第五十四話 夜想曲~『侵入者』の宴~
追加キーワード:神、歴史上の人物、史実とは関係ない、フィクション、過去話、擬人化、神格化
友人からベールを貰った人影は、ある場所に辿り着いた。そこは、古びた小屋。人影はその小屋の扉を開け、中に入った。光取りの窓のおかげで家の中は多少明るい。人影はその中に見える、自分以外の4つの人影がいることにホッと胸を撫で下ろした。扉を閉めながら、貰ったベールを光取りの窓の方へと腕を伸ばしながら、近づける。キラキラと、ベールが月光を受けて美しく輝く。
「なぁーに、それ?お守り?」
それを見ていた一つの人影ー声的に女性ーが問う。人影は肯定の意として頷きながら、ベールを懐にしまう。
「ふふ、嬉しそうですね」
別の声ー先程の女性の声と似ているので姉妹だろうーが、微笑ましそうに言うと人影は照れたように、笑った。和んだ空気を、人影はキリッと真剣な表情でしめると、口を動かした。人影達はその意図を読み取る。
「なるほど。信頼関係か。俺にとっては不要……とは、否定できないな」
一人の、くぐもった声が響く。光取りの窓から差し込む月光に、そのくぐもった声の正体が入り込む。そこにいたのは、黒い忍装束を身に纏った忍、才蔵だった。才蔵は自分の隣ー月光に当たらない場所にちょうどいたーにいる女性の肩を抱いて、自らの方に引き寄せる。
「お前達と出会えたのも、信頼関係が引き寄せたようなものだしな」
「あら、才蔵。同感ですわ」
傍らの女性がそう、嬉しそうに言って彼に微笑みかけた。才蔵の見えない口元が笑った。
「あたくし達は、信頼関係を築くのに賛成ですわ。残り数日、愛し子達のために作戦でも練って絆を深めましょう」
「私も、貴方が言うなら文句はないわ。ねぇ、愛しき人♪」
人影の方へもう一人の女性が近づき、腕を絡める。人影はそれを嫌がることもなく、少し照れた表情で自身も絡める。その時、人影の意見を否定する、低くもあり高くもある声が響いた。
「なんで、信頼関係を築く必要があんだ?どうせ、俺らは任務が…子供を助け出したらわかれる関係性だろ?」
その声の主、暗目に慣れた視界に写った青年は不機嫌そうに腕を組んでいた。鋭い瞳が素早く、リア充を満喫している4人を見回す。人影と腕を絡める女性が不機嫌そうにその美しい顔を歪めると、文句を云うために口を開いた。
「なによ?貴方はそれでいいのかもしれないけれど、今は私達、仲間で目的を同じくする同胞なのよ。協力し合わなきゃ」
「協力は賛成だ。だがな、俺は絆だなんてものを築く事はしたくない。絆なんて、脆いだけだろ……」
最後の言葉は小さく、才蔵と彼の隣にいる女性には聞こえなかったようだが、聞こえた人影と女性は悲しそうに表情を歪めた。その言葉の意味を、此処にいる全員が知っていた。青年は、彼は…………
人影はそれでも、と青年にその必要性を語りかける。だが、人影の言葉に青年は耳を貸す事はしない。彼のその傲慢さ、いや、頑なさは彼の良いところであり、彼の悪いところでもある。
人影は、青年を諭す事を諦め、軽く首を振った。
「ま、人それぞれだからしょうがない。だが、此処では関係性を築け」
才蔵が青年の方へ少々、喧嘩腰で言う。青年は、嫌々ながらに頷いた。才蔵の言葉に頷いた彼に満足げな人影の耳に、思いもよらない言葉が舞い込んだ。才蔵がからかうように青年に言った。
「親かn「その名前を呼ぶなっっ!!!」」
それは、青年の通称だった。気配だけでも青年が激怒しているのが分かる。けれど、才蔵は悪びれる様子もなく、軽く肩をすくめただけだった。人影は慌てたように才蔵に「駄目だよ」と念を押すように睨み付けた。それに彼は、愉快そうに笑うだけだ。
「まぁ、作戦でも立てましょうよ。いいでしょ?才蔵、プライド」
人影の隣にいる女性が場をまとめようと才蔵と女性の名を呼ぶ。2人が頷くのを確認して、女性は鋭い姿勢をこちらに向ける青年に確認を取るべく、名前を呼んだ。
「和泉も。いい加減、機嫌直しなさい」
腕組みをしながら、いかにも怒ってます感を露にしていた青年の名前を呼ぶ。青年は、女性にそう言われ、諦めたかのように組んでいた手を軽く挙げた。それに、よしっと満足げに頷く女性を見て人影は、彼女がいてよかったと心の底から思った。女性は人影を振り返り、「どうぞ?」と笑った。そんな彼女に人影は「ありがとう」と言う意味を込めてその頭を優しく撫でた。人影は真剣な面持ちになった仲間達を見て、口を動かす。その口の意味を読み取り、和泉と呼ばれた青年は鼻で得意気に笑った。
「んじゃ、俺の出番だな」
「ぴったりだと思いますわ!」
和泉の言葉に同意するようにプライドと呼ばれた女性が声高に叫んだ。人影も、賛同の意味で頷く。それを見た和泉はクルリと背を向けて、扉へ向かい出した。突然の、予想だにしなかった行動に人影も傍らの女性も、才蔵とプライドも驚き、目を見開いた。
「おい、何する気だ!?」
「そんなに叫ぶなよ、才蔵」
和泉は扉を開け、その傍らの壁に寄りかかりながら、驚く彼らを振り返る。外の月光が中に入ってくる。逆光で見えないはずの彼の表情は、明らかに嗤っているようであった。
「カラスが言ってただろ?『脇差が失敗してもしなくても、保険である精鋭は自分達の行動をする』。んで、『脇差と同じように潜り込みたい』。俺にぴったしだろ」
ニィと口角を上げて嗤う彼は、頼もしくもあり、壊れそうでもあり、儚そうでもあり、恐ろしくもあり、強者のようでもだった。
「神格化も擬人化もされていない、中途半端な俺なら、政府側の隙に脇差と一緒に潜り込む事が出来る。だから、ちょっと俺なりの準備してくる。決行日、また会おうぜ?」
誰かが口を挟む隙も与えずに彼は、深い夜の闇へと飛び出して行った。呆然と立ち尽くす彼らに、風に乗って彼の声が耳に響く。
「逃げんじゃねぇぞ?同胞?」
その台詞に、プハッと誰かが笑った。行ってしまった同胞のために、作戦でも立てようか。
「さあ、作戦会議を始めようか」
以前は聞こえた、少し高くも優しい声がそこにいる全員の耳に響いた、気がした。そして、暗闇で、美しい、宝石のような光が瞬いた。
この頃、キャラクターに軍服を着させてしまう。けれど、絵に書き起こすと同じになってしまう(笑)
次回作、悩んでます…




