、その両腕付近には美しい水を伴った数振りの刀剣類が彼を守るように浮かんだ。

3人も、本来の姿となり、【神堕ち】したのだ。その姿は恐ろしくも美しい。本来の姿、それは両親から受け継いだ姿。そして、【神堕ち】。何度も云うが闇堕ちであって【神堕ち】である。


「ああ……」

「だ、だから言ったんじゃ…やめようって…」

「はははっ!どうだった我らの武勇伝は?!」


目の前で、骸ができたのと【闇堕ち】が起こったせいか目の前の幹部達は十人十色の反応をようやっと見せ始めた。吹っ切れる者、混乱する者、そして、懺悔する者。だがどれもが、「遅すぎた」。

【神堕ち】したほとんどの【AVANOLSかみのこども】。普通の姿、本来の姿に戻った【AVANOLSアヴァノリス】を探す方が難しい状態だった。

一人の幹部が、恐怖に怯えた表情を伴いながらへっぴり腰でゆっくりとこちらの状況を伺いながら逃げるタイミングをはかっていた。この状況で逃げようと思うのは当たり前だが、それを実行に移すのはあまりにも不可能だった。玖陽の"異常"がその幹部を横目に捉えた。会議室にいる幹部全員の動きが、玖陽には手に取るように分かった。それに玖陽は、口角をあげた。その時だった。逃げようとしていた幹部がナイフ片手に近くの扉目掛けて走り出した。その扉は非常階段なのか、壁と同化するような色合いであった。


「ひ、ひあああああああああ!!」


甲高い、悲鳴が会議室に一瞬響いた。そう、「一瞬」だ。一瞬のすぐ後に響いたのは、グチャ、だがびちゃっ、だがそんな不気味な水音だった。その音がした方向に「あった」のは壁に広がった血と脳漿。そして脳天に刺さった、粒子となって消え始めている刀。その下には動きを止めた体がダラン、と壁に寄りかかっていた。それは、二人目の骸であった。


「おやおや……ボクの武器達が殺ってしまいましたねぇ…」


妖艶に、扇で口元を隠しながら左京が悪びれる様子もなく言う。クスクスと遊姫も一緒に笑い、彼らは妖艶な笑みで顔を見合わせた。まるで、悪戯の成功を喜ぶ幼い子供のように。それに隣に立つ右京が、彼に向かって片手を差し出す。そこに左京は片手でパチン、と叩いた。乾いた、それでいて力強い音が響き渡り、鼓膜を震わす。


「さすが相棒さきょう。もうその力に慣れたのか?」

「いいえ、相棒うきょう。まだですよ」


ニィと2人が嗤った。その空洞になった片目に互いの瞳の色ー右京は若緑色、左京は紫紺色ーに染まり、鋭い光を放った。オッドアイになった2人を見て、玖陽は2人のりょうしんである者が理解出来た。"異常"の瞳で研究室の方を、余裕綽々と云った感じで覗いてみる。まぁ、玖陽にとって、この千里眼ちからを使っている間が長くても実際は数秒しか経っていないのだから、良いのだ。


「(………美しい、と言ったら怒るかな)」


研究室は既に血の海と化していた。血と脳漿が舞う中、同胞達が、【神堕ち】した同胞達が美しくも儚げに、慕っていた科学者達を切り刻んでいた。逃げ惑う科学者達とそれを嬉々として追う同胞達。憎しみを、怒りを、【天罰】を、さらけ出していた。

翠鶴と珀蝶の和風美人双子は腕と同化した武器と双子の周りをまたたく美しい黒蝶の群れを引き連れ。獅雨は白かったが今は紅く染まった"白"の背に乗って、普通ならば操る事もないであろう身の丈を越える大太刀2振りを軽々と操り。絡繰は得意の"殺絲"を片手で操りながら、もう片方の手で脇差と、いつに間にか帯刀していた数振りの刀剣類を自在に操り。清守は大振りの刀と元々持っていた刀、2振りを悠々と操り。そして、彼らの片目は、空洞だった。自分も片目が空洞になっているにはいるが、完全に空洞ではなさそうであった。見えるのだ、ちゃんと。それに、左京と右京のように相棒同士であれば、空洞化した片目は片割れの色に染まる。実際に、相棒と云うわけではないが、二重人格である清守の瞳は金と茜色である。しかも、片目は金が内側、茜色が外側、もう片方はその逆になっているのだ。なんともややこしいが、それが、決意した姿なのだろう。

そう、一瞬で彼らの状況を把握すると玖陽はこちらに戻ってくる。静まり返った空間にポタ…ポタ…と云う血が滴る音のみが響く。


動いたのは、痺れを切らしたのは誰であったか。幹部達全員が我先にと逃げ出し始めた。阿鼻叫喚である。そんな幹部達を【神堕ち】した【神の子供】が逃すはずもなく。

全ての場所で、悲鳴と血が舞い踊る。


「僕と"白"が…喰い千切ってあげる…」

「「美しきこの武器にひれ伏しなさい」」

「お望み通り、死の舞踊にいざなってやろう」

「さっさと死んでくれないかなぁアンタら全員!」

「朽ちて逝け」

「さあ、黒い鴉の贄となれ」

「さあ、"桜花姫"と共に舞い踊りましょう?」

「ねぇ、死に伏せ」


儀式と云う名の、発明品と云う名の「神格化」で神達りょうしんを騙した怒りと憎しみ。多くの兄弟、仲間、家族を洗脳し、殺し合いをさせた怒りと憎しみ。神達りょうしんの【天罰】を無視し、自分よがりな理想郷を作り出そうとした怒りと憎しみ。そして、自分達を騙し、利用し、虐げてきた怒りと憎しみ。その全てが、限界を越え、政府に襲いかかった。


会議室と制御室、多くに分かれた研究室で死屍累々となった空間。血と骸が散乱する中、そこに堂々と君臨する【神の子供】達。それは、それはそれは美しくも残酷な光景であった。


そろそろ裏話書けると思います!

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