表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それでも彼らは眠らない。  作者: Riviy
第七章 それでも彼らは眠らない。
60/76

第六十話 反旗・反響・反発・反乱

「先に募らせたのは、疑心暗鬼」


零耶、玲御、統軌が会議ホールに戻るとその空間は異様なほどに「静か」だった。まるで、あの時の"小鶴"や"燭"、"二葉月"のようだった。だが、似ているだけで実際は違った。「静か」ではあるが、その中に凄まじいほどの怒りと憎しみが漂っていたのだ。触れればたちまち、切れてしまいそうな糸がそこら中に張り巡らされている、そんな感じでもあった。

3人は静かに席に戻る。誰もが彼らを信頼し、疑うことすらしなかった事に零耶はほっと胸を撫で下ろした。全員が揃ったのを確認して長老が凛と響く声で話す。


「今現在、神格化された者達の大半はビーカーに閉じ込められていますわ。残りの大半はわたくしが用意した場所にて隠れております。貴方方が翻すと決めた瞬間、あちらに連絡を送りました……無事で嬉しいと、声があがっていました」


両親しんかくかされたものが無事と云うことに一瞬、空気が和らいだ。けれど、捕らえられている者がいることには変わりはない。和らいだものの、それは一瞬。すぐに静かな怒りと憎しみが会議ホールを支配する。それを肌で感じ、イラヴィは嬉しそうに、頬を染めた。


「わたくしは、貴方方のために全てを裏切る覚悟で望みました。貴方方を騙すような事になってしまい、申し訳ありません。けれど、愛しい貴方方のためだったのです。許して貰えるとは思っておりません……ごめんなさい」


長老はそう言って、優雅に頭を下げた。彼女が頭を下げた事に少なからず、動揺が走る。ざわざわとざわめく彼らの心中を代弁し、玖陽が勢いよく立ち上がった。


「頭を上げてください長老殿!君の理由も、想いも分かりました……裏切っていなかった…僕たちのためだった、それだけで、十分だから」


スゥ…と玖陽の頬を涙が伝ったように見えた。それを乱暴に拭う玖陽。そう、玖陽の言うように、裏切ったと思った長老が「自分達のために」行動を起こした。その結果が【神穢シンエ】との、いや、神格化された彼らとの共謀だったのだ。愛されなかった自分達を、【AVANOLSアヴァノリス】を愛し、行動してくれただけで彼らには十分だった。それが、全員の意志で想いだった。

玖陽の言葉に同意するように座ったままで鈴音丸が、勢いよく立ち上がって律夏が言う。


「玖陽の言う通りだ。唯一の味方であった貴殿を、俺等が見捨てるとでも?それこそ愚問だ」

「そうです!確かに、共謀してたってのには驚きましたケド。だけど、ボクらのためだったんでしょ?嬉しいです!ね、スズ!」


律夏が鈴音丸に同意を求めると彼は、力強く頷いた。


「共謀が決して、悪とは限らない」

「まして、共謀が善とも限らない」

「「けれど、唯一無二のお主/貴女に想って貰えたことは、一番に考えて行動してくれたことは、嬉しさと喜びの言葉しかない」」


翠鶴と珀蝶が両手を合わせて、長老に向かって笑いかけながら言う。他の者達も同意するように微笑みかける。何も言わなくても通じる。長老の背を黒装束、口元に黒い薄い布をつけた八咫烏やたがらすが撫で、頭をあげるよう促す。長老が涙目で顔をあげるとその拍子に、涙が零れ落ちる。


「ありがとう、愛しい子供達」


ニッコリと、いつもの笑みを浮かべる長老。立ち上がった玖陽や律夏が席に着く。長老はきちんと立つとイラヴィに視線を向けた。イラヴィがニッコリと微笑んだ。敵であったならば、気に触った煩わしい不気味な笑みも、共謀と、反旗を翻した今は、何も感じない。それは、「敵」ではなく「味方」となり、「敵」に向けていた憎悪の対象が変わったからだろうか。それとも、細胞を埋め込まれた子供だからだろうか。問いは尽きないし、疑問は尽きない。零耶は、彼女もまた、神格化された者だろうかと思った。けれど、それを確かめる術はないし、そんな事を訊く場合でも、時間でもない。

