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それでも彼らは眠らない。  作者: Riviy
第四章 それでも彼らは夢を視る
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第三十七話 怪しい、妖しい、アヤシイ

書き溜めがたまってきました…


「政府が怪しい」と睨んでから早くも一週間が経った。桔梗は再び政府に帰り、何か情報が手に入ったら知らせると云う。その間、政府の動きに進展はなにもなかった。いつものように任務を下し、愚痴と云う罵倒を与えてくる。【神穢シンエ】を討伐する日々。いつも通り、いつも通りの日常に戻りつつあった。一つ、変わった事と云えば、政府に疑心が深まりつつある事くらいか。


神穢シンエ】討伐に行く少し前。行く前にと零耶は自室で短刀の手入れをしていた。二段ベッドの方には何かを考えている玲御がいた。零耶は手入れをしながらチラリと玲御の様子を伺う。あの話からずっと、玲御はこんな感じだった。何処かボーッと、考え込んでいるのだ。同じパーティーの統軌や左京、右京もなにやら気付き始めている。が、零耶にもその原因はわからなかった。

と、扉を叩く音がした。その音にハッとしたように玲御が我に返り、「はーい」と声をあげる。扉を開けて顔を覗かせたのは統軌だった。そろそろ任務時間なので呼びに来たのだろう。


「零耶ー玲御ー、行くってよー!」

「あ、はーい!」

「すぐ行く!」


統軌にそう双子が答える。手入れ道具を片付ける零耶の横で玲御が掛け台から太刀を手に取り…一瞬、固まった。ぶるぶると首を横に振って腰にさすと、机の上に転がっていた機器を懐にしまいこんだ。そして少し、再び動きを止めると零耶を振り返って視線で先に行くと合図する。零耶がその意図に気付き、頷くと彼女は統軌の横を通り過ぎて先に行ってしまった。玲御の異変に気づいていた統軌は首を傾げながら、玄関に片付けを終えてやって来た零耶に言う。


「ねぇ、玲御ホントどうしたの?」

「わかんねぇ」

「双子でも分かんないことがあるんだね」


統軌の言葉に零耶は苦笑気味に笑った。統軌が言ったのは嫌味ではない、事実だ。それを理解しているからこそ、零耶は苦笑したのだ。


「探りは入れてるんだがな…」

「分かんない、と…でも今、みんな政府に疑心を抱いてるから、もしかしたらその影響かもよ?」

「…………」

「この任務終わったら聞いてみよ?」


統軌の提案に零耶はコクリと心配そうに頷いた。その背を統軌が大丈夫だと安心させるように叩いた。統軌がゆっくりと歩き出すと零耶も部屋の鍵を閉めて、その背を追う。

玲御レーミ……お前は何を考えているんだ?政府の事か?【AVANOLSおれたち】の事か?それとも、【神穢シンエ】の事か?なぁ、心配なんだ、だから


「………頼ってくれよ…」


背後で聞こえた小さな、彼らしくない弱音。統軌にはなんとなく、玲御が零耶に、自分達に言わない理由はこうではないかと思っていた。「弟である零耶を心配させたくないから」。自分も姉と兄を持つ弟であるから分かる。けれど、相手を想う思いは時にすれ違う。それが今か、それとも別か。どっちにしろ、聞く気だった。零耶も統軌も。

そして、彼らを心配する兄分達の左京と右京も。


…*…


討伐任務は老人しか住んでいない村外れでだった。村外れで【神穢シンエ】の群れが現れるらしく、任務が下ったらしかった。村の外れに行くには村の中を通らなければならない。罵声が飛ぶことを覚悟して彼らがバンで村の中に進入した。が、


「ん?」

「……変、ですね」


目の前の光景に声をあげる右京と左京。零耶達も横の窓から外を見て目を見張った。


「どういう事…?」

「意味わかんない…」


目の前に広がっていたのは、罵声でもなければこちらに物を投げると云うわけでもない。老人達が自分達に何もしないで穏やかに日常を過ごしていたのだ。零耶達が乗っているバンを見て軽く頭を下げたり手を振ったりと、旅人を歓迎するかのようだった。これには一同、目を疑った。【AVANOLSアヴァノリス】が討伐でやって来たーただ通るだけでもー時、人々は罵声を浴びせたり物を投げたりとやりたい放題だった。こっちが【神穢シンエ】を倒しているから生活出来ていると云うのに。けれど、此処の村人達、老人達は真逆の事をしていた。


「油断させる気か?」

「いえ、違うかと思います」

「とりあえず、なんにもないんだしさっさと進んじゃお」


玲御が運転席と助手席に身を乗り出して言うと右京と左京はそうだなと頷き、スピードを上げた。スピードが上がったバンを老人達が道を開けて通してくれる。いつもとは違う対応に彼らは面食らったまま、任務へ急いだ。



少し考え込んだ零耶を統軌が現実へと引き戻したりもしたが、村の外れに到着。バンを隠したちょうどその時。


「右京!」

「!?」


左京が何かに気付き、叫んだ。それを瞬時に反応して右京が大太刀を鞘から抜き放った。零耶達が左京の声に体を固くし、緊張を示した時、ガキンと金属音が響いた。


「右京!」

「右京さんっ!」


左京と統軌の悲鳴じみた叫び声が木霊する先には大太刀で黒い刃物ー零耶が見る限りクナイに見えるーを防いでいる右京がいた。その刃物を持つ者も全身が真っ黒で右京に凄まじい攻撃を与えている。


