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それでも彼らは眠らない。  作者: Riviy
第六章 ソレデモ彼ラハ、堕チタ
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第五十二話 夜想曲~影の名を、響かせ、震え~

追加キーワード:神、歴史上の人物、史実とは関係ない、フィクション、過去話、擬人化、神格化




「っつかれたぁー」


ドサッと地面に、大の字になって寝転がる佐助。視界には能力を教え込んでいる者も含めて牛若丸と弁慶、村正がいる。その情けない様子を村正が愉快そうに口元を押さえて見ている。それに気づいた佐助はムッと頬を膨らませた。


「それでは、少し休憩にいたしましょう。弁慶、お茶の用意を願いできますか?」

「嗚呼」


仕方ないね、と言いたげな表情で、楽しそうに笑いながら牛若丸が弁慶と共にお茶を淹れに佐助の視界から消えていく。佐助はその状態で空を見上げた。あの会議から数日。この暗くも美しい夜は変わらずやって来ていた。それを佐助は、不気味だと思う。理由は知らないし、分かりたくもない。


「……教え込むのって、才蔵さいぞうの方が上手い気がするんだけど。ねぇ、ご主人様」


そう言って、佐助が村正の方を見ると笑っていた。いや、目が笑っておらず、佐助にはどういうわけか彼を怒らせてしまった事が容易に分かった。視界の端で技を教え込んでいる者がビクリと体を震わせ、あとずさったのが見えた。


「ご…ご主人様?ボク、怒らせるような事、言った?」

「……いえ?なんでも」

「怒ってんじゃん!なに!?なんなの!?」


佐助が起き上がりながら、そう叫ぶ。それに村正が笑っていない笑みのまま返す。技を教え込んでいる者がピリピリとした2人の、ピンと張りつめた糸のような状況に視線をあっちこっち動かした。その様子からは、早くお茶を取りに行った牛若丸と弁慶が帰って来て欲しいと云う願望が滲み出ていた。


「いっつも、ご主人様はそうだよね。怒ってもボクにはなーんにも言わない。そんなに何が不満なのさ?!」

「はぁ、お黙り佐助。関係のないことです」

「あ、り、ま、すぅ~!!」


佐助が立ち上がり、村正に向かって口をとがらせながら言う。村正はそれをそっぽを向いてかわしながら、困ったように顔をしかめた。オロオロとしていた者は決心したように、2人に声を掛けようとした。


「また、か。懲りないな」


その時、お茶を取りに行っていた2人が帰って来た。その者は安心したように牛若丸と弁慶に駆け寄り、お茶が入った竹の筒を受け取った。佐助が村正を一瞥した後、牛若丸に駆け寄り、竹の筒を受け取る。牛若丸は微笑ましそうに何故か笑っており、その意味が理解出来なかった佐助は不機嫌な、低い声で「なに」と問った。


「いえ、仲がよろしいなと思いまして。しかしながら村正殿」


佐助に返答した牛若丸はこちらにやってくる村正に向かって竹の筒を投げ飛ばしながら、言う。


「信頼関係を歪めるような行動は慎みください。貴殿が、それを一番分かっておいでではないでしょうか?」


笑っているような、笑っていない笑みを受けながら、村正は肩を竦めた。竹の筒の中のお茶を飲み干しながら佐助を呼ぶ。佐助は、ムゥと不機嫌そうにしながら彼の元へと歩いて行く。自分の元へやって来た佐助の頭を村正は優しく撫でた。驚いたように身を固くした佐助だったが、次第に表情は柔らかくなっていき、最後には元のご機嫌な表情になった。それは彼ら流の仲直りの仕方、そして、意志疎通の仕方だった。怒っていた理由を理解し、佐助はご機嫌だ。だが、教え込まれている者にとっては、不思議で仕方がない。弁慶を見上げ、その者は疑問を口にする。


