第六十一話 反旗を翻したその結果
「反旗を翻して、見つめる」
「どうしたの?」
イーラが問うと声を発した人物、玖陽はゆっくりと立ち上がった。
「それ、僕たちだけで行かせて」
「……どうしてかしら?私達じゃ、不満?」
イーラが不満げに問うと、玖陽は「違う」と首を振った。イーラが続けて、と促すと玖陽は同胞、仲間達を見回した。彼らは彼に頷き返す。そこに玖陽は、全員の意図を告げる覚悟を決め、口を開いた。
「そうじゃない。でも、僕たちはきちんとこの目で確かめたいんだ。自分達の目で。だから、僕たちだけで行かせて」
「………保証は」
イーラが両腕を組みながら、言う。すると八咫烏が、イーラの服の裾を引っ張った。彼女が「なに?」と八咫烏を見上げる。八咫烏は口をパクパクと動かし、何かを言う。鳴海で慣れていた【AVANOLS】らは八咫烏が何を言っているのか理解出来た。イーラはそれに気付きながらも、玖陽の方へ視線を向ける。
「いいわ。八咫烏も許可したし、いいことにしましょう。ただし、何か合ったら呼びなさい。私達は他の同胞達と一緒に向かうわ。長老殿」
イーラは傍らの長老に声をかける。長老は優しい笑みを向けながら首を傾げる。
「愛し子達の行動計画、聞いてちょうだい。私は妹達と同胞達に知らせて来るわ」
「ま、待って!この人は?」
統軌が問う。「この人」とは八咫烏の事だと聞かなくてもわかった。イーラは小さく笑い、その問いに答えた。
「彼は、貴方達と行くわ。彼には、この計画を見届ける義務がある。嗚呼、それと、私達は貴方達に僅かながら力を送って来た。今も昔も。反旗を翻す今、その力、解放なさい」
バサッとコウモリの羽を広げ、イーラは高い天井目掛けて飛んだ。天井にぶつかる間際、彼女を黒い霧が包み込み、そして…霧が晴れた時、彼女はおらず、逆に羽を羽ばたかせる音が反響していた。零耶は小さく、拳を握り締めた。此処が、新たな【真実】の一歩だと。そして驚いた。彼らの、自分達への想いに。
玖陽が立ち上がり、真剣な表情で彼らを振り返った。残った長老と八咫烏に一瞥くれると残りの"五天王"も立ち上がる。零耶は柄にもなく、ワクワクしていた。それは玲御や統軌も同じようで、なんだが嬉しかった。さあ、もう一度、作戦会議を始めよう。
「さっき、彼女が言った説明をそのままに僕たちは行こうと思う。反対意見は?」
玖陽が腹から声を張り上げて訊くと反対者はいなかった。それを見て玖陽は頷く。そして、自分の"異常"を触る。【真実】によって分かった"異常"が先程、出て行ったイーラの行方を追う。本来の姿に戻りつつあり、そして、イーラが言っていたように両親達は自分達に僅かながら力を送った。それは、受け取る事が出来なかった愛情であった。その力を、"異常"を持った玖陽は、リーダーである玖陽は瞬時に使う。既に何人かは使い方を知っているようだ。力を使い始めている玖陽の横で鈴音丸が代わりに進める。
「博物館の方には先程までいた零耶、玲御、統軌を向かわせたい。良いか?」
鈴音丸が3人に言う。博物館に先程までいた3人を送るのは合理的だ。道案内的な事も出来、なにより才蔵とプライドと会っているのでサポートにも向いている。3人は了承の意を示す。
「鈴音丸の兄貴」
「?なんだ零耶」
「"五天王"は誰かしら来るんだろ?」
零耶がそう訊くと、"五天王"はクスリと笑った。愚問、だったようだ。零耶が肩を竦める。
「俺と夏が行こう。3人は俺等のサポートを頼む。異論は?」
「なーしっ!」
「統軌と同じように云う事になるとは思わなかったけど…ないよ、鈴!」
「はー?僕と同じって何?」
「そのまんまの意味~そんなこともわかんないの~?」
「ん、だと?!」
賛同した言葉が同じで統軌と律夏が喧嘩腰で睨み合う。なんでこんな時に…そう思いながらも零耶は殺伐とした空気が少しでも緩和された事が嬉しかった。
「はいはい、やめなって、のッ!」
「やめんか」
「「イッタァア!?」」
零耶と鈴音丸の手が同時に2人に当たり、当の本人達は痛そうに頭を押さえる。少し和んだ空気の中、鈴音丸は続ける。零耶の隣では統軌が膨れっ面で、玲御と左京、右京が笑いを堪えていた。
「他に博物館の方に立候補する者は?」
「あの、守光を行かせてもいいかい?」
「お兄ちゃん?」
そう言って発言したのは清守だった。その隣では妹の守光が心配そうに兄を見上げている。鈴音丸が守光に大丈夫かと視線を向けると彼女は力強く頷きながら、兄である清守の手を握った。
「私は政府の方に行く」
「分かった」
清守は心配そうな守光を安心させるように手を握り返した。鈴音丸が他には、と視線を巡らすと何人かが立候補した。
零耶達のー解体されていないとしたらーパーティーでは零耶、玲御、統軌が博物館。右京と左京が政府に行くこととなった。また、守光、鳴海、神楽、そして鈴音丸と律夏も博物館。清守、獅雨、絡繰、遊姫、翠鶴、珀蝶が政府となった。もちろん、玖陽も政府だ。行くメンバーが決まったところで玖陽が力を使うのを止め、同胞達を振り返った。
「どうだったの?」
珀蝶が訊くと玖陽は"異常"である瞳を触りながら、結果を伝えた。
「イーラ、だっけ。彼女が全員に伝えた。それと政府と博物館、覗いてみたけど行くなら今日だよ。警備が手薄。それに今夜は、月が輝いて光代わりになる」
玖陽が妖艶に笑うと周りがざわめいた。玖陽の力に、本来の姿に戻りつつある彼に全員が驚いていた。八咫烏は長老の隣でクスリと笑った。
「えぇっと、千里眼だっけ、それ?その力…"異常"」
「うん、そうみたい。鈴音丸、鳴海、もしなにか視えたなら、それぞれの判断で動いて」
「承知した」
「………(こくり)」
翠鶴の問いに答えながら玖陽は鈴音丸と鳴海に指示を出す。その後、鈴音丸から行くメンバーが決定したことを聞くと、満足そうに頷いた。零耶の腰にある"小鶴"が自分の感情を感じ取ったのか揺れた。玖陽が何か言おうとその美しい瞳を開けた。全員が静まり返り、呼吸をする音だけが響いている。
「これから、乗り込むけれど、【真実】はこれだよ……みんな、覚悟はいい?」
玖陽から神々しいほどの殺気が放たれる。その問いに答えるように彼らも殺気を放ち、ゆっくりと立ち上がる。
「さあ、開始だ」
会議ホールに割れんばかりの雄叫びが響き渡った。
すいません、遅くなりました!