「ほぉ…?なかなかやるな」


スッとその黒い者が後方に飛び、彼らと距離を取った。右京が肩を回し、怪我がない事を確認する。零耶達全員が右京の元に集まり、その者を警戒し、睨み付ける。その者は黒い服装だが黒装束ではないことは確かだった。イラヴィやプラーナのような気配と悪寒がする。その者の足元に黒い影のようなものが次々とできていく。その影はボコリと不気味な音を出して黒い体に、美しい宝石を顔に埋め込んだ数体の【神穢シンエ】へと姿を変えた。そして、最後の一つは人型になり、その姿を露にした。


「プラーナ…」

「ごきげんよう、皆様」


プラーナがスカートの裾を掴んで可愛らしくお辞儀をした。零耶達は敵の出現に身を固くした。ブンッと大太刀を振ってそれを肩に担ぐと右京が言う。


「この前、罠に嵌まったって云うのによくノコノコ出てこれるもんだなぁ」

「あら、お厳しいですね。けれど、こちらにも目的があるんです」


スゥと真っ赤な瞳を細めてプラーナが言う。その行為でいかに本気か読み取れた気がした。プラーナが片手を軽く挙げる。来る、そう直感的に感じ、身構えたが【神穢シンエ】達は零耶達に襲いかかっては来ない。不思議に思っていると統軌が「あっ!?」と呆気にとられた声をあげた。プラーナの挙げた片手を先程の者が優しく取ったのだ。そしてその手の甲に口づける。その行為が、優しく、愛しさを包み隠さず表しており、玲御が自分がされた訳ではないにも関わらず恥ずかしそうに頬を染めた。


「……何を?」

「あら、分からないですか?これは……開戦の合図でございます」


ニィと口角を上げてプラーナが笑った。途端、控えていた【神穢シンエ】達が一斉に零耶達に襲いかかった。

零耶は眼前に迫った刃を短刀でギリギリ防いだ。横からもやって来る薙刀の一撃に零耶は上へ跳躍して攻撃をかわすと空中で態勢を整え、【神穢シンエ】達に向かって急降下する。


「"小鶴"・廻楼かいろう!」


短刀に白い霧と薄いピンク色の粒子がまとわりつき、幻のような光景を短刀に作り出す。零耶がその技を使い、自分に攻撃した薙刀を持つ【神穢シンエ】に狙いを定めて短刀を振り下ろす。薙刀で重いその一撃を防ぐ敵。エメラルドの瞳を細めて【神穢シンエ】がやってやったと嗤う。けれど、それは零耶も同じで笑っていた。【神穢シンエ】が訝しげな表情で瞳を歪めた。途端、その【神穢シンエ】の足元に薄いピンク色の粒子が降り注ぎ、ガチンと音がしたかと思うと重い足枷となって拘束した。驚愕する【神穢シンエ】の薙刀を弾き返すとその後ろにいたもう一体の【神穢シンエ】に向かって通り過ぎるついでに薙刀の【神穢シンエ】に攻撃しながら迫る。と拘束された【神穢シンエ】に玲御が技を伴って迫り、攻撃した後、零耶と同じ敵へと迫った。拘束された【神穢シンエ】が逃げようともがいていると統軌が刀片手に立っていた。相手は、双子から相棒に託された。


玲御レーミ!」

「任せなって零耶レーヤ!」


パチンと手を合わせて双子は刃、大太刀を持った【神穢シンエ】に向かって滑るように迫る。【神穢シンエ】が双子に向かって大太刀を振る。それを紙一重でかわし、零耶は態勢を低くして迫り、敵の足に先程の技を発動させたまま攻撃するとガシャンと足枷が片足に付き、ガクンと【神穢シンエ】の動きが止まった。零耶が【神穢シンエ】を通り過ぎ、方向転換すると【神穢シンエ】の前には先程の一撃が頬にかすったのか、浅い一線が刻まれた玲御が太刀片手に立っていた。玲御は零耶と同じように態勢を低くし、走り出す前の肉食獣のような威圧を放つ。そんな威圧を前にしても【神穢シンエ】は悠然と大太刀を構えている。


「さあ、"二葉月"ちゃん、やるよ!」


キィンと太刀が淡く光を放つ。玲御がバッと跳躍すると同時に零耶も跳躍する。【神穢シンエ】は驚く事なく、足枷が嵌められて動けない片足を軸にして2人の攻撃を同時に受けれる態勢になると大太刀を構え、柄を握った。ゾワリ、零耶の背中に悪寒が走った。なんだ、今のは。今まで感じたような、感じなかったようなこの悪寒と云う名の感覚。まさか、これは【神穢シンエ】が技を使う際に発する悪寒か。嗚呼、それでも、「俺達は動くことをやめられない」。零耶は口角をあげながら技を解除する。トン、と片足が地面に軽く付いた瞬間だった。緑色の葉っぱが零耶の目の前を通り過ぎて行った。


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