イラヴィはスカートの裾を掴んで彼らに向かってお辞儀をする。途端に、優しい雰囲気だったのが一気に元に戻される。


「さて、反旗を翻したからには政府に殴り込みに行くわよ。もちろん、博物館にも行くわ。囚われた同胞を助け出さなくちゃ」


真っ赤な血のような瞳が、妖艶に細められた。反旗を翻し、事実上の共謀となった彼らはイラヴィの説明を聞いた。


侵入者スパイ』は話を聞いた通り計6人+1人。1人は実質のスパイである左京の姉で「あった」桔梗。桔梗が本来は脇差で、姉ではないと云う事に左京は驚いた様子であったが、何か思い当たる節があるらしく、酷く納得した様子だった。桔梗は【AVANOLSアヴァノリス】として造られた後、政府の情報を自らの通達技術を駆使し、同胞達に、イラヴィ達に流していた。人間達が裁きを受けた数日後に、政府が再び造り始めたのを知り、桔梗が教え込まれた技術、改竄で政府に潜り込んだ。そして、【神穢シンエ】が現れるまで、いや、戦わず、愛人となった今でも情報を送った。だが、桔梗は初代ではなく、二番目。もしやと全員が思ったら、一番目も『侵入者スパイ』の一員だったらしく、独自の技術で潜り込みに成功。今は行方不明と云う態勢を使い、どういう事か政府に潜り込んでいると云う。ちなみに、一番目を確実に見たことがある、知っているのは、桔梗を含め三番目と四番目までだと云う。"五天王"も彼らも行方不明と云うことと噂は知っていたが、確実に彼ないし彼女に会った事はない。三番目と四番目は密かに一番目を探していたらしく、灯台もと暗しで政府にいるのではないか、と説明を訊くまで考えていたらしく、無事と云う事に安心した様子であった。もちろん、それは零耶達も、だが。


さて、その潜り込んでいる一番目を抜かして『侵入者スパイ』は以下の通り。ライこと霧隠才蔵、プラーナことプライド=ナーラ。イラヴィことイーラ=ヴィライド、そして黒装束こと八咫烏。

ちなみにイーラは憤怒の悪魔兼女神、プライドは傲慢の悪魔兼女神。姉妹である彼女らも含め、彼らは神格化されていない者に含まれている。だが、一番目は特殊で、報告によると潜り込む際に細胞を少量、犠牲にする必要があったため、神格化された者に含まれる。よって、【神の子供】が一番目と同じ、【AVANOLSアヴァノリス】の可能性が高いそうだ。だが、潜り込んだ『侵入者スパイ』なため、桔梗と同じく、【AVANOLSアヴァノリス】に入らないと云う。それを決めている基準が彼ら流にはあるらしく、『侵入者スパイ』の存在を知らないであろう政府にとっては裏をかかれたようなものなのだろう。簡単に云えば、特殊の一言である。


閑話休題さて


イーラ(以下、本来の姿に戻るとして本名のイーラ呼びとする)によると、八咫烏を筆頭に政府に全員で乗り込むと云う。一番目と桔梗の情報から、乗り込むには本日が一番適しているらしい。博物館は才蔵(以下、同じく本来の姿に戻るとして本名の才蔵呼びとする)とプライド(以下、同じく本来の姿に戻るとして本名のプライド呼びとする)が零耶達を連れて来た後、再び戻ったらしく、2人に一任。政府に乗り込んだところを見計らい、同胞が二手に分かれて政府か博物館に合流し、応援として参戦すると云う。


「此処までで何か質問はあるかしら?愛し子達」


イーラがニッコリと親しみ深い笑みを浮かべて言う。シーン、と静まり返った彼らの様子を見て、イーラは質問がないと踏んだらしい。続きを言うため、八咫烏に視線を向けた。八咫烏はコクリと頷いた。それを見て、イーラは続きを言おうと口を開いた。


「待って」


が、それは一人の声によって遮られた。驚いた様子で長老やイーラ、八咫烏が声を発した人物を見やる。そこで八咫烏は気づいた。【AVANOLSアヴァノリス】達と声を発した人物が同じ瞳と表情をしていることに。つまりそれは、全員が同じ事を考えて……?

その八咫烏の思考はイーラが、声を発した人物に問った事で遮られ、そして、嬉しそうに布で隠れた口角を上げた。



次回作、決まったかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