第二十八話 一期一会ならぬ一期二会
投稿遅くなりすいませんでした!いや、本気で投稿忘れてましたね!こんな作者を笑ってくださいぃいいい
「イラヴィ…」
零耶が憎々しげに彼女を睨み付けるとイラヴィはクスクスと愉しげに嗤った。
「お久しぶりね。じゃあ、今回も連戦、しちゃいましょうか!?」
イラヴィが右手を天高く突き上げると【神穢】達が雄叫びを上げる。地を揺らすほどの雄叫びに全員が耳を塞いだ。雄叫びが傷を直に抉るように響いてきて零耶は思わず、両腕で自身の体を抱き締めた。スッと雄叫びをあげた【神穢】達を細長く美しい指先が止めた。その指の持ち主はイラヴィではなく、彼女に寄り添うように立つ女性だった。その女性はニッコリと嗤う。それが不愉快に感じた統軌と右京が言う。
「何嗤ってやがる」
「僕らを侮ってるんだったら、さっさと帰った方がいいよ?」
2人の言葉にイラヴィはあら、と言った感じで口元に手を当てている。その周りにいる【神穢】達はイラヴィと女性の様子を伺っている。女性は愉しそうに嗤うとイラヴィの様子を伺う。イラヴィは「早くしてよね」と女性に手を振って促した。女性はイラヴィに向かって頭を軽く下げると彼らに向き直り、ニッコリと笑っていない笑みを今度はこちらに向けた。ゾッと統軌と右京の背に悪寒が走り、統軌は零耶と玲御の方へと寄り、右京は大太刀の柄を強く握った。
「初めまして皆様。あたくし、プラーナと申します。以後、地獄の底でお見知り置きを」
シャランッと音がして女性がしている簪につけられたレッド・ベリルと云う宝石が揺れた。零耶は唇を噛み締めた。また、強敵が現れた、と。何か、嫌な予感がする。零耶はブルリと体を震わせると玲御が心配そうに彼の服の袖を握った。
プラーナと名乗った女性は真っ黒なロングヘアーで血のような真っ赤な瞳。髪にはレッド・ベリルをつけた簪をし、服は控えめにフリルがあしらわれた真っ黒なゴシック・ロリータを身に纏っている。そしてその背にはイラヴィと同じような翼が生えていなかった。
イラヴィがスッと、再び手を挙げると【神穢】達が戦闘体勢になる。零耶達も戦闘体勢に入る。両者、静かに睨み合う。勝率はどちらかというと零耶達の方が低かった。この前に一戦しており、疲労困憊状態なのだ。それでも、情報が手に入れば……
「無理はしないでくださいね」
「大丈夫だよ、左京の兄さん!」
「そうだぜ、さっさと倒して、帰ろう!」
左京の言葉に双子が叫ぶと左京は同意するように小さく笑った。そして、次の瞬間、両者が相手に向かって跳躍した。
零耶は滑るように移動すると近づいて来た、刀を持った【神穢】の一線を前転してかわすと素早く立ち上がり、足元に短刀を振った。カキンッ!と甲高い音が響き、零耶の手に痺れが走る。硬い、強化したか!
