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それでも彼らは眠らない。  作者: Riviy
第六章 ソレデモ彼ラハ、堕チタ
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第五十五話 想像曲~戦国と三柱と美しき戦神~

追加キーワード:神、歴史上の人物、史実とは関係ない、フィクション、過去話、擬人化、神格化



烏天狗は木の枝に腰掛けながら、眼下で繰り広げられている戦国武将達の鍛練を見やった。達、と言ってもそこにいるのは信長ともう一人だけ。接戦が繰り広げられるのは見ていて分かるが、烏天狗にはどうしても鍛練をするのか理由が分からなかった。木の枝の上にあぐらをかきながらその鍛練を見守る。今、彼らに元々あった敵対心は存在しない。既に終わった事だと割り切る辺り、武将らしい。

まぁ、記憶が記憶で、場所が場所だ。元々あった歴史など、此処では不完全で不透明なものでしかなくなっている。


と、鍛練が終わったらしい。両者が握手をし、なにやら話ながら烏天狗がいる木の方へとやって来る。


「さすが、槍の使い手だな」

「何を謙遜を。ぬしもだろうが。それに、儂は年をとった。この槍を振り回すのはそろそろ締め時だ」

「次の世代……愛し子達の世代か」

「まぁの」


そう話ながら2人は木の根元に座った。勢いよく座ったので木全体が揺れ、烏天狗は落ちそうになった。知っていながら、勢いよく座った屈強な男共に些か怒りを覚えた烏天狗は煽るように彼らに言った。


「公達。そんなに戦いたいのなら、人間に突撃したらどうだ?」

「はっはっはっ!ほんぬしの友は面白いなぁ織田!」

「やめとけ烏天狗。こいつに嫌みは通じん」


それ早く言って欲しかった。そう心中で毒つきながら烏天狗は降り立つ。すると、先ほど豪快に笑った男性が持っていた槍を烏天狗に突きだした。それに驚く烏天狗に男性がニヒルに笑って言う。


「こいつは既に、神格化され儂の部下となった。此処にあるのは無銘の、手槍を長くしたただの鍛練用の槍のみ。ぬし、これを持ってみよ」

「は、はぁ?」


何言い出すんだこの人。烏天狗がそう思いながら信長を見やると、彼の言うとおりにしてやれ、と目で促された。よくわからないまま、烏天狗はその槍を手に取った。持った者の手にしっくりと馴染む槍。烏天狗が持った事に満足して、男性は軽快に笑った。


「どれ、見事であろう?」

「……あのさ、さっぱりなんだが?」

「分からなくて良い!」

「……本当、貴様はわからん。本多ほんだ 忠勝だただかつ公」


男性、本多ほんだ 忠勝だただかつは烏天狗から槍を受け取り、ただ笑うだけだ。烏天狗にとっては嫌味を言ったつもりだったのだが、彼には分からなかったらしい。烏天狗が信長を振り返ると彼は肩を竦めただけだった。烏天狗は彼に助けを求めたのが間違いだった、と言わんばかりに首を振った。信長と忠勝はそんな烏天狗の横で、昔話と云うか、愛し子の話と云うか、いろんな話に花を咲かせている。

と、その時


「声、うるさい」


そんな文句を叫ぶ声と共に頭から布を被った3人が頭上から降りて来た。降りる際に被っている布が舞い上がり、まるで天女が降り立ったような錯覚に陥る。実際、そこにいた烏天狗も信長も忠勝も錯覚に陥り、一瞬、息をするのも忘れていた。だが、その一瞬も、腰に手を当て、怒ったように叫ぶ一人によって儚く散った。


