第四十話 兄弟刀・裏
四十行ったでぇ…驚きや…
《ほら、俺の言った通りだったろ?》
その声に武器があった場所を見るとそこにいたのは武器ではなく、空中に浮かぶ透明な姿をしたある3人の人物だった。
白い長めの布を頭から被っている少年ないし少女と同じ長さで黒の布を頭から被っている少年ないし少女。2人の少年ないし少女は布のせいで顔が見えない。そしてもう一人は、月と葉っぱの髪飾りをし、短めの布で顔を隠している女性だ。その女性は顔を隠していても美しいと云うことが分かった。そして、零耶達には透明な姿をした彼らが誰であるか分かった。
「…"二葉月"、ちゃん…?」
玲御が震える声で女性に声をかけると彼女は見える口元だけでニッコリとそうだと云うように笑った。
「って事は…"燭"?"燭"なの?!」
《そうだよ、主人!》
"燭"と呼ばれた黒い布を被った少年ないし少女…いや、声からして少年が嬉しそうな声を上げる。それに零耶達は理解した。【AVANOLS・Revival】と同じ事が起きている。けれど、あの時はこんなような感じではなかった。周りが暗くなっている訳でも時間がゆっくりとなっている訳でもない。では、一体これは?
「どう、なって…?」
《嗚呼、それはな、主達が強くなったから》
《正確に云えば精神、繋がりの事!》
零耶達は顔を見合せ、首を傾げた。確かについさっき、一緒にいると、信じると確認し合ったがそれがどうして武器である彼らに繋がると云うのだ。その疑問を察したようで女性、"二葉月"がクスリと笑って説明を始める。
《私達は武器。持ち主によって能力が変わっていく。それは精神も同じ事。主様達が変わったから私達も変わるためにこうして出てきたの。私の可愛い主様》
慈悲深げに微笑んで"二葉月"が玲御の頭を撫でた。武器である彼らが、自分達が変わったがために出てきた……
「どう変わるの?」
「そうだよな。【AVANOLS・Revival】で力を貰った。これ以上どんな風に変わるんだよ?」
統軌と零耶が問うと彼らの武器、"燭"と"小鶴"が顔を見合せて笑った。此処まで予想通りだとでも云うように。"小鶴"が零耶に両手を伸ばしながら言う。
《俺達はあの時、主の願いに答えた。あの時は精神同士は繋がっていない、云わば一心同体から少し外れた空間にいた》
「………って事はつまり、今は持ち主と武器の能力が繋がっていて、精神は糸状態の脆いものって事?」
「よくそこまで考え付いたな玲御…」
「そうか?…え、合ってる?」
"小鶴"の説明に玲御が自己解釈を加えるとそれに零耶と統軌が驚いたように目を見開き、零耶はあきれたように言葉を投げる。武器達も驚いた表情をしていたが"小鶴"は合ってると云わんばかりに伸ばした両手で双子の頭を撫でた。それに"二葉月"が《主様の頭を撫でるのは私の役目よ》と不満げに頬を膨らませ、"燭"がそれが可笑しかったのか腹を抱えて震え出した。見る限り、笑いを堪えているらしい。"小鶴"がその震える"燭"の頭を叩く。勢いよく顔を上げる"燭"。零耶と統軌はなんだかいつもの自分達を見ているようで変な感じになった。
《なにするの"小鶴"!》
《お前が笑うのをやめなさそうだったから止めたまでだ》
《だからって、主人達と同じ方法じゃなくてもさぁ!》
《こら2人共!続き!》
"二葉月"が言い争う2人に怒ったように云うと彼らはうぐっと呻いて言い争いをやめた。武器であるはずの彼らは自分達と同じようにコロコロと表情を変える。その事が嬉しくて、可笑しくて零耶達は小さく笑った。その様子を武器達は不思議に見ていたが"小鶴"が説明を再開する。
《んで、主達はこの度、精神の繋がりが持ち主同士で強まった。その結果、俺達も主達との精神同士が強まる事が出来るようになった》
「え?『なった』って事は…」
"小鶴"の説明に統軌が首を傾げながら云うと"燭"が嬉しそうに空中で一回転して言った。
《そっ!此処に僕らが出た、正確には出れたことで僕らと主人達の精神同士が繋がりつつあるんだ》
「ん?でもこの前、"小鶴"…」
零耶がその説明に違和感を覚え、"小鶴"を見ながら云うと彼は頭を軽くかき、言う。
《あれは主の意志に引きずられたんだ。強い意志が俺を喚び起こした……まだあれでは不完全だったんだ》
零耶がなるほどと云うように頷きながら聞く。武器達は持ち主達、零耶達から質問が他にないのを確認するとそれぞれの持ち主の前へと移動した。その行動に零耶と玲御はなんとなく理解出来たのだが統軌はいまだにピンと来ていないらしく、首を傾げた。それを横目に確認した零耶はため息混じりに統軌に言った。
「こいつらの行動に従っとけ」
「?なんで?僕らは何もしなくてもいいの?」