零耶は一旦後退する。その背後に別の【神穢】が迫る。それを振り返り様に短刀で真っ二つにするとその【神穢】の背中から突き出た刃があった。その刃の先を目で追うとその【神穢】の背中にいたのは統軌だった。零耶と目が合うとニィと得意げに笑い、2人は【神穢】に当てていた刃を振り切ると迫っていた別の【神穢】にそのまま武器を滑らせた。武器が持ち主の意志を受けて淡く、光る。それを見た訳でも相棒の思考が分かった訳でもないが零耶と統軌は相手の黒い体に武器を振りながら叫ぶ。
「"小鶴"・撃鶴!」
「"燭"・刀灯斬り!」
零耶の短刀と統軌の刀が淡く光りながら、鋭い輝きを放つ。見るだけで切れてしまいそうだ。そんな2つの刃は【神穢】の体に深い一線を刻んだ。【神穢】が反撃しようと痛む素振りも見せずに振る、と、零耶と統軌の姿が消えた。えっ、と驚く敵を尻目に零耶は統軌が相手をしていた【神穢】の首元を掻き切っていた。目を見開くもう一体の、零耶が相手をしていた【神穢】に今度は何処からか現れた統軌が刀と技で作ったであろうもう一振りの刀で左肩と右足を切り飛ばし、敵は態勢を崩して倒れこむ。統軌が倒れこんだ【神穢】から離れ、首から上を消滅してなくした【神穢】から距離を取っている零耶の元へと後退する。2人はパチンとハイタッチを交わした。よく見ると2人の体は陽炎のように揺らいでいた。零耶と統軌が行った技は味方と自分の位置を変え、素早さも上げるものだ。偶然にも零耶と統軌は似た技を持っていた。統軌の技は陽炎のようなもう一つの武器を追加で作り出す要素もある。2人は示し合わせた訳でもなく、タイミングを合わせた。それほど、相手を信頼していると云う証だった。
統軌は偽物の刀を手離すとその刀は地面に着く前に消滅した。零耶は統軌を横目に見る。傷は零耶よりも深くはない。相手は負傷している【神穢】2体。他の仲間が何体相手にしているのか分からないが、先程よりも勝機は十二分にある!
「零耶」
「嗚呼、決着つけるぞ」
「分かってるならいいよ!」
零耶と統軌が足に力を入れ、跳躍すると2人共に体勢を片足と持っている槍で保とうとしている【神穢】に向かって刃を振った。が、首をなくした【神穢】がそれを防いだ。驚く2人の目に写ったのは首をなくした【神穢】の胴体に顔にあったダイヤモンドの瞳が芽を出すように生え始めていた事だった。零耶は驚きながらバク転しながら後退すると統軌は胴体にダイヤモンドの瞳がある【神穢】に向かって零耶と交差するように飛び出した。統軌に【神穢】が刀を振り上げる。それを統軌を同じく刀で防ぐとそのまま弾き返す。ヨロヨロとふらつきながら後退する【神穢】に向かって統軌は跳躍しながら上段斬りを放つ。その顔がその前についた怪我の痛みに歪んだ。
零耶が後退すると片足と右肩がなくなった【神穢】は突進するように彼に迫った。突然の行動に零耶はギョッと面食らった。紙一重で【神穢】の突進を横にかわすと相手が体勢を立て直す前に地を滑るように体勢を低くくして駆けた。そして下から殴るように短刀を突き刺した。サファイアの瞳に短刀の切っ先が突き刺さった。パキッと音がして大きなサファイアの瞳が割れる。そこに槍を振る【神穢】の攻撃を上体を低くしてかわすと、斜めに斬られている怪我がしゃがんだ拍子にじくりと痛んだ気がして零耶は顔を歪ませた。相手の残った足を刈る勢いで短刀を振る。やはり、硬い。カキンッと硬い音がしただけで傷はついていない。顔を歪ませる零耶にすかさず【神穢】が槍を突き刺す。それを後方に飛んでかわすが左目と左頬の近くに浅い傷が刻まれた。口元に流れてくる鉄の味を手の甲でぬぐうと零耶は短刀を胸の前で構えた。グサッと地面に突き刺さった槍を抜く【神穢】と零耶が睨み合う。暫しの沈黙。その後、【神穢】が再び突進した。零耶も敵に向かって駆ける。ぶつかる、と云うところで【神穢】が槍を突進したまま突き刺す。それを足に力を入れて地面を蹴り、上へ飛んでかわすと頭上から短刀を構えのまま突き刺した。上を向いて驚く【神穢】の瞳が零耶を見据えてニィと細められた。嫌な予感が再び、零耶の体を駆け巡る。だが、もう遅い。零耶は淡く光る短刀を【神穢】のひび割れたサファイアの瞳に突き刺した。