上様うえさま、どういうことですか?」


鈴の音のような、涼しい声が夜の闇に響く。弁慶はその者の頭をくしゃりと撫でながら言う。


「村正は、自分の部下が他の者の部下を誉めている事が気に食わなかったんだ」

「?」

「ふふ、まだお前には早かったか。要するに、嫉妬だ」


納得したような、していないような表情で首を軽く傾げるその者に向かって弁慶は微笑みながらお茶を口にした。佐助と村正の様子を見ていた牛若丸もクスクスと笑う。と、木々が揺れた。その者が敵かと思い、身構えるが誰も身構えないのを見て、不思議そうに首を傾けた。ザワッと風によって揺れる木々。その一本の木からある人影が降りてきた。佐助と同じ忍装束に身を包んだ青年だ。佐助は彼を見つけると笑顔で彼に近寄った。


「才蔵!」

「よぉ、久しぶりだな同胞」


口元を覆う黒い布を首辺りまで下げながら、青年は低い声で佐助に言った。彼は霧隠才蔵きりがくれさいぞう。佐助の友人であり仲間であり、元は同じ主人に仕えていた忍である。

佐助は自分よりも背の高い才蔵に近寄ると笑った。


「なにしに来たの?キミは別の任務があったんじゃあ…?」

「嗚呼、今日の分が終わったからな。暇だからお前達の手伝いでもしようと」

「それはありがたいです……とはいえ」


忍仲間の2人の会話を聞いていた村正がそちらへ歩み寄りながら、スゥとその目を細める。


「あんた自身が来るとは珍しいですね……真田様のめいですか?」


その問いに才蔵はクスリと肩を竦めて笑った。


「まぁな。大将は、心配性だからな。後は、織田の入り知恵と言えばいいか?」


クスリとからかうように笑う才蔵。村正は小さく息を吐いて踵を返した。その動きに牛若丸と弁慶は教え込みが再開するのだと気付き、竹の筒を回収しに入る。彼らの動きを不思議そうに見つめる才蔵の手を佐助が取り、教え込んでいる者の前まで引っ張っていく。


「来てくれたついでに、その子にあんたの技、一つでも教え込んで行ってくださいよ。技が多いことに越したことはありませんし」


村正が地面から突き出た岩に腰掛けながら言う。組んだ両足が艶かしい。才蔵が佐助を見やるー見下ろすとも云うーと彼は「ダメ?」と首を傾けていた。弟分で元仲間の願いだ。聞き入れない訳がない。そこまで考えて、自分の主人である真田さなだ 幸村ゆきむらの読めない考えに感服した。才蔵はクスリと笑い、佐助と同じくらいの身長の者を見た。そして、才蔵は腰につけたベルトからクナイを一つ取り出し、顔前でその切っ先を眺めた。その者がその行為を不思議そうに見ていると佐助がクスクスと楽しそうに笑いながら教えた。


「今、才蔵はね、キミに教える技を考えてるんだよ。才蔵の技は天下一品が多いから、やったね♪」

「まぁ!嬉しいです!」


キャッキャとどこぞの女子のように楽しげに話す2人。身長、と云うか目線が近い分、親近感が湧いているようだ。ちなみに牛若丸は2人よりも身長が高いのもあり、入っていない。才蔵はその和む光景をもう暫く見たいとも思ったが、時間が押しているので断念した。ちなみに、村正や牛若丸、弁慶もだったらしい。


「きーまった」

「ん?!なぁーに?何にしたの!?」

「俺の十八番おはこ、教えてやる。覚悟しとけよ?」


口元に布を上げながら言う才蔵に2人は真剣な表情で頷き返した。その表情に、才蔵は隠れた口角を上げた。


「佐助、そいつの手助けしとけ。おまけで教えてやる」

「やったね!」


さあ、希望を埋め込みましょう…


裏話ー!


"五天王"→もともとは五人兄弟設定でしたが、「鈴音丸と律夏出すなら違うわ」と思って変更しました。


鈴音丸と律夏→以前も書いた通り、律夏は名前いじってます。鈴音丸はもともと、名字付きでした。


玖陽→光るような、暖かい名前にしたくてそうしました。モデルはすでに書き起こしていたんで、名前だけ変えました。


翠鶴&珀蝶→この双子にもモデルとなったものがありまして、他の子とは誕生の仕方が少し違います。まぁそれはまた別の裏話で。じゃないとネタバレになってしまう(笑)


次はなんの裏話にしようかなー?

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