第四十七話 【真実】への道、未知
時間空きましたすみません
「このお方"達"は【神穢】の原点でありわたくし達のご友人、八咫烏様とイラヴィ様ですわ」
その紹介と共に長老の背後にいた影が、いや、影達がライトの下へ現れる。玖陽達が驚愕に目を見開きながらも、武器から手を離す事はしない。彼らは混乱していた。何故、長老は敵を連れて来た?裏切ったのか?
そう、誰もが思った時、タンと床を強く蹴る音がした。
「?!遊姫!!」
翠鶴が気付いて叫んだ時には遅かった。憤怒を宿した瞳をした遊姫が小太刀をイラヴィに向けて振った。
「待って、藍さん」
「?!」
憤怒の形相でイラヴィの首に小太刀をやった遊姫は目の前に突然現れた統軌に面食らいながらも、ギリギリで、統軌の首元付近で止めた。
「なに、庇ってんだ統軌!こいつらは敵だぞ?!」
憎々しげに、視線をあっちこっちに動かしながら混乱した様子で遊姫が叫ぶ。他の仲間も混乱し、武器から手を離していた。なんで、彼らを庇う?それに、『世界武器博物館』にいたであろう統軌がどうやって自分達が探していた短時間に戻ってこれた?
そんな疑問が今度は彼らの心中に渦巻く。とそこに、長老達の後ろの廊下から探していた零耶と玲御、そして彼らの友人、左京と右京がやって来た。左京と右京は少し混乱したような様子だがその瞳には何かに対する確信が並々と映っていた。零耶と玲御の手には分厚い書類があり、聞かなくてもその書類が【真実】を示しているのは容易に想像出来た。
遊姫は混乱しながらも小太刀を、異様に「静か」な小太刀を納めた。そして、その表情をグニャリと変化させた。泣いている、そう統軌が理解出来た時には彼は遊姫に引きずられて玖陽達の元へと行っていた。そして途端に心配していた絡繰と神楽へと放り込まれ、統軌は目をぱちくりしながらも心配させていた2人の姉兄の腕に身を委ねていた。
ライトの下に姿を表したイラヴィと、黒装束に身を包んだ者。玖陽達は彼らに攻撃せずに、制止するような視線を向ける零耶達に混乱していた。疑問が疑問を読んで思考がはっきりとしない。
「……説明、してよ」
獅雨が緊張した声色で零耶や玲御、統軌、左京と右京に問う。彼らに問ったにも関わらず、イラヴィは愉しそうに口元を歪めていた。それが、何故か気に触った。
「………俺達は『世界武器博物館』に行った。そこで俺達はあることを聞き、あることを知った。これが答えだ」
「【神穢】を庇うのが答えぇ?どういう事かしら?理解出来ないわ」
淡々と答えた零耶に珀蝶がイライラとした様子で、嘲笑うように言うと玲御が「そうだよね」と小さく、自傷気味に笑った。統軌が姉兄達の腕の中でもぞもぞと機器を取り出すと録音を再生した。響き渡る、無機質な【真実】。
『ま、それもあるっすよねぇ。無機物から有機物……神格化するってのは』
『まーなんとかなるっしょー前も、その前も、ずっとやって来たんだしぃ?』
『まぁねぇ。大丈夫よ。バレてないんだし!』
『そうっすよ~先輩』
『まぁ、あとは明日やりましょ。やっぱり、【天下三作】と【高龗神】は厳しいわぁ~』
『!?天下さっn『統軌!』』
『ん?今、なんか聞こえた?』
『えぇ~?何も聞こえなかったけどぉ?』
『……気のせいか』
『さっさと帰りましょうよ先輩。疲れたっすわー』
『そうだな』
遠ざかっていく足音の後に安心した3人の声が響いて録音は終わった。【真実】の片鱗を聞いた彼らの顔から血の気が引いていく。どういう事だ。さっきの会話は、一体。
「…さっきのは、」
