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それでも彼らは眠らない。  作者: Riviy
第五章 それでも彼らは、
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第四十五話 御心は、儚くも散るただの意志崩れ



「はっ…あれか!」


零耶は少し先に見えた光を睨み付けた。周りはいまだにガラス張り、武器の閉鎖空間。一方通行しかない道だが、そろそろ方向感覚が狂ってきそうだった。


「!あれ!」


統軌が先の光になにかを見つけ、指差した。それに双子が視線を向けると黒い影がこちらを一瞥していた。そして、光の中へと、ガラス張りの道へ来た時のように飛び込んだ。3人は言葉をかわすこともなく、あの先へと行くことを決めた。足に力を入れる。足元のガラスが悲鳴をあげた。大きく跳躍した3人はそのまま、光へと飛び込んだ。


カツンと、統軌のヒールの音であろう甲高い音が天井が高い空間に響き渡った。


「なに、これ…」

「は…?」

「なんだ、この部屋は…?」


3人の驚く声が小さく木霊する。3人の目の前に広がっているのは研究室のような空間だった。壁際にところ狭しと並んだ大小様々な機械類。中央を陣取るは古びた手術台。それらにゆっくりと3人は近づいていく。そして、


「?!血?!」


その上に広がったおびたたしい量の血を目の当たりにした。その血は手術台の上では飽きたらず、3人がいる反対側から床へと滴っており、血だまりが出来上がっている。この量の血だ。おそらく、普通であれば助からない。


「さっきの人達は、此処で何をしてたの…?」


統軌が首を傾げながらそう呟く。そう、此処にある手術台と機械類だけではあの足音の正体ー誰だかはいまだ不明だがーが言っていた意図は掴めない。驚きながらも3人の視線は【真実】を求めて四方八方に動いた。と玲御が何かを見つけ、手術台の少し遠い場所にあったテーブルに近づいていく。零耶と統軌からは玲御が影になって何が置かれているのかは目視出来ない。


玲御レーミ、何か見つけたのか?」

「いや、見つけないと動かないでしょ」


零耶の言葉に統軌がからかうように言う。ジロリと零耶が統軌を睨むと少し口角をあげて笑っていた統軌が今度は悪戯っ子の笑みを浮かべたのでその頭を思わず、叩いてしまった。


「痛い!」


背後で叩かれた頭を押さえながら文句を垂れる統軌を置いて零耶は玲御の元へと歩み寄った。どうやら玲御は何かを手にしているらしく、肩が上がり、そして、何故か、震えていた。零耶が不思議に思い、声をかけるべきかどうか迷う。今の玲御レーミは確実に、怒りで震えている。いや、もしかすると悲しみか。それでもこの【真実】の欠片を探しにライの姿を追って来た今、零耶の心中には「違和感」と「迷い」が生じていた。このまま、探して行っていいのか?後戻りなんて、考えていない。だから「鍵を置いてきた」んだからな。でも、この心中に渦巻く「違和感」と「迷い」は一体?違う声を聞いた自分達の「違和感」、そして、玲御レーミに声をかけるべきかの「迷い」。何故、今になって。その意味が分からない。

統軌が後ろからやって来て零耶はハッと我に返った。そして今度は「迷い」なく、玲御に声をかけた。


玲御レーミ、どうした?」


玲御が目だけで零耶と統軌を振り返った。その目に宿る感情に2人は背筋に悪寒が走るのを感じた。そして零耶は「迷い」の意味を理解した。この感情を、怒りでも悲しみでもない感情を読み取ったから、その【真実】を知るのを無意識のうちに怖がったのだ。その目に宿る感情は、凄まじいほどの憎しみ。そして、振り返った玲御の腕の中にあったのは、


「は!?嘘でしょ?!なんでこんなことに!?」

「…なんで、むごい事に…!」


刃がぼろぼろになり、刃の付け根辺りから既に真っ二つに折れてしまっている一振りの刀だった。刃は可笑しなほどに錆びており、微かに固まった血のようなものがこびりつき、柄はぼろぼろだ。長年手入れされていないことは見ただけで理解出来た。だが、何故、血のようなものまでついているのだ?そして、何故、折れている?


「どうして、こんな事に…」

「だよね。博物館に保管されているなら折れるなんてないはずなのに……ん?玲御、ちょっとこっち見せて」

「「統軌?」」


統軌が何かを見つけ、玲御から折れた刃を丁重に受け取った。そして亀裂が入っている刃を凝視した。双子は顔を見合せ、首を傾げた。統軌がしばらくして「うん、やっぱり」と呟きながら顔をあげた。