「?!」
が、【神穢】の姿が突然消えた。驚く零耶の背中から鋭い痛みが体中に走った。
「ぐあ?!」
口から血を吐きながら、零耶は地面に着地する間もなく、叩きつけられるように倒れた。立ち上がろうとするが背中から腹を貫く何かが零耶を地面に無残にも縫い付けているため動けず、痛みが零耶の思考を奪う。零耶が目だけで後ろを見ると自分を貫いているのは【神穢】の槍だった。目を見開く零耶の思考を初めて進化した【神穢】と闘った時の状況が巡った。そうだ、あの【神穢】も一瞬にして俺の上へ移動する技を持っていた。他のやつが使わない保証なんて何処にもない。
零耶はギリ、と痛みと悔しさに歯軋りした。一方、槍を持っていた【神穢】はバランスをとりながら零耶の前で、ない口元を歪ませて嬉しそうに嗤っている。その隣にはいつの間にかイラヴィとプラーナが立っており、その近くには統軌が相手をしていた【神穢】と数体の【神穢】もいた。やっぱり、勝率は低かったのか……零耶が落胆すると短刀の柄を強く握った。その時、
「零耶!」
「零耶!」
統軌と玲御の声と共に体を巡っていた痛みが消える。血が流れ出る腹を押さえる零耶を右京が抱き起こした。血が流れ、青白くなる零耶を見て、技を使って槍を消したであろう左京も、一戦目よりも傷が増えた玲御と統軌も、目の前に立つ敵を憎々しげに睨み付けた。それにプラーナがクスクスと嗤った。勘に触るような、人を煽るような小さな笑い声。
「あらあら…大変ですわ、お姉様」
「大変って……よくも私の弟を…ッ!"二葉月"ちゃん!」
「ボクもお供致します」
プラーナの物言いがカチンと来たのか玲御が太刀を構える。持ち主の怒りに反応して太刀がカタリと揺れた。左京も扇を構える。美人な顔が怒りに震えていた。イラヴィが愉しげに嗤い、残っている【神穢】達に行けと腕を伸ばした。途端に両者が飛び出した。
「僕もいk「お前は残れ」!なんで右京さん?!」
統軌が参戦しようとするとそれを右京が止めた。統軌が彼を振り返ると統軌の背筋に悪寒が走った。静かな怒りをたたえた右京と彼の武器、大太刀がそこにいた。右京は統軌に腹から血を流し、今にも意識を失いそうな零耶を預けると困惑する統軌を背に言う。
「獅雨の技なら、零耶はすぐに助かる。でもな、此処で統軌の技を使わなきゃ、死ぬんだ……わかるな?」
静かな問いに統軌は見えない彼に向けて力強く頷いた。
獅雨が持つ技。治療、回復力を倍増し、重症を完治させる技。普段は使わないが緊急事態の零耶には適応される。しかし、その前に死んでしまえば、元も子もない。統軌の技には時間を送らせるものがある。それを使えば、これ以上の流血の量を減らす事が出来る。少しは望みが保てるのだ。
統軌はブルリと体を恐怖に震わせた。けれど、誰も失いたくない。死なせるもんか。
「全員で、帰ろう!」
力強く言った統軌に右京は頷き、軍帽をかぶり直すと参戦するために大きく跳躍した。統軌は額から汗を流す零耶を見やると云う。
「一人でも欠けたら、僕らじゃないじゃん」
「嗚呼……そうだな」
途切れ途切れに答える零耶に向かって統軌は技を使う。流血の時間が遅くなり、血の量が少し減ったように見えた。零耶は統軌の手を借りて立ち上がると目の前の、悠々と構えるイラヴィとプラーナを睨む。
「統軌」
「うん」
2人はあまり言葉をかわす事なく、同時に減りつつある【神穢】達の間をすり抜けてイラヴィとプラーナの顔面へ武器を突きつけた。