「僕らが博物館に行って聞いた研究員達の会話だよ、兄さん。僕らは、政府に、人間達に、騙されていたんだよ」
絡繰の問いに腕の中で機器を握りしめながら統軌が悔しそうに言った。その証拠が、零耶と玲御が持っている分厚い書類だと云うのか。
「でも、それが長老様がイラヴィ達を連れて来た理由にはならない」
神楽がギュッと弟達を抱きしめながらイラヴィと黒装束を睨み付ける。それに長老がクスリと口元を押さえて笑った。
「それは今から、貴方方の、【AVANOLS】達の前で教えますわ。嗚呼、まだ不安が残っていると云うのなら、わたくし達に武器を向けた状態でも構いませんわ。ですから、ちゃんとお話を聞いてちょうだい。愛しい子供達」
長老はそう言って、いつも通りにっこりと笑った。
玖陽達、"五天王"は【AVANOLS】全員を会議ホールに集めた。零耶達を探していた彼らは零耶達が無事であったことに安堵した。が突然の敵と味方である長老の登場に面食らい、無意識のうちに武器を構えた。それを零耶達が宥めながら、自分達は「【真実】を見つけに『世界武器博物館』に行った」事と「鍵を置いていったのは、気付いて貰いたかった」、つまり、「【真実】をみんなが見つけてくれるよう、自分達も見つかるように願掛けしていた」事と「後戻りしない決意の意味」だった事を話した。そして、自分達が見つけた【真実】も。その片鱗を聞き、仲間達は困惑した様子だった。録音されたものを聞いても、零耶達が持ってきた書類を見ても、信頼している彼らが言っているとしても、脳が理解を受け付けなかった。だが、一人、また一人と武器を納めて座っていく仲間達。【真実】がなんなのか、見極めようとしているように見えた。
零耶と玲御、統軌は書類と機器を前に設置された台に無造作に放り投げる。その表情は冷たくもあり、仲間達よりもいまだに【真実】を受け入れる事が出来ていないようにも捉える事が出来た。
3人がゆっくりと仲間達の前から消え、左京と右京が待つ円卓へと歩いて行くと座った。
玖陽は【真実】を告げられて、妙に自分が見つけた【真実】と合致していて納得していた。けれど、心中は納得していない。それは全員がそうだった。『正体不明の細胞』、それは…あれはーーーー
零耶は自分達が先程までいた場所に翠鶴と珀蝶に連れられて長老とイラヴィ、黒装束が上がるのを眺めていた。自分だって、信じられない。けれど。
ギュッと唇を噛み締める。その瞳に映るはなにか?
長老はクスリと笑って言う。
「先程の零耶ちゃんや玲御ちゃん、統軌ちゃんの話に確証をつける昔話を致しましょう。【真実】は、貴方方の目の前にある、これですわ」
長老が細めていた瞳を開けた。イラヴィがコウモリの羽をバサリと広げた。羽はどんどん大きくなり、シャンデリアの光を覆い隠し、暗くなる。【AVANOLS】達がなんだなんだと慌てていく間にも彼女の羽は会議ホールを包んで行く。そして、完全に会議ホールが闇に包まれた時、そこにぼんやりと浮かび上がったのはイラヴィの瞳でも、誰かが持っていた明かりでも、武器でもない。それは、『此処には絶対にないはずの美しい月』であった。驚き、ざわめく彼らの耳に眠る子供に昔話を聞かせるように、優しくも暖かい声が響き渡った。それは儚くも美しい、【真実】だった。
「昔々、ーーーーー」
さあ、耳を澄まして、
さあ、目を開いて、
さあ、心で感じて
この【真実】を、人間が隠した【真実】を語り尽くそう
愛しき【AVANOLS】のために
次回から過去編ですー
八咫烏は前々から決めていました、黒装束と。説明苦手です…(泣)