「統軌、どうしたんだ?」

「うん。この亀裂、変じゃない?」


統軌が刃に走っている亀裂を双子に示す。それを凝視し、双子は彼が言いたい事に気付く。まさか、これは


「人工的に折られたのか?!」

「うん、間違いないよ。僕、藍さんが折れたのを修復してるの見たことあるから断言できる」


統軌が悔しそうに顔を歪め、3人の心中に誰に対してか分からない怒りと憎しみが沸き上がる。なんで酷い事をする?何故、武器を折った?なんの目的で?理解出来ない。と、そこで零耶は視界の隅に書類を見つけた。玲御が折れた刀を見つけたテーブルの近くの床に一枚落ちていた。それを拾い上げ、書いてある文章を読み……そして、驚愕に目を見開いた。


「はぁ?!」

零耶レーヤ?どうしたの?!」

「何?」


玲御と統軌が零耶の驚愕した声に心配そうに彼に近寄った。零耶が2人に見せた書類には大きく〈【人造幼児体】、【天下三作】、【高龗神たかおかみのかみ】〉と書かれていた。それに2人も目を見開く。何故、【人造幼児体】までかかれているんだ?


「どういう事?なんで【AVANOLSアヴァノリス】関連の言葉が?」

「わからん……なぁ、折れてた刀ってもしかして【天下三作】のうちのどれかなんじゃ…」


薄々感じていた事を零耶が口にすると此処の気温が数度下がった気がした。3人から漂う怒りと憎しみ。零耶は何も言わずにその書類を血塗れの手術台に放り投げた。白い紙が血を吸って紅く染まっていく。何故、【AVANOLSアヴァノリス】関連の言葉が足音の者達が言っていた言葉と共に並んでいたのか。何故、折れた武器があったのか。何故、血塗れの手術台があったのか。【真実】を追い求めるあまり、どんどん沼に足が沈んで行く。動けない、探れない。【真実】が、パズルのピースが足りない。


「…………なに、これ」


怒りと憎しみの渦から我に返った統軌が紅く染まった書類の近くに書類とは違う物体を見つけた。それは小さく、何処かで見たことがある形だ。統軌は手術台に嫌々ー靴に血がつくのが嫌らしいー近づくとその物体を親指と人差し指で摘まみあげた。玲御が統軌から受け取っていた刃と柄を元あった場所に戻すとそれらを慈悲深げな、悲しそうな表情で撫で、物体を摘まみあげた統軌とそれをのぞきこむ零耶の元へと歩いて行く。統軌が摘まんでいる物体からポタポタと血が滴る。統軌が「早く!」と自分で摘まんだにも関わらず、零耶に早く物体の正体を解明しろと言う。元からそのつもりで近寄った零耶は「待てって」と言い、今まで怒りを漂わせていた玲御はその光景に小さく笑みを溢した。零耶が顎に手を当てて謎の物体の正体を探っていると見覚えのある突起物が紅い血の中から出てきた。零耶は瞬時に統軌に自分の手のひらに落とすよう視線で促すと彼はその通りにした。零耶が手のひらに置かれた物体をブンッ!と血が全てなくなるまで振る。そして現れたのは、古びた鍵だった。しかも、自分達の部屋の鍵と形状が同じである。


「鍵?」

「何処の鍵?」

「知るk……っておい、あそこ!」


鍵を眺めていた3人。その疑問を遮り、たまたま顔をあげた零耶が見つけたのは大小様々な機械類が並ぶ奥に、明らかに意図的に見つかりずらくしている鉄の扉だった。3人は顔を見合せ、頷き合うとその扉へ向かって慎重に機械を避けながら近づいて行く。重そうな鉄の扉には鍵穴と取っ手があった。零耶は玲御と統軌を振り返る。「迷い」。【真実】を受け入れるべきか「迷い」が生じ、顔が強ばる。それは玲御も統軌も同じだったようで、顔が少し強ばっている。けれど、次の瞬間、2人は零耶に安心させるように笑いかけた。


零耶レーヤ、私達は一緒だから」

「どんな【真実】でも一緒になら受け止められるよ」


玲御と統軌が零耶を落ち着かせるように彼の手を包む。それに驚くように零耶は少し目を見開いた、がすぐにその表情は和らいでいく。ずっと一緒だと、約束したから。零耶は安心したように頷く。零耶は2人に感謝の意を込めて微笑むと彼らも嬉しそうに微笑んだ。零耶は再び鉄の扉に向き合う。バクバクとうるさい心臓を、深呼吸をして落ち着かせ、手のひらにあるまだ少し血がついている鍵を見下ろす。此処を開ければ、きっと全ての【真実】が分かる。


「「「……」」」


そして今、聞こえた声も。答えを聞かなくても3人共、同じ答えだ。零耶は鍵を鍵穴に入れた。ガチャと開く音が響く。零耶は取っ手を掴み、重い扉を押した。それを玲御と統軌も手伝う。ズズ…とゆっくりと内側へ動いていく扉。そして、此処とはまた違う光が彼らを出迎えた。


さあ、【真実】とあの「違和感」。そして、声を、見つけよう。


書き溜めがスタンプ状態で次回作が大変な事になってます(白目)


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