「声、うるさい。上まで聞こえて来たんだけど」

「そんなに、だったのか?」


烏天狗が忠勝を横目に見ながら言うと、怒った様子の一人、ー顔が見えないが声的にー青年が強く頷いた。


「それはそれは!すまんかったな、坊主!」

「だから、本多、それが……嗚呼、もう良い」


信長が空中を仰いで忠勝に注意することを放棄する。言っても無駄だと分かったようだ。怒っていた青年も彼の連れも分かったらしく、肩を竦めた。


「とりあえず、何してたの?」


話題を変えようと青年が言う。それに信長が使っていた鍛練用の刀を掲げた。それに青年の連れの少女ー体のフォルム的に女だったーが「あー」と小さく唸るように声をあげた。


「あー鍛練、だっけ?それでしょー?本当に飽きないねーアタイは飽きるわ」


ガシガシと布に隠された髪をかきながら、少女があきれたように言う。それに信長は「ごもっとも」と言わんばかりに肩を竦めた。烏天狗は少女に「飽きる」と言われて不満げな忠勝を見て、クスリと笑いながら一度も口を開いていない最後の連れに声をかけた。


「どうした?」

「………いえ、なんでもございません」


よく響くテノールの声がした。烏天狗はその答えに笑いを隠せず、クスクスと笑った。それに信長が苦笑して忠勝と少女を連れて、少し彼らから離れる。青年はどうしたものかと、オロオロしている。烏天狗が笑う意図が掴めない少年は不思議そうに首を傾げながら、彼の顔を覗きこむ。


「烏天狗殿?」

「くくくく……本当、貴様は嘘が下手だな」

「なっ?!」


少年が面食らったかのように烏天狗から距離を取った。意外にもその動きが速かったので「速いな」と青年が小さく感想を垂れた。烏天狗は少年の反応にまた小さく笑いながら、腕組みをして言う。


「はっきり言ったらどうなんだ?自分も鍛練がしたいのだろう?」

「うっ?!」

「ほれ見ろ当たりだ」


自慢げに胸を張る烏天狗の横で青年が少年に「そうなのか?」と問うと少年は、暫くオドオドと落ち着きなくなっていたが、やがて堪忍したのか青年の問いにコクリと頷いた。


「だって…ほら、楽しそうだったから」

「……どこがぁ~?アタイには理解できないよ!」


少年の答えに少し離れたところにいた少女が叫ぶ。そこにはいつに間にか美しくも凛々しい、軍服姿の女性がおり、少女の言葉に苦笑いを溢していた。少女は「あっ」と女性の存在を思い出したらしく、彼女を振り返って慌てたように言い訳を並べた。


「ごめんね神功じんぐうさん!アナタの事じゃなくて!」

「わかってるわよ高御産巣日神たかみむすひのかみちゃん。大丈夫よ」

「……うぅ」


女性にとって嫌な事を言ってしまい、涙目になる少女の頭を優しく撫でる女性。それを見て、少年がムッと顔をしかめる気配を烏天狗は感じた。苛ついているのではなく、嫉妬しているのだ。信長と忠勝が暇になりつつある横で、少年は少女と女性にずんずんと近づくと、少女を女性から引き剥がす。女性はそれを微笑ましそうに笑っているが少女は「なによなによー」と文句を垂れている。烏天狗と青年が顔を見合せ、クスリと笑う。近頃、暗い話題が多かったせいか、なんだかあの2人の光景が微笑ましかった。青年は烏天狗に向かって、小さく肩を竦めると、少年と少女に向かって叫んだ。


高御産巣日神たかみむすひのかみ神産巣日神かみむすひのかみ仲良くしなよ……いや、仲良いか僕ら三柱さんにん

「「それな/ね!天之御中主神あめのみなかぬしのかみ!」」


ハモった、少女、高御産巣日神たかみむすひのかみと少年、神産巣日神かみむすひのかみは顔を見合せて、先ほどの不機嫌が嘘のように笑い合う。目の前の女性、神功皇后じんぐうこうごうが小さく笑った。暇になっていた信長と忠勝も笑う。それを一人、遠目から見ていた烏天狗はこの後の、作戦に思いを馳せて、目を閉じた。


「(もう少しで、貴様等を救える。待っていてくれ)」

「烏天狗」


青年、天之御中主神あめのみなかぬしのかみが烏天狗を呼んだ。全員がなにやら真剣そうな表情で話し込んでいる。内容は聞かずとも理解出来た。烏天狗は、背中の翼を羽ばたかせ、同胞の元へと飛んだ。



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