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それでも彼らは眠らない。  作者: Riviy
第六章 ソレデモ彼ラハ、堕チタ
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第五十三話 夜想曲~『侵入者』と二人の神様~

追加キーワード:神、歴史上の人物、史実とは関係ない、フィクション、過去話、擬人化、神格化




決行日は決まっていなかったが、佐助達の状況を考えると残り数日で完璧になるらしい。つまり、会議をおこなった日の次の週には決行される。そう思うと、気が気ではなかった。

「はぁ」と声に出さずにため息をつくその人影。その人影がいるのはあの会議が行われた洞窟の入り口だった。侵入者用の罠は、外している。石の壁を背中にぴったりとつけると、冷たさが伝わってくる。それと同時に頬を撫でていく冷たい風。目を閉じ、2つの冷たさを感じながら、決行日後の予定を考える。


「!」


風向きが変わった。目を開け、風向きが変わった原因を視線だけで探す。その原因は、案外近くにあった。


「な、に、を、考え、て、い、た、?」


片言の低い声が人影の頭上からした。頭上を見上げる前に低い声の主が人影の前に降り立った。どうやら、洞窟の上の方にいたらしい。石の壁に背を預けながら、人影は目の前にいる声の主と、もう一人を見やる。月明かりでー今は夜であるー2人の顔がよく見える。人影は口を動かしてその問いに答える。答える、と云っても音は出ず、カスカスと云う息を吸ったり吐いたりする音しか出なかったが。それでも2人には伝わったらしく、声の主が小さく笑った。


「あ、な、たら、し……ゲホゲホッ!」


貴方らしい、と言おうとした途中で体を二つに折り曲げて、苦しそうに咳き込む。人影ももう一人も心配して声の主に駆け寄る。


「大丈夫か?」

「ゲホ、ゲホゲホッ……だい、じょ、ぶ……」


背中を擦りながらもう一人が心配そうに問うと声の主は苦笑しながら、大丈夫だと言う。が、その顔は咳き込んだせいか、苦痛に歪んでいる。人影も心配そうに声の主の顔を除き込む。それに気づいた声の主、男性がにっこりと、人影を安心させるように笑った。その笑みを見て、人影は再び口を動かす。だがやはり、声も、音も、出ない。けれど、もう一人がその意味、言葉を読み取り、背中を擦りながら言う。


「ほら、彼も心配しているよ。無理して笑うのは、お前の悪い癖だ」

「………………は、はは…」


そう指摘され、男性は軽く笑った。背中を擦っていたもう一人ーこちらは男性というよりも青年と云う方がしっくり来るーに礼をしながらゆっくりと立ち上がる。心配そうな顔をいまだにする2人に男性は、今度こそ大丈夫だと笑う。人影が口を動かし、言う。まぁ、無音だが。


「ん?嗚呼。彼は実質、二つ分の魂を融合しているからな。その分、負担が大きい……」

「…だ、いじょ、ぶ。こ、ども、の、た、め、なら、これ、く、ら、い……あ、ん、しん…し、て、?タ…ケ」


にっこりと微笑んで言う男性。青年は外見に合わなそうな笑みを浮かべる彼を見て、小さく笑った。人影も、微笑ましそうに笑った。青年は軽く肩を竦めながら、男性の肩を叩いた。それに男性が、小さく笑う。人影が男性に近づいて口を動かす。


「う、ん…だ、て、タケ、は、ね、あい、か、た…じゃ、なか、た」


空を見つめて考える男性の横から青年が助け船を出し、「相棒?」と言うと男性は「それだ!」と言わんばかりに強く頷いた。人影はその答えににっこりと笑った。青年が「ハハッ」と笑い、人影の頭をポンポンと叩いて言った。


「さすがじゃない。お前も分かっているだろ?オレらだから、さ。なぁ、経津主命ふつぬしのみこと

「あ、あぁ…ず、と、ふた、り、で、一つ」


男性、経津主命ふつぬしのみことは力強く頷いた。その瞳は力強い光をたたえている。彼は先程も言った通り、二つの魂を融合している。その二つの魂は、相棒であり、対の片割れでもある青年、武甕槌命たけみかづちのみことしか正体を知らない。神同士、同胞の間ではもう一つは自分自身、もう一つは布都御魂剣ふつのみたまのつるぎではないかと噂されている。が、真相は定かではない。ともあれ、経津主命は二つの魂を融合しているため、その負担で片言となっている。その原因が奇しくも、人間の神格化である。


人影は、信頼し合う2人の神を見やり、羨ましいと思った。心から信頼し合う関係なんて、今の時代、あまりいない。自分には愛している人、恋人がいるが、心から信頼し合う関係かと問われれば、自信満々に答えられない。自分は信頼している。相手は分からない。けれど、2人は、はっきりと心から信頼し合っているのが見て取れる。人影は、共に行く仲間ともそのような関係を行く前に少しでも築きたいと思い、頭の隅っこにメモした。


「で、お前はいつまで此処で考えているつもりだ?他の奴らと、さっき考えた事でも相談したらどうなんだ?」


顔に出ていたのか、武甕槌命にそう言われて、人影は頷いた。そして、2人に向かって頭を下げた。その動作、一つ一つが美しい。経津主命が突然、思い出したかのように懐から何かを取り出した。それは、黒い布。布とは少し、違う。薄い布でどちらかと云うと短いベールに近かった。それを受け取った人影は、首を傾げながら経津主命を見上げた。


「ぬ、の、だ、けど、お、ま、も、り…たの、んだ、クロ」


「クロ」、彼が呼ぶ人影の愛称。友人からの、頼もしい声援を受け、人影は感極まってその布ーベールと言ってもいいかーを胸に抱き締めた。そして、バッと顔を上げる。2人の神が自分に希望を託している。自分達は保険の保険だ。だが、目的は全て同じで、同胞なのだ。人影は、2人の神に向かって口角を上げて微笑む。その意味を理解し、2人は力強く、頷いた。


「ーーーーーーーー」


そう、人影は言うと、風を起こし、上昇する。そして、夜の闇へと消えた。残された2人は、人影が完全に夜の闇に消えたのを見届け、洞窟へと入って行った。2人が中に入った途端、ピィンと甲高い音がして、侵入者用の罠が張られた。


遅くなりましたー!!理由としてはリアルが忙しかったのと、水曜日に投稿したと思い込んでいました(笑)

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