「俺達が繋がりを強くして出てきたんなら、後はこいつらが最後の繋がりを強めるだけ。だから俺達は従ってればいい」
零耶の答えに玲御もそうだと云うように頷く。統軌はそこまで一瞬のうちに考えていたであろう双子に悔しいなぁと感じながら、零耶が言った事を口の中で噛み砕いて理解していく。そして、うんと納得したように頷いた。それに武器達も頷き合う。「あっ」と"燭"が大事な事を忘れてたーと云わんばかりに手を叩いた。それに嫌な予感がした"小鶴"が"燭"を振り向いて、見える口元だけを不愉快そうに歪めた。
《やめろ…今云うのか?》
《だって今言った方が後々楽じゃん。そうだよね、"姉さん"?》
「「「は?」」」
"燭"の言葉に零耶達の口から間抜けたような声が漏れる。今、"燭"はなんと言った?"姉さん"?その視線の先にいるのは"二葉月"で、見える口元だけが楽しそうに笑っている。一方、止めていた"小鶴"は面倒くさそうに頭をかいている。
「せ、説明求む」
統軌が片手を挙げながら云うと玲御が「私も求むー」と少し楽しそうに統軌の真似をしながら同意する。零耶も頷いて同意すると"小鶴"は小さくため息をつくと、犯人の"燭"の脇腹を肘で突っついた。当の本人はそんな事をされても愉快そうに笑っていたが"小鶴"の怒ったような顔ー零耶達には布のせいで見えないがーに恐れをなして笑いながらも説明を始めた。
《僕らはね、同じ性質……同じものを使って作られた。"姉さん"である"二葉月"はオリジナルを基盤に、僕は彼女を、"小鶴"は僕って感じに。こう云う同じものを使ったって云うのは珍しいんだって。製作者の方は主人達の方が詳しいと思うけど?》
「遊姫の兄貴、か」
零耶が小さく、彼らを錬金った彼の名を呟く。遊姫がどうやって武器を錬金っているのかは定かではないが、基礎となる武器を調べ、その性質を解明し……と難しい事を色々やって出来るらしい。本当にちゃんとした方法は知らない。が、"死剣"を思い付くような遊姫の事だ。武器達が云うように珍しいのだろう。
"燭"の言葉に玲御が苦笑混じりに天井を仰ぐ。
「うーん…ちゃんと遊姫の兄さんに聞いとけば良かったね」
「そうだよね。珍しいかどうかはともかく、作り方は企業秘密だって言って曖昧にしか言わないもんね。ほんっとに、噂くらいだし」
統軌が玲御の言葉を受け継ぎ、肩を竦めた。それに武器達が顔を見合せて笑った。顔は分からないが彼らの動きは兄弟である彼らではなく、なんとなく持ち主に、自分達に似ている気がする。
「つまり、兄弟ってこと、か…だからあの時、"兄さん"と"姉さん"って"小鶴"って言ってたのか」
《ええ。私達の中では…武器の中では"兄弟刀"と呼ばれているわ。まぁそれに当てはまるのも、製作者様の中にはあまりいないようだけどね》
零耶が納得したように云うと"二葉月"が楽しそうに笑って首を傾げた。全員がなんだが分からないが楽しくなって笑った。なんで、楽しいんだろう。武器である、片腕である彼らと繋がったからなのだろうか。
「そういえば、もう他の人とかは終わってたりするの?」
玲御が思い出した質問を投げ掛けると"二葉月"が愛おしそうに玲御を見やった後、質問に答えた。
《人に…持ち主によるわ。だいたいが終わってるんじゃないかしら。ふふ、慌てなくてもいいの》
そう言って"二葉月"が笑った。彼らはその答えに安心していた。何故だろう、自分でもよくわかっていないようであったが。
《さて》と声を上げて"小鶴"がニッと見える口元だけをニヒルに上げて言う。
《俺達も始めようぜ?"兄さん"、"姉さん"?》
"小鶴"の物言いに"燭"と"二葉月"が顔を見合せ、クスリと笑う。そして次に彼らは我らが主達に行っても良いか確認を取るために見た。零耶達は真剣な表情で答える。
「いつでもいいよ?」
「私達の武器が言ってんだから、信用してるって」
「お前達の本当の強さ、見せてくれよ?」
彼らの物言いに武器達は、人の姿を得た"兄弟刀"は嬉そうに口角を上げた。嗚呼、それでこそ、自分達が認めた主だ!
《それじゃあ、始めましょうか♪》
ちょっくら裏話でも
裏話は作者が不定期に出しますよ!
"小鶴"、"二葉月"、"燭"について
"小鶴"は「小さい鶴って良くね?!小さいから短刀の名前が良いね!」で初めに決まりました。驚き。
"二葉月"は「双葉…二葉……お月様ぁあ!!」で名前決定しました。作者のノリよ…
"燭"は兄弟関連で似た雰囲気使おうと思って、考えつきました。
んで"兄弟刀"って云うのも零耶、玲御、統軌が仲良し三人組だから良い感じになると思って思い付きました。他での"兄弟刀"は"死剣"くらいですかねぇ…
以上、裏話でした!




